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逃走!

 走り出した車の窓から、俺は道路に視線を向けた。このあたりには、不法駐車は少ないのか、見える範囲に駐車している車は見えない。大森の自宅近くに止まっている2台の車を除いて。

 大森の自宅近くの暗闇の中、対向車線側に1台の高級セダンとワンボックスカーが停車している。奴らの車に違いない。そう思い視線を向けていると、消防車の赤い光の明滅が、その車の中に乗っている者たちの姿を浮かび上がらせた。

 中にいたのは大森の家を襲おうとしていた男たちだった。

 俺たちの車は大森の秘書の車である。元々マークされていたのか、俺たちの車が横を通り過ぎると、ワンボックスカーがUターンして、俺たちの車を追尾し始めた。

 俺たちの車はワンボックスカーに付けられたまま、大通りに出ていた。深夜とは言え、さすがに大通りにはぽつりぽつりと車が走っている。俺たちの車は遅い車がいれば追い越しをかけ、大通りを飛ばし気味に走り続けていく。秘書の人も、時々ちらりとルームミラーに目をやっている。

 はるか先の信号の信号は青だったが、歩行者信号が点滅を始めた。秘書の人がアクセルを踏み込み、一気に加速を始めた。高排気量の高級SUVとワンボックスカー。加速では俺たちの方が勝っている。ワンボックスカーとの距離が開いていく。

 目の前の信号が黄色になった。秘書の人はアクセルを緩めない。信号が赤になった時、秘書の車は交差点を通り過ぎた。

 俺は振り返って、背後に目をやる。追っていたワンボックスカーは赤で停車するしかなく、減速して行っていた。

 秘書の人はそれでも、減速せず高速道路でもないと言うのに、120Km/hを超える速度で、道路をひた走る。


 「やはりな」


 ワンボックスカーの動きを確認していた九重さんが言った。


 「何がですか?」


 俺がその意味をたずねた。


 「赤で突っ切って来なかったと言う事は、どれだけ距離が離れても、俺たちを追跡できると言う自信があると言う事だ」


 GPS発信機?

 俺は言っている意味が分かった。そんな時、急カーブを切って、車が広い通りから、片側一車線の道路に入って行った。左右にはマンションなどが並ぶ生活道路。しかも、不法駐車の車が点在している。その不法駐車の車をよけながら、俺たちを乗せた車が暗い夜の道路を進んでいく。

 そこからさらに入り組んだ道に入ると、車二台がすれ違おうとすると、ぎりぎりの道路だった。

 秘書の人が車を止めた。俺が道路の先に目をやると、暗闇の先に一台のワンボックスカーが止まっていた。

 すれ違うために速度を落とした。そう思った瞬間、秘書の人がドアを開けた。


 「乗り換える」


 その言葉に九重さんたちも素早く行動を開始した。俺も慌てて、車を降りる。信号で停車しているあの車が追いついてくるまで、長くて二分くらいのはず。

 優衣ちゃんの手を握って、俺は慌てて、そのワンボックスカーに飛び乗った。

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