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遁走

ふう着いた着いた~。


面ノ介は汗だくになって異臭を放つまでに至っている額を腕で拭った。まさかアトリエから校舎に来るだけでこんなに疲労してしまうとは…しかし、おかげで新兵器を見つけることができたぞ。


ジャーン!グラウンドに線を引くときに使う車輪がついたアレ!


確かにこれはパット見、グラウンドに線を引くときにしか役に立たないかもしれない。だが、研ぎ澄まされた鋭利な観察力を持つものだけが気づけるのだ。これは手押し車としても使える!便利!疲れない!


―にしても…


面ノ介は二年B組の教室の扉の前にいた。先程から雲行きが怪しい。怒鳴り声が聞こえる。張りつめたような緊張感が、扉越しであるにも関わらず伝わってきた。


「エミグレがいる場所では多かれ少なかれ揉め事が起こる。だからそこを狙って行くと効率的にエミグレの回収ができるわ。」


美絵さんがこう言ってたのを思い出す。

けど…なあ…


ドゴォーン!


あ、今殴った!殴ったよね!?教師が生徒を殴ってるぞ。尋常じゃない事態だ。これもRV793の影響か?とにかくここにはエミグレに関する情報がありそうだ。でも、どうしよう。ぼくちん怖いなあ~。暴力なんて。止めにいって僕が殴られたりするのはやだな~。


よし、決めた。なるべく刺激しないように教室に入って何か教えてもらえるよう頼み込もう。

そっと扉を開ける。ゆっくりと、みんなを刺激しないように。ゆっくりと、ゆっくりと…


ガッ!


え?進めない?扉の下の隙間にグラウンドに線を引くときに使う車輪がついたアレが引っ掛かっているぞ!こんな土壇場で何で!よし、抜けろ、抜けろ。先っちょだけ入れられればこっちのものだ。抜けろ、抜けろ、抜けろ!


瞬間、グラウンドに線を引くときに使う車輪がついたアレがすっぽぬけた。地面との最大静止摩擦力を遥かに上回る圧倒的な力が微小時間の間にかけられ、行き場を失った膨大なエネルギーがカタストロフィックな勢いでアレを水平方向に吹き飛ばした。そしてアレは教師と思しき男の頬に激突した。気付くと教師はのびていた。


やっちまった。僕ちん、やっちまったよ。


○○


「逃げるぞ!!」


その異形の覆面男は叫んだ。本当に今日は異常だ。さらば俺の普通人生。


~回想~


五分前、覆面男は破家田をのして教室に入るなり教壇で何かを語りだしたのだった。とにかく、当人とって大事な何かについて必死に質問していたのは分かったが、エミグリだの、エレクチオンだの要領を得ない。生徒たちの反応は


「帰れー!変態男!」

「先生を返してええ!!」

「キャー!ち○こよ!キモーイ!」

「おのれ!!!マスクドち○こ!!」


などで会話すら成り立っていない。いや、この生徒たちの反応は正常。ごく正常だ。


「なあ、先生の仇、俺たちで取ろうぜ。」

「ああ、あいつ、どう見ても不可触ブサメン、いや人間ですらないだろ。」

「よしやっちまおうぜ。イケメン無罪だ!」


そうこうしているうちに活きのいい男子生徒たちが徒党を組んで襲いかかってきた。おい、どうするんだマスクドち○こ!?


~~


「え?」

「だから、おまえも一緒に逃げるんだよ!おまえも、エミグレだろ!」

「だからエミグレって…」

「説明はあとだ!俺に捕まれ!」


綿太は目を疑った。覆面男はグラウンドに線を引くときに見るアレの手すりに掴まり、豹のようなポーズを取りながら猛ダッシュをしようとしていた。


キ、キモい…


「遅い!置いてくぞ!」


覆面男は怒号とともにものすごく普通のスピードで走り出して、廊下へと遁走していった。


いや、俺、自分で走るわ…


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