開けられたあの部屋のドア
優衣ちゃんに引っ張られるように、九重さんたちの後を追う。九重さんたちは迷うことなく、エレベータを呼んだ。
九重さんたちと俺たち、そして優衣ちゃん専属の警護に付いているらしいヒューマノイド二体が乗り込んだ。
緊張の瞬間である。こいつらは本当に、地下室へ行く方法を知っているのか?
俺と優衣ちゃんが乗り込むと、九重さんは手にした紙を見ながら、エレベータの階のボタンを次々に押していった。
何だ、あの紙は?
俺が覗き込む。そこには丸い文字で数字が並んでいる。
そこに書かれた数字の羅列は正確に地下室に向かうためのボタン操作を示していたようで、俺たちを乗せたエレベータは静かに下降を始めた。俺の額に脂汗がにじむ。自然と優衣ちゃんとつなぐ手に力も入ってしまう。
静かに開いたエレベータのドアから洩れる光が、ぽつりぽつりと配置された非常用照明だけが灯された薄暗く広い空間に広がって行く。
九重さんが辺りを警戒気味に確認しながら、その先の空間に足を踏み入れると、自動的に照明が点灯し、薄暗かった空間をまばゆい世界に変えて行った。
九重さんが先に進み、辺りを見渡している。
広い空間の先にいくつかのドア。九重さんが一番近いドアに向かい始めた。
ヒューマノイドたちを造っていた部屋である。少しほっとしながらも、俺の心臓は高鳴っている。
ドアを開け、中をのぞく。かなり奥まである広い空間には様々な装置が置かれ、造りかけのヒューマノイドの部品がそこらに置かれたままである。
「ヒューマノイドをここで造っていたようだな」
あの日の優衣ちゃんのように、九重さんは興味深げに、その部屋の奥まで行き、その部屋を見ていた。時には、ステージに置かれたヒューマノイドの腕を取り上げ、その作りを見てみたりして。
俺はただただ黙って、後をついて行く。優衣ちゃんと手をつなぎながら。
はっきり言って、今ならヒューマノイドの部品は触り放題である。興味津々の優衣ちゃんが、クローン達と共にいると言う状況を忘れて、触りだすのではないかと心配だったが、優衣ちゃんは淡々と歩いていた。
やがて、九重さんの興味は満たされたのか、この部屋を後にした。
次の部屋は?
俺は新しい部屋を九重さんが開けようとするのを見て、ごくりと唾を飲んだ。クローンたちを刺激する部屋が、あの部屋だけとは限らないかも知れない。開けた先に、とんでもないものがあればクローンたちが激高するかもしれない。
そこも別に問題はなかった。そんな事を繰り返している内に、ついにあの部屋の番が回ってきた。
九重さんがドアを開け、部屋の中に入った。
その瞬間、九重さんの動きが止まった。俺は九重さんが立ち止まってしまった理由の想像がついている。それだけに、俺たちはこれ以上進むわけにはいかない。そう思い、立ち止まって、優衣ちゃんの手を握りしめた。
俺たちの前にいる八重樫さんが、九重さんが動かない事を怪訝に感じ、身を乗り出して、その先の光景を見ようとした。
「これは?」
八重樫さんの声が震えている。
「何だ、これは?
お前は知っていたのか?」
八重樫さんがそう怒鳴りながら、俺の手を引っ張って中に引きずりこんだ。




