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不思議な少年との出会い

初めてなので、大目に見てください!!

 夕日が差し込む放課後の図書室

 部活に入っていない私は何時もここで時間をつぶしていた。

 図書室は人が来ることがほとんどない。完全下校時刻まで居座っても誰の迷惑にならない。そのため、私は毎日用もなく図書室に入り浸っている。

 「波多野さん、そろそろ完全下校時刻ですよ?」

 何時もの定位置でオカルト関係の書物を読んでいると、聞いたことがある声が背後から聞こえて来た。

 振り返ると、生活指導の本田先生が腕を組んで立っている。本田先生は、婚期を逃した三十後半のいかにも厳しそうなメガネを掛けた女教師。私に対してはそんなに厳しくはないけど、ちゃらちゃらした女生徒に対してはとても厳しくしているらしい。

 「え?もうそんな時間ですか?」

 壁に掛けてある時計を見遣ると確かに完全下校時刻の五分前だった。しかも、外は日が沈みかけて図書室内は薄暗い。

 読んでいた本を元あった場所に戻して、鞄を持って図書室を出る。そして、昇降口に向かう階段へ向かって歩いていく。


 「波多野さん。最近ここらで変質者が出るともっぱらの噂ですから、寄り道はせずに早く家に帰ってくださいね」

 廊下を歩いていると、後ろから本田先生の声が聞こえて来た。

 振り向くと、図書室の扉を閉めていたようで手に鍵を持っている。

 「はい、気を付けます」

 私は笑顔で返事をしてから、階段へと小走りで向かった。


 階段を下りて一階の昇降口に着くころには、日は完全に沈んでしまい、外は真っ暗だった。

 幸い、学校から私の家までの通学路は夜でも人通りは比較的多く、自転車通学なので家までは数分で着く。

 まぁ、変質者に会ってもすぐにその場を離れれば良いだけの話なんだけどね―――。

 そんな事を考えてから、昇降口近くの自転車置き場に私は歩いて行く。


 「はぁ、また事務員さんが勝手に移動させたのね」

 今朝、学校に着いて自転車を置いた場所に自分の自転車は無かった。何時もの事なので驚きはしないけど、うちの学校の用務員の一人に何かと几帳面な人がいるみたいで、校門側に全ての自転車を移動させられている事がほとんどだ。

 自転車を学校に置いて行っている人も多いので、自分の自転車を見つけるのも一苦労だった。


 やっと自分の自転車を見つけて鍵を解いて、校門まで押して行く。そして、校門を出て自転車に跨って発進させようとしたときだった。

 「ねぇ、お姉さん」

 何処からか幼い少年の声が聞こえて来た。

 「え!?」

 驚きつつ声の主を探して周りを見渡すと、紺色のパーカーを目深にかぶった短パンの少年が校門横に立っていた。

 少年はゆっくりと私に近づいて来て、

 「神様になってみたいとは思わない?」

 と言ってきた。

 急に何を言い出すんだと思ったが、少年の質問に私は一応答える。

 「まぁ、なれるんだったらなりたいわよ?それよりも、あなた!こんな時間まで何してるの!?お母さんが心配しているかもしれないから早く帰―――」

 「だったら、僕の世界を救ってよ」

 少年に早く帰るように言うが、少年は私の言葉を遮って目深に被っていたフードを脱いだ。そして、無邪気な笑顔と共に理解不能な要求をする。

 「・・・あのねぇ、さっきから何を言っているのか分からないけど、私にそんなことは出来ないわ」

 ため息を吐き、それじゃあねと言って自転車を発進させようとすると、少年が待ってと私の自転車の前に出て必死な形相で制止を掛ける。

 「さっきから何なのよ」

 少しいらだちながら、自転車をその場に止めて少年に近づいていく。

 「神になるだとか、世界を救ってだとか、中二っぽいこと言わないでよ。私は一刻も早く家に帰りたいの!!」

 さっきまで学校の図書室で暇を持て余していたのだが、この少年から逃げたい一心で大嫌いな家族の待つ家に帰りたいと大声で告げた。

 「でも、さっき神になりたいかって聞いた時、なりたいって言ったじゃないか」

 笑顔だった少年の表情が一変し、むくれてしまう。

 そんな少年に私はさらに近づき、少年と同じ目線になるようにかがんだ。

 「子供にこんなことを言うのは悪いと思うけど、神様になりたいって願っても絶対になれないの。君ぐらいの年ならまだそういう夢を見ていても良いかもしれないけど、もう少し大きくなってそんな事をまだ言っていたらひどい目に合うから」

 少年に諭すように私は告げた。


 子供のころからオカルトが大好きだった私は、幼稚園の時から最近まで、将来の夢は女神になることだった。

 ところが、高校入学して少ししたとき将来の夢と言う題で作文を書かされた。

 当然私は女神になりたいと書き、その作文を先生に提出した。

 でも、私の作文を読んだ先生の第一声が「波多野さん、ふざけているの?こんな事を言っていられるのは小学生までなの。現実を見なさい」だった。

 私は本気でこの世界には霊的存在は実在し、世界を見守る女神様は存在すると先生に熱弁した。

 でも、先生はそんな私の熱弁にも関わらず絶対にいないと一点張り、そして気づいたら私は先生の胸ぐらを掴んでいたのだ。当然、私の両親を呼ばれて私は一週間の停学を言い渡されてしまった。

 その結果、私は作文の内容を知った親に精神科へと連れていかれ半年前までの一年間、隔離施設に入れられていた。


 「お姉さん?どうかしたの?」

 「何がよ!」

 「何がって、何で泣いてるの?」

 「え?」

 頬に触れてみると少年の言った通り、確かに泣いていた。

 「なん、で・・・」

 もう吹っ切れたと思ったのに、トラウマはそうそう簡単に克服できないらしい。

 「ごめんね。お姉さん、泣く程僕と話すのが嫌だったんだね・・・」

 「ち、違うの!少し、過去の事を思い出していただけなのよ」

 悲しそうに俯く少年に、私はすかさず言い訳をする。

 「本当に?」

 「うん、本当よ」

 私の返事を聞くと、悲しそうに俯いていた少年がすぐさま表情を変えて、無邪気な笑みでこういった。

 「なーんだ。じゃあ、神になって僕の世界を救ってよ」

 「ちょっと、それじゃあ振り出しに戻っちゃうじゃない」

 情緒不安定?な少年は、私の抗議の声が聞こえていないのか、私に背を向けてから指を一回鳴らす。そして、少年は呪文の様なものをぶつぶつと呟きつつ短パンのポケットから透明な石を一つ取り出し、その石を目の前の地面に落とす。

 「ねぇ、聞い―――」

 再度声を掛けようとしたときだった。

 少年が地面に落とした石を中心に、眩い光と共に円形の魔法陣が地面から浮かび上がって来た。

 「ちょ、何よこれ!?」

 その光景を驚きのまなざしで見つめていると、少年がこちらを振り向く。

 「異世界の扉だよ。お姉さん初めて見るの?」

 異世界の扉が何なのかは分からなかった。でも、目の前で起こっていることは現実にはあり得ない光景だ。

 「ねぇ、君。これって魔法なの?」

 期待のまなざしを少年に向け、私は言う。だが、少年から帰って来たのは予想外の返答だった。

 「魔法っていうか・・・神の力、かな?」

 「カミノ、チカラ?」

 「そう、神の力だよ」

 少年の言っている意味が分からない。いや、言葉自体は理解できた。でも、魔法と神の力の違いが分からなかった。

 「それって、どう違うのよ?」

 正直に聞くと、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに少年が説明し始める。

 「魔法と神の力の違いは色々あるんだけど、僕が思うに魔法との一番の違いは無から有が創れる事かな?無っていうのは完全に何もない状態からってことだよ。魔法も何も所から火を出したりできるけど、神の力は頭の中で想像した事を現実に創り出すことが出来るんだ」

 「へ、へぇ~~~」

 私は少年の言葉に驚くことしかできなかった。

 子供のころから思い焦がれていた現実では起こりえないだろう超常現象を目の当たりにして、私は少年の言っていることがすべて真実だと気づく。そして、初めに少年が言っていた「神様になってみたいとは思わない?」と言う言葉が嘘じゃなく実現できるのなら、この少年は―――

 「君、神様だったりする?」

 「うん」

 やっぱりと心の中で思いつつ、さっきまでの自分の言動を後悔する。

 初めに言われていればあんな事・・・・・ちょっとまって、初めに僕は神様ですって言われてもさっきの見るまで信じなかったかもしれないわね。


 「お姉さん、何してるの?ほら、早くいくよ?」

 そういうと、少年は私の腕を引っ張って魔法陣に向かって飛び込んでしまう。

 当然、腕を引っ張られていた私も魔法陣の中に引きずり込まれてしまうわけで―――

 目の前に魔法陣が近づくのが見え、私は顔面から魔法陣へと突っ込んで行ってしまった。

たぶん、続きます。

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