解放された俺の家族
外では兵士たちの間には、降り注いだガラス片と突然指揮官が消えた事で動揺が見受けられた。
構えた銃口の角度が下がり気味で、お互い顔を見合わせている兵士たち。
開発棟の中では、優衣ちゃんのためにクローン達が空けた空間を通って、佐川が歩いていく。佐川は優衣ちゃんの所で一度立ち止まると、その足元に転がる二人に冷たい視線を送った後、再び正面を見据えた。
床の所々に散らばるガラス片。佐川が砕け散ったガラス片を踏みしめる度に、ガラスが細かく砕ける音がした。
建物の中から、自分たちに向かって歩いて来る人物。それが自分たちの指揮官の一人である佐川一佐であると視認した兵士たちが、構えていた銃を下す。佐川はさっきまで、大きなガラスドアがあったところを抜け、開発棟の外にまで出て行った。
「俺だ。
そこの一般人たちは解放しろ」
佐川が俺の家族と大森一家を指して言った。佐川の命令に、兵士たちは戸惑いの表情を浮かべている。
上官とは言え、捕まえるように命令を出したのも、別の上官であり、解放すると言う事は、この現場を仕切っている田中の命には反するのだ。彼らはどちらに従うべきなのか、決断を出せていない。
「佐川一佐。
これは一体、どういう事なのでありますか」
きびきびとした発音で、兵士たちを率いているのであろう兵が一度敬礼をして、直立不動の状態でたずねた。
「詳しい話は後だ。
一旦、引き下がれ。
この場の解決は全て私に任してもらいたい。
早くそこの一般人は解放しないさい」
兵士たちは頷き合うと、俺の家族と大森一家を解放した。佐川が中に入れと言うような仕草で、顔を振ったため、俺の家族と大森一家が床に散らばるガラス片に気をつけながら、開発棟の中に入って来た。
兵士たちも開発棟の正面から一斉に引き揚げ始め、研究所の敷地から出て行った。佐川はそれを見届けると、自分も開発棟の中に戻ってき始めた。
外で銃を構え、自分たちを狙っていた兵士たちがいなくなった事で、クローンたちはある程度落ち着きを取り戻し、少し散らばり始めていたが、まだまだ奥の方に集まり気味である。そんな中、俺の前に俺の家族が戻ってきた。
「お父さん、お母さん、真奈美」
俺はうれしくて仕方なかった。俺の両親もほっとしたからか、表情は緩み気味で、何か涙が瞳に溢れている気さえする。
「お兄ちゃん」
真奈美なんか、俺のところに飛び込んできた。少し気になった俺が優衣ちゃんに目をやったが、優衣ちゃんは足元に転がる田中と野本に注意が行っているようで、俺が真奈美と抱き合っている事に気付いていない。
よかった。なんだか、ちょっとほっとした。
ほっとしたのは家族が戻ってきたことだけではない。
どうなるのかと思ったこの戦いに希望が出てきた。俺はそんな気がしていた。




