少女
「ついてきなさい。」
少女は一言こう言ったあと踵を返して歩き出した。ちょっと待て。待て待て待て待て待ってくれよ。何から何まで意味がわからない。面ノ介は普通であれば気絶してしまうようなショックを抱えながらも懸命に思考を巡らせた。どうして俺はこんな姿になったんだ?この女は何者なんだ?というか何でこの女こんなに露出度の高い服を
「来ないの?死ぬわよ。」
面ノ介は思わずビクッとと体を震わした。振り向き様に少女の放った言葉には何の冗談も誇張も混ざっていない。そう感じさせるような自然な響きを持っていた。
大人しく面ノ介はついていくことにした。この女は本気でヤバい。それは明らかだとして俺の今の姿や状況もそれ以上の本気さでヤバい。ここは少しでも事情を知っていそうな人物から情報を集めるべきだろう。面ノ介の頭はそういう計算を弾き出していた。
少女の髪は赤みがかっており、ボブカットで毛先が揃えられていた。年齢は面ノ介より少し下ぐらいだろうか。時折振り向いてこちらを確認する際に白いきれいな横顔が見えた。
しかし、何て女だ。この傷の具合が見えていないのだろうか。いくら姿形が妖怪変化しているとはいえ、これだけの大怪我を負っている人間をいつまで歩かせるんだ。
面ノ介は話しかけることができなかった。少女が話しかけづらいオーラを放っているのもあるが、実は面ノ介は一度も女性とまともに会話したことがなかったのだ。面ノ介が元々女性に興味を持ってなかった上に、いつも女性から勝手に話しかけてきたからだ。
そうこう考えているうちに少女が歩みを止めた。風がふわりと赤茶けた髪と黒いスカートを靡かせている。
何だ、美術でいつも使っているアトリエじゃないか。それよりも保健室に連れてきて欲しかった。面ノ介は心のなかで愚痴った。
「ようこそ…ベース・レアクシオンへ。」