表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

星への道

作者: 秋扇

 どこかで聞いた、宝石箱をひっくり返したような夜空。その暗いような、明るいような空を見上げ、有るか無いかの嘆息を漏らす。

 息を飲む程綺麗な星空は、人間の感覚からしたら遅々とした変化だが、常に他を圧倒する踊りを舞い続けている。それは休む事無く連綿と、終局へと集束し続ける恒久なる演舞。

 私はそれに対抗する為またはそれに近付く為に踊り続ける。自らを星に置き換え星と同調して永久の物語を体現せんと踊る。そこには、個の意志も感情も介在しない、無の境地。

「――――」

 知らず知らずの内に零れる溜息にも似た甘露の呟き。それは、歌のようであり、詩のようでもある。心を『私』から『人』へ換え、紆余曲折を経て『星』へ辿らせると、無意識に流れ出るイメージ。『星』へと辿る道はいつも同じになく。また、未熟な私は一年で何度も到達出来ない未知なる境地。余韻の残らないその境地への道筋は、掌から零れ落ちる水を連想させる。掌に留まらない水はいずれ乾き消える。そこへの境地も淡く残りはするが、いずれは夢幻と零れてしまう。

 私は、何とかその記憶を確信する為に踊り続ける。それが、私の夢。

 そして、今日もまた星への道を模索する。


 そこはどういう経緯で出来たのか解りかねるが、高台の頂上にぽつんとうら寂しく造られた野外ステージ。経緯の解らないその場所が、まるで私の辿る夢を連想させて気に入った。開けて星空を眺めるのにも丁度良いそこを当分の間使おうと決め、踊りの準備に入る。

 巻き起こる風。吹き上がる乾いた土。

 五感を研ぎ澄ましていき、辺りの気配へ意識を集中させる。全体を頭の中に描くと、次は外に向けた意識を内に集束し直し、『私』を徐々に消し去っていく。ある一定までそれを続けていくと『私』は無意識の内に次の工程へ意識を移行させ、『人』に心を換えていく。意識の形を拡張し、器の柔軟性を高める。

 そうしていくと、意識せずに動き出す躰。それは、今迄教わってきた動きに、自分の経験から抜粋してきた動きを混ぜていく。初めは拙い動きも意識が高まるに連れ徐々に最適化されていく。しかし、そこで――

「なに? アンタ」

 ふと、目の端に止まったもの、それに連れられ躰は動きを止め、口から出るのは純粋な疑問の一言。『星を見に来ただけ』と告げる男に『私』の意識を離れた私は『まぁ良いけど』とどうでもよさげに告げ、踊りを再開する。意識の隅っこでは『私』が愛想の悪さを怒っているようだったが、それすらも気にせず『私』の意識は『星』への道を進んでいく。

 宝石箱をひっくり返した空では、宝石達が輝きながらどこかへ大移動を始めている。私はそれに倣ってただ、無意識に動く。星の終局へと向かって……

 それが私の夢。明日も私は夢を見る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ