わなにかかったのは俺たちなのか?
「お前たちこそ、その子たちをどこに連れて行く気だ」
九重さんは男たちを睨みつけながら言った。クローン達と男たちはにらみ合い、俺たち二人への注意は疎かになっている。少しでも安全な場所に移動するなら、今がチャンスである。目だたないよう、俺と優衣ちゃんはマンションの壁に背をつけ、じりじりと男たちから少しずつ離れて行っていた。
「ふん。
待ち伏せしたつもりか?」
男が発したその言葉が俺を不安に陥れた。九重さんが辺りを見渡しはじめた。俺たちは罠をはったつもりだったが、もしかすると、逆にはめられた。九重さんもそう感じたんだろう。
俺も辺りを見渡す。
静まり返ったマンション、見える範囲では建物の中に人気はない。
駐車場、特に怪しげな車はない。
マンションの外に面した道路にも、通行人はいない。
ただ、一台のワンボックスカーが停車していた。それも、運転席と助手席以外はスモークガラスに覆われ、車内の様子は見えない。
あれか!
俺が思った瞬間、九重さんと向かい合っていた男が片手を上げ、それを合図に、そのワンボックスカーから男たちが飛び降りてきた。
その数2人。
その気配を察した九重さんたちが、道路側に視線を向けた。
スーツにネクタイ姿で、見た目は普通の会社員か何かのように見える二人が、こちらに向かってきている。
「10-1号さん、いえ十合さん。それに佐川一佐」
そう言って、九重さんたちが驚きの表情で、やって来る男たちを見守っている。
「お前たちに話がある」
九重さんたちが十合と呼んだ男の人が、九重さんたちにそう言った。
「今からでも、遅くはない。
俺たちと一緒に来い」
「悪いのですが、我々は行けません。
人間と言うものを信じることができないのです」
「なぜ?」
九重さんたちの注意がその十合と言う人たちに向かっている隙に、俺と優衣ちゃんのところに男たちがやって来て、腕をつかんできた。
俺と優衣ちゃんも九重さんたちを見ていたため、横から近づいてきている男たちに気付いていなかった。
俺と優衣ちゃんが暴れ回って、腕を振りほどこうとした事で、九重さんたちの注意が俺たちに向いた。
「その子を離しなさい。
縛ってある紐も、さるぐつわも外しなさい」
俺も優衣ちゃんも、その声に振り返った。そう言ったのは十合と言う人で、その顔には怒りの表情が浮かんでいた。俺と優衣ちゃんの腕を掴んでいた男たちは、掴んだ腕を離そうとはしていなかったが、その動きを止めて、十合の方を見ていた。
「離しなさい。
紐も猿ぐつわもほどきなさい」
今度は佐川一佐と言う人がそう言うと、掴んでいた優衣ちゃんの腕を離し、両手を縛っていた紐と猿ぐつわを外した。俺もはずせよ。俺がそんな勢いで、掴まれていた腕を振りほどく。




