表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/74

襲われた優衣ちゃん

 研究所占拠事件が解決してから、二日後の朝。


 優衣ちゃんは俺の学校よりも遠い場所にある私立に通っているため、この家の高校生3人の中では、一番早くに家を出る。俺はそんな優衣ちゃんが家を出て、かなり後になって家を出るのが普通である。今朝もさっき優衣ちゃんは家を出て行った。俺は玄関を出て行くマスク姿の優衣ちゃんを見て、ふと思った。

 一緒に行きたいじゃねぇか。

 真奈美は今日帰ってくる。あいつが帰ってきたら、何かと邪魔をしてくるに決まっている。今日は真奈美のいない最後の日だ。そう思うと、優衣ちゃんと一緒に行きたい気がしてたまらない。

 俺は慌てて、二階の自分の部屋に駆け戻り鞄を持って、家を飛び出した。

 その差は一分程度。この家からは下り坂。優衣ちゃんが女の子と言っても、スピードは出そうと思えば、かなり出せる。自転車では追いつけないかも知れないが、駅では同じ電車になれるはず。


 俺は家を飛び出すと、自転車に飛び乗り、思いっきりペダルをこいで、道路に飛びだした。

 はっきり言って、俺の家はこの斜面に立つ住宅街の最上部にある。あたりに人気はなく、飛ばし放題である。

 俺がハンドルを切って、駅に続く坂に自転車を乗り入れた。ここからの見晴らしはいい。大きく広い道路が真っ直ぐ続いている。坂の下に行けば行くほど、車や人通りは多くなっていくが、それはまだ先の話で、まだ俺の周りに人気はない。

 俺の興味は今、優衣ちゃんはどこまで行っているのかである。視線を先に送って行く。少し先にワンボックスカーが一台停車していて、そこに数人の人影が見える。


 「えっ」


 その時、俺は絶句しかかった。

 ワンボックスカーの横に自転車が倒れている。その自転車の近くには鞄が転がっていて、その鞄には見覚えのあるアクセサリーがいっぱい付いている。


 「優衣ちゃん」


 俺は優衣ちゃんが事故に遭ったものと思い、慌ててそのワンボックスカーを目指す。そこにいた男たちの一人が、そんな俺に気付いた。


 「あいつも奈良岡の息子だ。

 予定外だが捕まえろ」


 俺は耳を疑った。それって、事故ではなく、誘拐、拉致かよ?

 しかも、俺たちがどこの誰だか知っての犯行。

 俺は慌てて、ブレーキを握った。心を苛立たせる甲高い金属音がする。

 だが、すぐに俺は思い直した。俺がここで逃げても仕方ない。あいつらは優衣ちゃんを捕まえているはずである。

 俺の大事な優衣ちゃん。

 あんな男たちの手に渡すわけにはいかない。


 「うぉー」


 俺は雄たけびを上げて、男たちに自転車で突撃をかけた。

 男たちとの距離が瞬く間に縮まって行く。

 男たちは俺にびびった様子すら見せていない。

 本当にはねてやる。

 そんな気持ちで、突撃して行った俺だったが、男たちは軽々と直前で身をかわし、自転車に乗っている俺を横から蹴り飛ばしやがった。

 俺はバランスを崩し、激しく自転車ごと道路に転がってしまった。


 「痛ってぇ」


 俺がそう思った時には、男たちに取り囲まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ