地下通路を侵攻してくる兵士たち
「地下トンネルを使って、こちらに多くの兵が向かってきております。
マスクを装備しているようですので、ガス系の兵器を持ってきていると思われます」
九重さんは下を向いて泣いている優衣ちゃんを引っ張り、乗ってきたエレベータを目指しながら、事情を説明している。
俺と八重樫さんはその後を追うようについて行きながら、その話を聞いた。
兵たちが再びやって来る。
この戦いはどちらかが敗北するまで続くのではないのか?
敗北。
だとしたら、それは俺たちの方ではないのか?
いくらヒューマノイドがあると言っても、国家に勝てるとは思えない。
俺はここで見た光景への恐怖。
それに激高したクローンから身の危険を感じた事による恐怖。
そして、兵士たちの侵入と言う恐怖。
本気の国家を敵に回した恐怖に、心を縛られ、歩きながらも、足ががくがくしている。
優衣ちゃん、九重さん、八重樫さん、そして俺が乗り込み、ヒューマノイドたちが乗り込もうとすると、優衣ちゃんの口から信じられない命令が出された。
「お前たちは残って、ここにやってくる人間どもを抹殺しろ」
ヒューマノイドたちがエレベータへ乗り込むのをやめ、体を反転させ、俺たちに背を向けた瞬間、エレベータのドアが閉じられた。
「優衣ちゃん」
俺はそう言って、優衣ちゃんのあまりの命令を止めさせようとした。
「じゃあ、言ってみて。
他にどんな手があるって言うのよ」
俺には返す言葉が無かった。話し合いで、なんて言うほど、俺は平和ボケしていない。力で押してくる相手に対抗できるのは力しかない事くらい分かっている。俺はうなだれて黙り込むしかなかった。
五木さんはその頃、この研究所のセキュリティ管制室で監視カメラの映像を見ていた。
五木さんの前にあるいくつものモニターの内、一つは二体のヒューマノイドが待ち構える広い空間が映し出されている。その横のモニターは地下から一階を目指して動き始めたエレベータを映していた。
五木さんが注目しているモニターにはマスクを装備した兵士たちが、映し出されていた。
駈足で移動していく兵士たち。
全員がカメラの撮影範囲を過ぎると、そこには暗闇だけが訪れる。
五木さんが兵士たちの姿が映っている別のモニターを探す。
やがて、地下通路の出口付近のカメラに兵士たちの姿が現れた。
カメラが映し出している空間の先には明るい空間が映し出されている。
兵士たちは速度を落とし、停止した。
その先の空間の様子を探っている。
そんな感じである。指揮官であろう先頭にいる男が右手を振って、行け!と言うような仕草をした。
それに応えるかのように、背後の兵士、二人が進み出た。




