包囲網脱出作戦!
俺は自分の両親と妹が心配であったが、それと同じくらい自分の身に危険が迫っている事で、少し青ざめ気味になりそうだった。しかし、そんな様子を優衣ちゃんに気取られてはならない。優衣ちゃんがよけいな心配をしてしまう。
俺は深く息を吸い込むと、ぐっと力を込めて、気持ちを落ち着かせた。
一度家の外に出た九重さんたちは、その外の異様な気配に、部屋に戻って来るとすぐに二階に上がり家の敷地の外の様子を探っていた。そして、二階から下りてきた九重さんの表情は真剣そのものだった。
その表情から、ここもかなりやばいと言う事を感じた。九重さんが何を言うのか、俺の耳は九重さんの口元にロックオンした。
「この家の周囲を怪しげな人影が取り囲んでいる」
取り囲んでいると言うんだ。一人や二人ではないだろう。
俺たちも襲われるんだ。俺はそれを覚悟して、生唾をごくりと飲み込んだ。それでも、どんなことがあっても、優衣ちゃんは守る。そう決意しながら。
「どうする?」
そう、大森に真剣な表情で相談を持ちかけられた九重さんは一度腕組みをした後、低い声で言った。
「こちらも、強硬手段に出るしかないだろう。
もちろん、大森さんが承諾してくれるならだが」
「強硬手段?」
それは何なのか?
俺は二人の会話を見守っている。いくら俺が手を握っているとは言え、今にも謎の集団に襲われるかも知れないと言う緊張感と俺の自宅が襲われたと言う状況に、優衣ちゃんの表情は固まってしまっている。
「人数から言って、力では勝てない。
方法はただ一つ。
この家の片隅に火を放つ」
はい?
俺は目が点になった。火事を起こすと言うのか?
それはとんでもない事だろう。
「消防を呼んで、この家の周りをパニックに陥れる。
人気が多いところでは、奴らと言えど、何もできまい。
警察は手が回っているかも知れんが、消防には奴らも手を回してはいまい」
なるほど。俺は思わず、一人で頷いていた。それはいいアイデアだ。
俺はそう思った。だが、火事を起こされる大森の方はどうなのか、俺が大森に視線を向けた。
「しかし」
大森が受け入れるでもなく、断るでもない言葉を口にして、その顔には苦悩が浮かんでいる。きっと、人の家だと思って、勝手な策を考えやがってと、思っているのだろう。俺だって、そう思ったに違いない。
しかし、その作戦が理に適っている事も理解しているから、断れないのだろう。
「時間が無い」
九重さんが大森に決断を迫った。
「分かった。君に任せよう」
「ありがとうございます。
では、まずこの家の者を全てここに集めてください」
その言葉に大森は二階に駆け上がり、奥さんと真子ちゃんを連れて戻ってきた。
「いいですか。
外のごみ箱を誰かに放火された。
そうしてください。
ここの一家はそのまま消防に事情を話す事になるでしょうから、その世間の目がある間に逃げてください。
我々はそれよりも早く、騒動の途中にここから逃げます」
そう言うと九重さんはみんなに敵の服装と作戦を説明した。その作戦に、俺はちょっとばかり自信をもった。それならやれるんじゃないかと。




