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第十二話

 薄暗いコンテナの中、二人の少女は手と手を重ねる。

 どれだけの距離を走ったのだろうか、トラックの揺れが突然無くなり、エンジンの音が止まった。

 コンテナの扉が開かれる。

「降りろ」

 銃を構えた男に指示され、二人はトラックのコンテナから外に出た。周囲は暗い森に囲まれていて、道もろくに舗装されていない。

「あそこだ」

 背後の男が、銃の先で森の中に建つ建物を示した。古びた石造りの建物で、教会のようにも見える。ユーディーの頭に『教団』の名前が浮かんだ。

 エファとしっかり手をつなぎ、建物の中へと入っていった。

 入口を入るとすぐに大きな講堂になっていた。薄暗い講堂の中には、高い窓から光が射し込んでいた。空中を舞う埃が、光を反射して白く光っている。

 そこから奥の扉へ入り、廊下を進んで小さな部屋へと連れて行かれた。部屋は石の床が冷たい。窓は高いところに小さな明り取りがあるだけだ。まるで牢屋のような部屋だった。

「ここで大人しくしていろ」

 男達は頑丈な扉に鍵をかけて、どこかへ去っていった。部屋には二人だけが残された。

「さて、どうしようか……」

 埃だらけの宙を見つめ、ユーディーは呟いた。

「本当に、困りましたね……」

 口ではそう言っているが、エファは気丈に笑ったみせた。このような状況で、まだ幼い彼女が恐怖を感じない訳がない。それでも取り乱したりはしない。それはやはりユーディーが隣にいて、彼女を信じているからだった。

「キミは強いな」

 ユーディーはエファの肩に手を回す。

「ユーディーさんが傍にいてくれれば、私はどんなときでも笑える気がします」

 エファはユーディーの肩に寄りかかった。

 ユーディーは静かに目を瞑り、心に炎を燃やした。

「絶対にボクがなんとかする。キミはどんなことがあっても守るから」

「もちろん、そう信じています」

 エファはまた笑った。

「そっか、じゃあ期待に添わないとね」

 ユーディーも表情を柔らかくする。

「とりあえず、連中の口ぶりからキミの身体を傷つけるようなことはないはずだけど」

 連中の言葉を信じている訳ではないが、エファを安心させる意味でもエファにそう言った。しかしそうなると、彼らの狙いは何なのか。金銭目当ての誘拐の線もあるが、ユーディーは男の一人がエファのことをアルビノと呼んでいたのが気にかかっていた。

 やはり、この連中が『教団』なのか。

 彼らが『教団』であるならば、エファはどう扱われるのだろうか。

 おそらく、ここからさらに『教団』の本部に連れて行かれると、ユーディーは推測した。

 避けたいのは、ユーディーだけが連れて行かれ、消息を掴めなくなることだった。

 そうなると、やはりエファと自分がこの建物に一緒にいる間に、状況を打開しなければならないとユーディーは考えた。

 再びドアの鍵が開く音がした。二人の少女は身構える。

 先程の男達が、部屋に入ってきた。

「アルビノは我々と一緒に来てもらう。ボディガードはもうしばらくこの部屋に入っていてもらおうか」

 男の一人がエファの腕を掴んだ。

「あっ……」

 エファはユーディの方を不安そうに見た。

「待て、彼女をどうする気だ」

 ユーディーは厳しい口調で、男に問う。

「司祭様のところまでお連れするのだ。この娘は、我々の信仰にとって重要なのでね」

 男の言葉から、彼らが『教団』の関係であるとユーディーは確信した。

「連れていけ」

 男が指示すると、仲間がエファを部屋の外へ連れていった。

「お前達は、この女を見張っておけ」

 残った仲間にユーディーの監視を命じ、男も部屋を出て行った。

 ユーディーは武器を取り上げられ、手枷をはめられた。

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