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野党議員 大森が追う”浅井優衣”

 暴徒たちが占拠した研究所。その事件の解決に政府が動いているとの噂は、野党にとっては興味をそそるものである。そこに政府の闇を感じ取るからである。

 ここに一人の野党の国会議員がいた。その名を大森と言った。大森は今、自分の地盤である地方都市の市街地を離れた山の手に建つ浅井家に向かっていた。


 この国には国民の全データが登録されたサーバーがある。ここにハッキングをかけ、盗み見した者たちがいる事を掴んだ警察は、この者達の正体を掴もうとした。IPアドレスから操作元までは分かったが、そこにはセキュリティのかかっていない無線LANが設置されていて、実際にサーバーに侵入した者を割り出すには至らなかった。ただ、このサーバーに侵入した者達は、年齢16歳の「浅井優衣」と言う少女の居場所を探ろうとしていた痕跡は確認された。

 研究所占拠事件の対応を指揮している官邸側は、浅井家と関係あり気なデータを探っている事と、その無線LANのあった一般人の住所が暴徒たちが占拠している研究所のある大和舞子市だった事から、このアクセスを行った者たちは研究所を占拠しているクローンたちの可能性があると考えていた。

 大森と同じ党所属の公安出身の中堅議員がこの情報を掴み、大森が調査に向かう事になったのだった。

 そこから、何か有益な情報は得られないのか?

 できれば、暴徒たちの正体を掴みたい。

 そう考えていた。


 向かうの車の中では秘書の男がパソコンを叩いて、全国民のデータが登録されているサーバーに接続し、これから向かう浅井家の世帯状況を下調べしている。


 「えっと。今のこの家の主は浅井亮二ですね。

 この浅井家ですが、元々は長男の雅弘が家を継いでいたのですが、16年前に不慮の事故に遭い、夫婦共亡くなったようです」

 「子供は?」

 「問題の優衣って子ですよね。

 少なくとも、今はこの家にはいませんね。

 このシステムは亡くなった者のデータを追跡できませんので、最近亡くなっていたら、これには出てきません」


 そう言った頃、大森を乗せた車は大きな壁で囲まれた屋敷の一角に到着した。片側一車線幅の道路を挟んだ反対側にはいくつもの家が並んでいるのに、屋敷の壁はずっと続いている。屋敷の大きさを誇示するかのように続く壁を大森が、感嘆の表情で眺めている。


 「大きな家だな」


 大森がぽそりと言った。大森と異なり、前を見て運転している運転手が進路上に停車している車を発見し、減速しながら対向車線に出て、その車をかわす。その少し先には正門があった。運転手が減速し、正門に近づく。

 正門のところには、道路から奥まったところに、余裕で車数台が止まれる空間がある。そして、この家の中に通じる扉はその奥にあって、固く閉じられていた。

 大森を乗せた車が一旦その空間に停車すると、監視カメラで見ていたのか、すぐに扉がゆっくりと開き始めた。

 扉が開くと、再び車は進み始める。

 扉が開いたその先は木々が生い茂る空間だった。

 しばらく、奥に進んでいくと大きな日本家屋が見え、その日本家屋の玄関前にはメイドと思われる女性が立っていた。大森たちが車から降りてくると、出迎えていた女性がお辞儀をした。


 「お待ちいたしておりました。

 浅井の所まで、ご案内させていただきます。

 どうぞ、こちらへ」


 その女性は玄関のドアを押えたまま、大森たちを中に招き入れる。玄関は広く、左右に伸びる廊下とその奥には二階に向かう階段があった。


 「どうぞ、こちらへ」


 女性はそう言いながら、大森たちの前に立って、先導していく。やがて、女性は廊下を曲がり、大森たちもその後について、廊下を曲がった。その先にも奥まで続く廊下があったが、女性は一番手前のドアの前で立ち止まった。

 女性がそのドアをノックする。


 「どうぞ」


 中から声がすると、女性は「失礼します」と言いながら、その部屋のドアを開けた。女性がドアを開き、大森たちを中に誘う。

 部屋の中はそれほど広いとは言えなかったが、壁にかかっている絵画、棚に置かれている壷をはじめ、その全てが高価そうなもので飾られていた。


 「大森議員ですね。どうぞ、おかけになってください」


 この家の主 浅井亮二はそう言って、大森たちにソファに座るよう勧めた。


 「では、失礼します」


 大森たちはソファに座った。あまりの豪華な部屋の雰囲気に、思わずきょろきょろとしている。


 「さて、ご用件は?」


 亮二に言われ、大森たちははっとして、正面に向き直った。


 「あ、そうでした。

 浅井優衣と言う女性をご存じでしょうか?」

 「優衣ちゃんの事?

 何があったんですか?」


 亮二は驚いた顔で、逆に問い返してきた。大森たちが、亮二の返事に違和感を覚え少し戸惑っている内に、亮二が言葉を付け足した。


 「優衣ちゃんの事を聞きに来たのは、今日はこれで二組目なんですよ」

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