閑話 バーンの日記帳
更新遅れてすみません。
仕事が(ry
第67代目魔王バーン=ハイドランジア。
巷で私はそう呼ばれている。
元々、魔王という称号を親父から受け継ぐつもりなど更々なかった。
世界を知る、という大層な理由で幼馴染であり、現在の妻であるククリと共に冒険者として旅に出た。
数年もすると俺たちを知らない者など居ないとまで評されたし、仲間も大勢できた。この頃からだろうか、親父が寝たきりになったのは。
報せを聞き仲間を連れて急いで領に帰ると親父は息も絶え絶えだった。
嘗て、暴力の化身とまで評された親父とは思えないほど弱っていた。
親父は俺を部屋に呼び寄せると俺に魔王なって欲しい、と頼んだ。
あまり仲は良くなかったが、それでも尊敬する親父の最後の頼みだ。無下になぞ出来るはずもない。
それから私は魔王になった。
結婚して子供も授かったし、仕事も慣れれば特に苦も無くできる事だった。
ある日、たまたま街へ行った帰りに散歩でもして帰ろうという事になった。
いつも文字通りひとっ飛びだったのでたまには悪くない。散歩コースは迷いの森を回って帰るルートだった。
そこで新たなる家族と出合ったのだ。
まだ赤ん坊の獣人族のドワーフ。そんな異質な存在が森沿いの道に落ちていたのだ。
これが迷いの森の名前の由来だ。昔から極稀にこういった異なる領地の者や謎の物体が現れる。当初は天狗の仕業と思われたが本人たちは否定し続けた。それ以来この迷いの森は魔人領七不思議のひとつとして名を連ねる事となったのだ。
その七不思議のひとつに出くわしてしまった私は、引き取り手のいない子供を引き取ることにした。
服には刺繍が入っており、刺繍の通りロータスと名付けた。
何故引き取る事にしたのか、それは私にもわからない。ただの思いつきというものだ。もし理由があるとするならば、これから生まれる私の子も身近に同じ年の兄弟がいた方が楽しいだろうという父親の本能に近いものを感じたのだろうか。
子供が生まれた。
ククリに似て可愛い子だ。賢く育ってほしい、という事でアルフレッドと名づけた。
2年程たって子供たちは本に興味を持ち始めたみたいだ。いや、正確にはロータスの方だな。ロータスは1歳くらいから言葉を覚えたり勉強熱心だ。
小さい頃は興味の尽きない事ばかりだった。きっとこの子も同じなのだろうと思っていた。
本を読むために字を覚えた。それは興味本位だったのかもしれない。
字を覚えた後、ロータスはアルフに読み聞かせをしはじめたのだ。
それも棒読みなどではなく熟練の吟遊詩人が語り聞かせる様に声色を変え、テンポを変え、感情をこめて本を読んだ。
時には内容を改変して聴く者(主にアルフ)を楽しませた。
アルフはロータスの読む本の虜になった。
それ以来、アルフから絵本の催促が多くなり、その度に買い与えてしまった。
さすがに甘やかしすぎか?
3歳となり、2人にステータス開示の儀式を行った。
あり得ない。2人ともステータスの平均値を大幅に越えていた。ハッキリ言って異質である。
だが、私にはそんな事はどうでもよかった。一人の親としてここまで優秀な子供を持てて幸せだった。
気持ちが高ぶりすぎて次の日からアルフには魔法、ロータスには近接戦闘の特訓をすると宣言してしまった。ククリにはまだ教えるのは早すぎるんじゃないかと小言も言われたが、特に問題は無いだろう。
特訓が始まって二人の才能はさらに開花し始めた。
アルフは呪術を除く全属性を、ロータスは近接戦での立ち回りや技をドンドン吸収して覚えていった。
ただ、二人とも長所と短所が極端なのでそのうち短所を長所といかないまでも苦手意識をなくさせようと思う。
そろそろ二人が5歳になる。
5歳になったからと言って二人に何かあるわけでもない。
ただの区切りだ。
だが最近、破壊神を信仰する教団が魔物を従えているという噂を聞く。
少なく見積もってもあと5年は大丈夫だろうが、それ以降は教団が武力行使に出る可能性もあり、この地域も危ないかもしれない。
2人が二回目のステータス開示の儀式をする7歳になったら、人間領にある冒険者学校に避難させた方が良いだろう。
確かあそこは7歳から入学できたはずだから丁度いい。私とククリも過去に世話になったしな。
だが、魔王の家族が学校にいて、さらにステータスも超ド級とまであれば恐らく、いや間違いなく妬みとやっかみの対象となるだろう。
幸いまだ2年近くある。
身分の隠れ蓑とステータスをごまかすアイテムを手に入れる必要があるな。
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