呪術習得
あの武器選びをした初稽古から一月が経ちました。
今なんの武器使ってるかって? 斧だよ! 両手斧だけどな!
いや、最初の2週間くらいは片手斧の練習してたんだけどさ、ランデルさんが
「片手斧の基礎くらいは教えてやれたが他の事はまじめに扱った事がねぇからわからねぇや!」
と教育放棄したのが原因だよ。
しかたないから片手斧に詳しい人に教わるまでは自己流に鍛練するのだが、さすがにメインで使う武器がほぼ自己流ってヤバくね? と感じたのでランデルさんのメインの獲物である両手斧、もといハルバードをしばらくのメインウェポンにするために習い始めた。
まぁ両手斧とかハンマーとか大好きだから無問題だな!
それはそれで今俺は呪術の勉強をしています。
教えてくれているのは何年か前に俺の養子入りを反対していたお婆ちゃんだ。
名前はデイジーというらしい。歳くってんのに可愛らしい名前してんな。
「変なこと考えてんじゃないよ。魔王様の家族だからって容赦しないからね。」
はい。頭を丸めた紙でたたかれました。リアルでやられたのこれが初めてだよ…
そういえば前に俺を疑ってたのは「こんな場所にドワーフの子供がいるわけがない、きっとそいつは子供の姿をした暗殺者だ!」みたいなことだったらしい。
結局俺と魔王上で3年過ごしてみて思い過ごしだと感じたみたいだが…
ちなみにこの城で呪術を使えるのはデイジーお婆ちゃんだけだ。
なんでも、適性がないと習得できないのだとか。
魔法の適性は人によって様々で最初はダメダメでも後に才能が開花する事もあるようだ。事例は極端に少ないらしいけどね。
あ、そういえばアルフは呪術以外のすべての属性に適性があるそうです。
さすがトップクラスの魔法使いの夫婦から生まれただけはあるな。
俺?呪術以外ダメダメでした。
もともと明確なイメージを作るのって苦手なんだよね。
この世界の魔法はイメージを作ってから魔力を込めて発動させる。というプロセスを辿ってるみたいんだんけど、俺は一つ目のイメージで残念な出来になり、魔力を込めるあたりでダメになる。
呪術は死神の加護のおかげでほぼ完璧に発動できるらしい。まぁこれは効果が決まってるから呪文を魔力を込めて呟くだけなんだけどな。
さて、呪術魔法なんだが今のところ教わったのが
・抵抗呪い(カース・レジスト)
…抵抗力を下がる。各種属性攻撃が通りやすくなる。
・武具呪い(カース・ウェポン)
…武器に呪いを付与する。指定された武器の攻撃力が落ちる。
・行動呪い(カース・アクション)
…行動、速度を制限する。
・カースドポイズン
…目標物に毒の呪いをかける。通常の毒よりも猛毒である。
・カースドパラライズ
…目標物に麻痺の呪いをかける。通常の麻痺よりも解除しにくい。
・カースドパニック
…目標物をパニック状態にする。対象制限:生物
この6つである。上3つは武具や行動に制限をかけるもの、下3つは状態異常を与えるものだ。上3つをMMO等でみかける状態異常。下3つをポケ○ンとかで見かける状態異常と思ってくれればいいだろう。
そしてこの呪術、MP効率が悪い。
もともと俺の魔力が少ないというのもあるがそれを差し引いても魔力の消費が激しいのだ。まぁ呪術ってそんな頻繁に使うものでもないっぽいからそれでもいいらしいんだけどさ。
さて、お婆ちゃんからこの6つの呪術を教わったところで呪術の勉強はお終いです!
え?呪文数少なくないかって?
もともとは呪術って古代の呪いを解読したもので、未だにほとんどの古代の呪術が記された石板は解読されてないんだとか。
仕方ないね。
今は午後3時くらいかな。
今日の午後はアルフの移動魔法の練習で街の教会まで飛ぶらしい。
ついでに買いだしも兼ねているそうで、使用人もついてきている。
「よぅし!皆さん集まりましたね~。行きますよー≪テレポート≫!」
アルフが呪文を唱えた瞬間。景色が一瞬で変わった。
これは成功なのか…?と思いつつ周り見渡してみると、木が大量にあります。
「えっと…失敗しちゃった?」
「失敗しちゃった。てへへ。次は成功させるから!!」
てへ じゃないよ。そんな可愛くいってもお兄さん許しませんからね!
「今度こそ!≪テレポート≫!」
はい。今度こそ街に着きました。
使用人さんたちは市場へ買い物に、俺は教会に行く事にしよう。ファレノに聴きたい事もあるしな。
アルフは俺について行くか使用人さんたちについて行くかでも迷っていたようだが好奇心に負けて使用人さんたちの方へ行ったようだ。この薄情者め。
さて教会に着きました。
黒いです。夕日に晒されて前見たときよりも黒く感じます。
中に入ると黒い修道服を着たシスターさんに声をかけられたので、「礼拝をしたいです」と告げると礼拝堂に案内された。
信仰心など欠片もないがとりあえず祈ってみるか。
そう思い祈ると案の定世界が白く染まった。
「やぁ思っていたよりも再開が速かったね。」
なぜこの神様は後ろから声をかけるのだろうか。またビクッとしてrしまったじゃないか。
「ちょいと気になった事があったので質問をしに来ました。」
素直に答えておく。
「質問?答えられる範囲でならお答えするよ。
あと敬語は使わなくていいよ。前に言い忘れてたけど、実は敬語って使われるの苦手なんだ。」
「じゃあ素の話し方で話させてもらおうかな。
今回持ってきた質問は、
①なぜ俺に死神の加護っていうものが付いているのか
②なぜ俺はドワーフなのか
③俺魔力少なすぎじゃない?
④他の協力者と連絡をとる手段はないか
の4つかな。答えてくれたらうれしいかな。」
「随分と質問を持ってきたね?大丈夫だよ、これくらいなら答えられる。
まず①だけど、それはただ単に君が死神から好かれてるだけさ。今度こっちにくるみたいだからその時にでも話を聞いてみたら?
②はその種族が君の前世に似ていたからかな?
見た目的には炭鉱族だけど能力的には獣人族の方に近かったからそっちにしてみたんだ。
③に至っては君の素質だから仕方ないね。諦めよう。
④は無理かな。けど、この世界の住人が使える≪テレパスチャット≫って呪文を使えば連絡や情報収集ができるよ。
ただ≪テレパスチャット≫は掲示板みたいなものだから、その情報がすべて筒抜けだけどね。」
長い。
けどなんとか寝ずに全部聞く事が出来たぜ!成長したな俺。
「③は絶望的だし諦めるしかないかぁ…
②については本当に感謝する。せっかく転生したのに前世と同じような顔なんていやだからな!」
とりあえず本音をぶつけておいた。
しかし≪テレパスチャット≫?そんなものがあるのか…
お婆ちゃん教えてくれなかったぞ。
「≪テレパスチャット≫って俺でも使えるの?俺の魔力下から2番目の値なんだけど。」
「大丈夫だよ。下級の中の下級レベルの呪文だから魔力がある人なら覚えられるよ。
今ここじゃ使えないだろうけど、帰ったらやってみるといい。
良い情報源になるだろうね。」
ふむ…どんな感じなのだろうかすごく気になるところだが今日は午前中の訓練で魔力がスッカラカンだ。明日にでも試してみるか。
今日はそろそろ行こう。あんまり長居しても悪いだろうしな。
「急に押し掛けたのに色々とすまないな。助かるよ。
ところで死神っていうのはいつごろくるんだ?その時ぐらいにまた来るよ。」
「死神が来るのは…君たちでいうところの1年後くらいになるかなぁ
仕事が忙しくて目が回りそうって言ってたからそれくらいかかると思うよ。」
死神の仕事…やっぱり人の生死が関わっている仕事なんだろうか。
まぁいい。次に来る日が決まったらそれで十分だ。
「なるほど。
今日は世話になったな。
また一年後、質問を持って遊びに来るよ。」
「うん。また次の機会。今度はお土産も持ってきてくれるとうれしいかな。」
神様がそういうと目の前が白くなって、礼拝堂に戻ってきていた。
あの野郎最後の最後で雰囲気をぶつ壊していきやがったな。
シスターさんに礼を言うと礼拝堂を出て、アルフ達と合流した。
また明日、新しい呪文を覚えられると思うと嬉しく思うがそれよりも今は楽しむか!と考え、アルフ達と市場での買い物を楽しんだのであった。
魔法の修行なんてないです!
考えてないもん!