第十四話
同時刻、グスタフ・グライリヒは孫娘からの定時連絡がないことが気にかかっていた。
「あいつ……、何かへましたんじゃなかろうな」
自分が孫娘に仕込んだ技術にはそれなりの自信があるし、ユーディーの仕事ぶりにも信頼は置いている。しかし、こういった稼業は何が起こるかわからないことも、当然グスタフは知悉している。
とりあえず、クライアントに報告するために、状況を把握しなければならなかった。
グスタフは仕事机の上の電話に手を伸ばし、よく使う番号をプッシュした。
「はーい、こちらリーゼ・ランメルツよ」
能天気な声が、電話の向こうから聞こえてくる。
「わたしだ」
低い声で短く告げる。
「グスタフさん? 何か情報がご入用かしら?」
親しみを込めた態度で、リーゼは応じた。
「ユーディーと連絡がつかなくなった。調べてくれないか」
「……場所は?」
厳しい口調のグスタフに、リーゼの声色も真剣さを増した。
「ビブリオシュッタットに入ったところまでは確認している」
「わかった、すぐに向かってみる。まぁ、彼女のことだから大丈夫だとは思うけど」
「そう願いたいね」
グスタフは咥えた煙草に火をつけて、電話を切った。




