ステータス~ロータスの場合~
時間があったので本日2話目投稿
アルフが尋常じゃない魔法特化のステータスを披露した事で今、俺への重圧が半端無い事になっている。ヤバイ、冷や汗まで出てきた。
今思うと前世からこのような発表会チックな出来事は苦手だった。なんというか注目されるとものすごく緊張する。
前世の友達には「注目されると興奮する!」なんて鼻息を荒げていた変態の友達もいたが、大体そいつのせいで緊張がほぐれていたのを思い出した。
そいつとは小、中学校の付き合いだったが元気にやってるかな…
「ロータス様、どうなされました?具合でも悪いのですか?」
といつまでたってもステータスを開かない俺にライノさんが心配げに声をかけてきた。
しまった、つい現実逃避をしてしまっていた。この癖も直さなくちゃなぁと思いつつ
「すみません。少し緊張してしまったようです。」
と答えておく。ライノさんは
「緊張なさらずとも大丈夫ですよ。確かにアルフレッド様は高いステータスをお持ちでした。ですがロータス様はロータス様です。ご自分のステータスを恥ずかしがる事はありません。堂々としていればよいのです。」
と言ってくれた。ライノさん、怖い顔してるけど実はものすごく優しいのではないのだろうか。いや、まず顔は関係ないな。
「わかりました。とりあえずやってみる事にします。ステータスが低くても笑わないでくださいね?」
と前置きをした上で《情報開示》と唱えた。
すると、目の前が真っ白になり、周りが見えるようになると俺は見知らぬ場所にいた。
そこはまるで写真で見た前の世界のパルテノン神殿のような場所だった。
「え?…え? えええええええぇぇぇぇえ!? ここどこ?!」
と混乱してうろたえていると後ろから声をかけられた。
「こんにちは。君はロータス君…いや、武蔵君と呼んだほうがいいかな?」
声のしたほうを振り向くと優しそうな顔をした青年がいた。しかし普通の青年には似つかない、まるで太平洋戦争を生き抜いた兵隊の貫禄をも持ちえる雰囲気だった。
「大分混乱しているみたいだね。大丈夫、僕は君の敵じゃないよ。襲いはしない。」
そうは言われましても…
ん?そういえばこの人俺の前世の名前を呼んだ?聞き違えか?
「聞き違えじゃ無いよ、武蔵君。僕が君を君がいた世界から呼んだんだ。これから起こる戦争を止めて貰うためにね。」
思った事を言い当てられてしまった…?
読心術でも使えるのか?それとも神なのか?
「そのとおり。僕は神だよ。この世界で言う創造神ってやつかな?ちなみに今世界は君がステータスを見ようとした時点で時がストップしているはずだよ。」
マジで!?神様なのかよ…
嘘かもしれないがここは信じるしかない。こんな見知らぬところに呼び寄せた上に、俺の前世の名前を知っているなんて俺を転生させた当事者か神様くらいしか考えられん。
それに時を操るなんてどこのゲームや漫画でも神とかじゃないと扱えないしな。
「創造神様…ですか。」
「うん。創造神。本当の名前はファレノっていうんだけどね。」
「ファレノ様…ですか覚えさせていただきます。ところでここはどこなのでしょうか?」
素直に聞いてみる。上の立場の人間?には負の感情以外は素直に表に出すのが一番だ。
「この場所は僕の家だよ。おそらく君は次に「なぜ自分をここに呼んだのか」と言う質問をしてくると思うから答えておくよ。
君に用事があったんだ。この世界に呼んだ事についてね。」
こいつはジョジ○の2部の主人公か! なんてツッコミを心の中に抑えつつ、頷いて話を聞く。
「素直に話を聞く人は好きだよ。まずこの世界の事なんだけどあと十何年かしたら多分全部の国を巻き込んだ戦争になる。
そこで、君には次世代の魔王サポートして魔人国を潰させないでほしい。
この世界は僕が何百回と手直しをして、一番良い状態に持ってこれたんだ。」
存続させる…は解るんだが、戦争?普通世界の人々同士の戦争って神様は傍観するものじゃないのか?
「この戦争は破壊神達が関わっていてね。この破壊神達はこの世界を壊して神の住みやすい世界を作るつもりなのさ。」
また心を読まれた!?…もう何も考えないようにしよう。
「破壊神?初めて聞く方ですね。」
「それもそうだろう。今から何千年か前に僕が封印したんだ。世界に宗教と呼ばれるものができてから、彼らは教徒を集め、魔物を支配し世界を支配しようとした。しかし、そんな事を許せば世界の住人はその教徒を除いてすべて死んでしまうだろう。
僕はそんなことはさせまいとしたんだけど、封印が精一杯だった。
しかも教徒たちは僕達の目を盗んで強大な力と人員を集めていたんだ。」
説明を聞くだけでその破壊神達は恐ろしい事をしているのだとわかる。
世界を全破壊とは…しかも神自身じゃなく教徒、魔物まで従えているとは。
「なるほど、話はわかりました。ですが、なぜ私なのでしょうか?私は力も強くありませんし頭もよくありません。どうせ転生させるなら他の人のほうがよかったのではないでしょうか?」
正直、せっかくのファンタジーの世界なのだ。魔物とかと戦ってみたいし、魔法も使ってみたい。
だが、なぜ前世まったく冴えなかった俺なんかが選ばれたのかがずっと不思議だった。
「君が前世で死んだときに、あまりにも不幸な事が連鎖して起きただろう?トラック?っていうのに君が撥ねられたときに「死にたくない!」っていう魂を震わせるような叫びが聞こえたんだ。あそこまで思いっきり叫べる人はそうそういないよ。だからこそ君みたいな人なら世界を変えてくれると思ったんだ。」
なるほど。わからん。とりあえず頭の中でまとめてみて…
「つまり、私が死んだときに私の魂が思いっきり叫んで、その叫ぶ力に魅せられて私ならばこの世界をかえられるとファレノ様が私をこの世界に召喚した…と言う事でよろしいでしょうか?」
「そんな感じだよ。ちなみに君以外にも他の国にも一人二人同じような人間を送り込んでるから。」
なるほど、どうやら俺は知らないうちに大役を任されたようだ。
不幸だぁ…とラノベの主人公のような台詞がでかける。
「ああ、戦争の件は頑張ってもらうけど、それ以外に関しては自由を約束するよ。存分にこの世界を楽しんでくれ。これがせめてもの手向けかな。」
ファレノから言葉を聞いたときに俺は目を輝かせた。
そうか!悲観ばっかりしてないで今を楽しく生きよう!魔物と戦ったり、剣とか作ったりしたい!そう、浪漫に生きるんだ!
「そうそう。戦争時以外は存分に楽しんでね。
…すまないね、そろそろ時間のようだ。他にも質問がありそうだけど次の機会にでも話そう。
毎回とは行かないけど教会で祈ってくれたら、きっとまた会える。」
ファレノがそういうとまた世界が白い光に包まれ、次の瞬間には机の前にいた
。
机の上の空間にステータスがどんどん書き込まれていく。
世界の時間が止まっていた、と説明されたが本当のようだ。
そして映し出されたステータスにはこのように書かれていた。
名前:ロータス=ハイドランジア
種族:精霊
――――――――
MP:E
STR:S
VIT:B
AGI:SS
MID:D
INT:E
DEX:B
LUK:F
――――――――
加護
・死神の加護
呪詛系の魔法の成功率、効果時間が上がるが、魔力の最大値が大幅に減り、極稀に不運が襲いかかる。死神から愛されたものに贈られる加護
…なんで俺もステータス高いんですかねぇ。
周りの神父さんたちも口を開けてるじゃないですかぁ。
しかも死神って…前世からの繋がり多すぎじゃないっすか?
「いやはや、アルフレッド様だけでなくロータス様もここまで高いステータスとは…」
「ロータス様は完全に前衛特化ですな。それにしては加護が後衛寄りというのが何とも…」
「しかし、死神? 初めて聞く加護だが…もしや、現在確認されていない大アルカナやもしれぬ…」
そんなに高いものなのですか?と聞くと
「大抵の者のステータスはCくらいで打ち止めになるんです!その道で一流と呼ばれる者がAランクというのにお二人は…」
と頭を抱えている。
きっとアレだな。創造神様は俺に楽しめって言ってたし、その分チートをくれたんだろうな。
なんて思っていると親父がこっちに駆け寄ってきた。
「すごいじゃないかロータス!前衛として超一流のステータスじゃないか!これでさらに鍛えたらすごい事になる!アルフとパーティを組ませるのが楽しみだ!」
なんてものすごい重圧を加えてくる。
しかもアルフまで目を輝かせている。辞めてくださいそんな期待のまなざしを向けられると死んでしまいます!
そんな状態で揉みくちゃにされつつ、創造神に言われた事をどうやってこなしつつ自分好みに生きようか考えるのだった。
7/19
修正