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第一話 密命

気分でゆっくり投稿。


 暖かな日差しを遮る、石の強固な建物。

 建物の壁に設けられた窓の様な穴から、光が入り、俺が歩いている廊下を照らす。

 石造りの建物故、踵が当たる音が響く。

 すれ違う者は誰一人としてないが、外からは小さく聞こえる声。

 それはもちろん剣の腕を磨く者たちから発せられる言葉だった。

 時たまに聞こえる、男の怒声。

 それを聞きながら、俺は豪奢な金の取っ手のついた扉を開き、中へ入った。

 中には赤い絨毯と、大量に書類の載った、デカくて豪奢な机。

 それと対となる、これまた豪奢な椅子。

 壁側には大量の書物の納められた棚。

 ここは王を守るための王騎士隊ではなく。

 国を守るため、作られた六つの騎士隊。

 それをまとめる六人の隊長格のうち、一つの部屋。

 王国防衛騎士軍・第一騎士隊長室。

 そして、棚ある正面。

 入り口と同じ色の板が使われ、簡素な取っ手が使われている扉の向こう。

 そこが隊長の私室となっている。

 まぁ。

 それは置いておおくとして。

 問題は広い机に所狭しと積むに積まれた書類だ。

 こみあげてきたため息をそのまま吐いたとき。

 俺が入ってきた方の扉が開いた。

「お早いお戻りですね。隊長」

 そう無表情で無感情に言ったのは、藍の髪にヘーゼルの瞳の男。

 こいつは第一騎士隊副隊長・エウィル。

 常に無表情で無感情な声音で言うエウィルは、怒っているのか、はたまたいつも通りの事なのか。

 俺にはわからない。

 こいつは何があっても無表情で無感情な声音を出す奴だからだ。

「あぁ。そうか」

「えぇ。隊長が十時三十八分にお出かけになられて、実に六時間二十一分程たっておりますが」

「………………」

 ……どうやって確認していたのかはわからないが、どうやら抜け出していたことがばれていたらしい。

 エウィルは懐から取り出した懐中時計を見て、正確に時間を言い当ててきた。

 …………実に怖い奴だ……。

 さてと。

 恐ろしい副隊長殿もいることだし、山積みの書類を片付けるとするか……。

 そう考え。

 椅子に座り、書類と向き合った。

 山積みの書類は日が沈み、夜が完全に開け、二度目に夜が開ける頃。

 すべて片付いた。

「あぁ……。やっと終わった…………」

 机に両肘をついて、頭痛のする頭を抱え。

 目を閉じる。

 それでもなお感じる痛み。

 おまけとばかりに閉じたはずの目が回る。

「お疲れ様です。隊長」

 変わらず無表情なエウィルがドアを開けて入ってきた。

 『どうぞ』と言って、コトリと置かれたモノは、湯気の立つ茶。

「あぁ。ありがとう」

 礼を言ってそれを口にする。

 茶は程よい温度だった。

 はぁ……。

 こんな事になるのなら。

 こんなにめんどくさい役職、就かなければよかったなぁ……。

 そう思いながら、茶を置き。

 背もたれに凭れ、空を仰いだ。 

 とはいえ、見えるモノなど灰色がかった天井のみだがな…………。

「はぁ…………」

「……隊長。これを」

 ため息をついたとき。

 エウィルが差し出した手紙。

 それを受け取り、表と裏を確認した。

 宛名も何も無い。

 がっちりと封のされた手紙。

「なんだ? これは」

「はい。さる高貴なお方からの、書状でございます」

 さらっと平坦な声で告げられ、嫌な予感がした。

 開けずに済むのであれば、開けたくなどない。

 だが。

 彼の言う『さる高貴なお方』とやらが、俺の考え通りならば、そんなことをしようものなら俺の首は実際に飛んで転がるだろう。

 その後は適当にさらされて、埋められたときの墓石は【狡猾にして最悪の売国奴】とか、不本意なものを掘られるのだろうなぁ……。

 はぁ……。

 俺に回ってくるということは、間違いなく厄介ごとだろう。

 そう思うと自然とため息が出た。

 意を決して封を切り、手紙を開いた。



 ――セゲェル王国防衛騎士軍・第一騎士隊長。ダニル・オルドー。

 本日をもち、ファバル皇国・間諜を命ず。

 即刻国を発ち、情報を集めよ。



 …………まったく。

 この国のお偉いさんは何を考えているのやら……。


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