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作戦成功!

 九重さんはそれを終えると、大森の家の固定電話から、消防に電話をかけた。そして、新聞を手にして、勝手口から外に出た。

 キッチンの横にある小さな勝手口のドアを開けると、外の冷気が一気に部屋の中に流れ込んできた。

 その冷気とこれから起こる脱出作戦に俺は一瞬、ぶるっと身震いした。

 開いた勝手口のドアの向こうに、この家の駐車場が見える。その上部には樹脂製の屋根が設けられ、この家の車がその屋根の下に並んでいた。

 ドアの横にはゴミ箱が置かれているらしかった。九重さんが手にしていた新聞紙に火を点け、そのごみ箱に放り込むと、灯油をしみこませていた新聞は勢いよく燃え上がり、ごみ箱から炎と黒い煙が上がった。

 ごみ箱から伸びた炎がカーポートの樹脂製の屋根に燃え移る。


 「火事だぁー。火事だぁー」


 大声で九重さんが叫ぶ。静まり返っていた住宅街だったが、近くの家々の住人たちが状況を確認しようと、家から次々に飛び出してくる。


 「火事だぁー。火事だぁー」


 異常事態を知らせる叫び声、闇夜を焦がす真っ赤な炎。闇にとけ込む黒煙。瞬く間に、人々が慌てて、大森の家の周りに集まってきた。

 そんな人々に混じり、黒いスーツに大きなマスクで、その顔を隠した男たちの姿がある。怪しい。夜の住宅街にいるには不似合いな集団。こいつらだな。

 マスクの下の表情は読み取れないが、その目には苛立ちが浮かんでいるみたいだ。

 俺たちは家の敷地から、やじ馬たちが続々と集まりつつある道路に飛び出した。

 野次馬の壁を突き抜け、一人人気の少ないところまで駆け出し、立ち止まった大森。そのまま、闇に広がる炎を見ている。やじ馬たちの背後。狙いやすい位置。

 そう思った黒いスーツ姿の男たちが大森に近寄って行ったその時、九重さんの大きな声が聞こえた。


 「あれ?

 君たちはこんな時間に、こんな場所で、どうして、そんな服装なんだ?」


 その声にやじ馬たちの視線が大森の周辺に向かった。多くの者達が家着に何かを羽織っただけと言うのに、なぜか黒いスーツ。しかも、顔を隠すかのようなマスク。それがたった一人ならともかく、何人も固まっている、怪しげな集団。


 「これって、どう見ても放火だよな」


 今度は別の場所で八重樫さんの大きな声がした。集まったやじ馬たちの疑念が男たちに向かった時、大森が追い打ちをかけた。


 「みなさん、見かけない顔ですが、この近く人じゃないですよね?」

 「怪しい」


 今度は大森の秘書が再び声を上げる。


 「あれ?

 ここにも同じような服の人がいますけど?」


 大森の奥さんが不審げな表情で、別のところにいた黒スーツの男に向かって言った。

 集まった人たちは大森の家の火事よりも、この場に似つかわしくない男たちに視線を集中し始めた。

俺は勝ったと思った。男たちは単に火事の騒動に乗じて、俺たちが逃げる気だと思っていたはずだ。しかし、九重さんの作戦はそれだけではなかった。ここを取り囲んでいる男たちを放火犯に仕立て上げると言うものだった。


 「ここにも怪しいのがいるぞ」


 ついには集まってきていたやじ馬たちも言い始めた。

 男たちがやじ馬たちの視線に耐えられず、じりじりと後ずさりする。

 遠くから消防自動車のサイレンが聞こえ始めると、男たちの一人が小走りに、その場を立ち去り始めた。すると、他の仲間たちも立ち去り始めた。

 それを確認すると、俺たちも走り始めた。目指すは大森の秘書が所有する高級SUV。

 その車に乗り込んだのは俺と優衣ちゃんとクローンの九重、八重樫、五木、1号タイプ、運転席には秘書の人である。

 暗闇を照らし出す断続的な真っ赤な光。人の心をざわめかせるサイレンが近づくと、俺たちの車は発進した。

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