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次の手

 「我々の仲間がここにいたのか?」

 「そのようですね」


 俺はあの光景がさっきよりも現実的なものとして感じられ、心の奥が恐怖に悲鳴を上げ、震える声でそう言ったが、九重さんは単に寒さからとしか思っていないだろう。

 優衣ちゃんはせっせとエレベータで、往復を繰り返し、ヒューマノイドとクローンたちを一階と二階に連れて行った。

 全てが終わると、優衣ちゃんは震えながら、俺の胸に飛び込んできた。きっと、1号タイプに囲まれながら、エレベータに何度か乗ったのだろう。その光景を想像しただけで、俺だってぞっとしてしまう。そんな状況に耐えながら、自分がしなければならない事を耐えて完遂した。きっと、俺の家族を助けたい。そんな思いからだろうと思うと、ますます愛おしくなり、俺は優衣ちゃんを抱きしめながら、頭をなでなでしていた。こうしていれば、優衣ちゃんの心を落ち着きを取り戻すだろう。いや、それは俺もである。


 「おい。

 俺たちの仲間は二階だと聞いているが、行っていいか?」


 そんな俺たちを邪魔するかのように九重さんが言った。俺はクローンたちがどんな状態だったのかが気になった。人体実験を知っていたら、このクローンたちに合わせない方がよいかもしれない。

 どうなの?

 俺はそんな気持ちを瞳に宿しながら、一歩下がり優衣ちゃんを見つめた。優衣ちゃんは頷いた。問題ない。そう言うことだろう。


 「階段で二階に上がってください。

 降りて、左側に進んだ奥が広い会議室になっています。

 そこに集まっていただいています」


 優衣ちゃんがしっかりした口調で言った。もう大丈夫。俺はそう感じた。

 その言葉に従い九重さんが階段に姿を消すと、俺は現実に引き戻された。俺にはしなければならない事があった。ヒューマノイドを指揮下におき、そのマスターである優衣ちゃんがここにいる以上、もはやここで息を潜める必要はない。俺は照明と空調を入れると、自分のスマホで父親に電話をかけ始めた。

 俺の耳に空しく呼び出し音だけが鳴り続ける。

 父親の携帯はきっと俺の家族を拉致った者たちの手にあるはずである。発信者が俺だと知れば必ず出る。俺はそう信じて、呼び出し音を聞き続けている。


 「真一君かね」


 やがて、電話の向こうからそう声が聞こえてきた。


 「俺の家族は無事なんだろうな?」


 俺は精いっぱい、威嚇気味の口調で言った。俺たちの方が優位にある。それを訴えたかった。


 「ああ。今はな。

 君の居場所を聞かせてくれないか。

 迎えをよこすよ。

 さもないと、家族の安全は保障できないな」


 相手は自分たちが優位にある。そう信じきっている。俺は精いっぱいの脅しをかける気でいた。


 「俺のいるところに家族を連れてきてもらいたい。

 俺のいる場所は浅井新薬研究所だ」

 「ほぉ。

 では迎えを行かせるから、大人しく待っているんだな」


 この反応。どうやら、電話の相手はこの研究所の事は知らないらしい。ただ拉致にかかわっているだけなのだろう。


 「あんたは俺がいる場所の意味が分かっていないようだ。

 分からないなら、政府のお偉いさんに確認するか、俺の父親に確認するんだな」


 俺はそう言って、自分の方から電話を切った。俺たちの方が有利。それを感じ取らせるためだ。

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