義理の家族
今回の話では種族等の説明はありません。
「3ヶ月ほど待ったが、やはりこの子の親は来なかったか…」
そう俺を拾った魔王夫婦の夫バーンは諦めたようにつぶやいた。
いや、まぁ元々来ることは想定してないけどね。
それになによりも今の生活は不自由ない生活だし、なによりも美人な奥さんが面倒を見てくれてる訳だから男なら喜ばないわけがない。
「あんな場所に一人でいたんだもの。捨てられたか天狗が攫ってきたかのどちらかしか考えられないわ。」
と冷静な口調で意見を述べるのが先ほど説明した美人な奥さんことククリさんは俺と夫婦の本来の子であるアルフレッドを両の手でなでている。
「そうだよなぁ。なら最初に宣言した通りウチで面倒を見よう。アルフの良い遊び相手になってくれるだろう。」
などと俺が抵抗できないのをいいことに早々に決めて、城にいる自身の家臣を呼び集めた。
バーンは人間で言うところの魔人を統べる王、魔王なのだ。
だがゲームや漫画に出てくるような悪い奴という訳でもなく、ただ単に国に住む魔人の世話をしているにすぎないようである。
なにせこの3ヶ月世話になっているが一度もそういう物騒な会話を聞いたことがない上に温厚な性格で魔人以外にも慕っている種族は多いらしい。
少なくとも同じ名前とはいえ「今のは○ラゾーマではないメ○だ」なんていう性格ではない。
俺はこの世界にどんな大陸が在ってどんな種族がいるのかは知らないが、しっかり自分の力で動けるようになってから調べてみるとしよう。
そうこう考えているうちに家臣が現在自分達のいる王室兼会議室に集まってきており、最終的には魔王含め総勢11名の家臣団が集まった。
「皆、此度は集まってくれて感謝する。さて、今回話を持ちかけたのは他でもないロータスの事だ。」
あ、ちなみにロータスは俺のことだ。
俺が来ていた服にロータスと名前の刺繍が施されていたとのことだが、この世界でも蓮の名前を冠するとは如何に…
「街に広告を張り、随分と待ってみたが一向に親が迎えに来る気配もない。そこで我がハイドランジア家でアルフレッドの兄弟として身分を与えようと思うのだがどうだろうか。」
え?俺のためにそんなことまでしててくれたのか。良い奴だなバーン。
「私は異存はありません。ドワーフですしアルフレッド様の護衛役としてぴったりでしょう。」
と燕尾服を着た白髪で若干犬歯の見えている如何にも吸血鬼です的な雰囲気を醸し出している執事さんが言った。
名前は確か、エドルドさんだったかな?
エドルドさんの言葉に数人が頷いている。その中には(俺の前世の記憶と照らし合わせれば)大鎧を着こんだ一つ目の大鬼もいた。
だが11人も居れば勿論反論を言う奴もいて
「わたしゃ反対です。もし仮にアルフレッド様を傷つける様な輩だとしたらどうするのですか!」
そんな声を上げたのが練れば練るほどおいしくなるお菓子のCM出てきてそうな外見をした魔女っぽいお婆ちゃんだった…というか完全に魔女です本当にありがとうございました。
「婆よ、確かにその可能性はあるやもしれぬ。しかし、アルフレッドには敵性の攻撃を完全に反射する国宝を装備させている。故に心配はない。最悪そんな事が起これば私が確実に始末しよう。」
おいおい、初めてこの人の口から物騒な事を聞きましたよ。
というかあの緑色のブローチみたいなやつってそういう効果だったのか。ただの魔王様の趣味だと思ってたぜ。
「しかしっ…!いえ、主君を信じるのもまた家臣の務めですじゃ。しばらくわたしゃ口を出しますまい。」
あれ?口を出してきた割にはやけにあっさり食い下がったな。
それほどまでに魔王様を信用しているのだろうか?
「婆、感謝する。他に意見のあるものはいないな?」
家臣はその言葉に深く頷いた。
「それではこのロータスを我がハイドランジア家の養子とし、アルフレッドの義兄とする!」
そうして俺は正式にハイドランジア家の養子となったのだ。
次回くらいからボツボツ説明していきたいです。