反乱を起こしたクローンたち
父親の話によると、暴徒が占拠したと言われている研究所は、クローンを製造している研究所で、ヒューマノイドを開発している研究所とは地下でつながっているとの事だった。
どうやら、俺の想像はあたっていたらしい。
クローンを製造している研究所では人体実験用のクローンだけでなく、戦闘用のクローンも造られていて、今回そのクローンたちが反乱を起こし、研究所を占拠した。
当然、事件の解決には政府が動いているが、厄介な事にクローンたちの一部はすでに外の社会に出て、活動していると言う事で、あの研究所だけを制圧すればいいと言う問題ではないらしかった。
クローンたちの要求は大きくは二つからなっている。
一つ目は自分たちにこの国の国籍を与え、人権を認めろと言うものである。
そして、もう一つはこれまでに研究所から連れ出されたクローンの仲間たちを自分たちの下に戻せと言うものであった。
研究所から連れ出されてクローンたち。
それは人体実験に使用されたクローン達であり、すでにこの世にはいない。それだけに、実現不可能なものであり、政府は時間稼ぎをしつつ、事態の解決に動いているとの事だった。
「とんでもない話だね」
ぽそりと俺が言った。興奮気味だった俺も、長い時間話を聞いている内に、少し落ち着きを取り戻していた。
「ああ。
お前だから、話したんだ。
絶対に他の人には言っちゃあだめだ。
もちろん、優衣ちゃんにもだ」
「分かってるよ。
でも、今でも、俺は賛成できないし、認めれない」
そこで、一瞬間をおいてから、話を続けた。
「でも、今すぐ止めろとも言えない。
この占拠事件が全てを解決してくれるのを願ってるよ」
それが俺の言える限界である。俺はそのまま、書斎を出て行った。