断水
ここなら安全だな。
綿太は四階のトイレに隠れていた。幸い追手は綿太にはついて来なかったようだ。全員覆面男の追跡にまわったのだろう。
何が起きたんだ?教科書、クラスメイト、破家田。世界が急にガラリと変わったようだ。丁度砂時計をひっくり返したように何かが切り替わってしまった。
みんなあの様子じゃ話など通じないだろう。逆にこっちがおかしいと思われるのに違いない。となると事情を知ってそうなのはあの覆面男か…
やっぱり俺がおかしくなったのかも。
ドンドンッ!
「開けろおっ!いるんだろっ!?」
嘘だろ?もう見つかったのか?あいつらはみんな下の階で覆面男を追いかけているはずじゃ。いや、とにかく今どうやりすごせば…
「いえいえ…様。…………が出る…では……」
「黙…!……ごときが…様に意見する…か?」
ん?ノックが止んだぞ?それに外で何やら揉めてるみたいだ。しめたぞ!そのままどこかへ…
シュン…!
鋭い音だった。この音、どこか聞いたことがある。そうだF1カーが通りすぎるときの音だ。
トイレのドアがぱっくりと割れた。一太刀の剣閃が全ての個室を丸裸の状態の状態にした。
「これより、我々帝国警察学園部がこの場を預かりましょう。」
白髪の男が立っていた。
綿太は動かなかった。いや、動けなかった。本能的な恐怖が綿太を呪縛していたのだ。
周りを見渡した。さきほど綿太たちを追い回していた面子とは大分毛色の違うようだ。特に部屋の中央に固まっている服装の違う集団。五、六人と人数自体は少数だが綿太は数以上にその圧力を感じ取っていた。
他のトイレの個室にも男がいたがひどく慌てている。巻き込んでしまったようだ。その男はマスクをしていて頭部が異様な形に変形していて…
ありり?
「あ。すまん。三階より下は今全部断水してるみたいでここでやりにきたら何か見つかっちった。」