つらい現実
イケメンとブサメンをひっくり返す?
面ノ介は混乱していた。
少女―岡本美絵と名乗っていた―からは丁寧すぎるほど説明を受けた。分子生物学の難しそうな議論から、図で示した幼稚園児向けの知育絵本のような話まであらゆるレベルで繰り返しRV793というウイルスについて説明された。だが、納得するのは難しかった。いくら明快な説明をされようと結論がおかしかったらやっぱり理解不能になるに決まってるじゃん!
「あのー、ウイルスってインフルエンザとかのあれ?」
「そうよ。」
「それで何で姿かたちまで変わっちゃうの?」
「RV793由来の酵素MFMIRがヒストン蛋白質の…」
「いや、もうその話はいいです!」
「あんたが説明しろって言ったんじゃない!」
カガク的にそれが正しそーってことは面ノ介でも何となく分かった。でもよりによってそんな漫画やアニメみたいなウイルスなんてあるのかなー。だってウイルスさんにイケメンとかブサメンとかそういうの分かるのー??
「あんたさー、さっきからずっと疑ってるけどさー、ちょっといい?」
「ん?」
イライラしながら美絵が急に顔を近づけてきた。え?何ですか急に?
「あんたのその気持ち悪い姿が何よりの証拠じゃない!」
あ、はい。そうでした。
面ノ介はなにも言い返せなくなった。
美絵は少しため息をついた。
「あんた変身する前は大層なイケメンだったみたいね。普通のブサメンを通り越してもはや汚物よ、その姿。よほどの思いやりと慈悲の心とグロ耐性を持っていなければ普通の女の子は直視できないわよ。」
えへへへ、超絶イケメンだなんて照れるなー。いや事実だけど。て、え?汚物?いくらち○こだからってそれはひどいよー美絵たん
バコッ!
「ごめんなさい。何か無性にムカついたから、手が出ちゃった。それからその顔三秒以上こっちの方に向けないでね。キモいから。」
見た目が悪いって、つらい。