優衣ちゃんが聞かされた真実
結局、優衣ちゃんは俺に全てを話してくれた。
今日、帰ってくると、俺の父親に話があると連れ出され、俺がこの前聞かされた、今話題の研究所占拠事件の話を聞かされたらしかった。
あの時にも言っていたが、クローンたちの要求は人権の獲得であり、この国の国民となる事だったが、政府がその要求を呑み、彼らの国民への登録申請を受け付けると言ったらしかった。
そして、その話を優衣ちゃんに俺の父親がして、登録申請をするように勧めたらしかった。
自分が浅井優衣と言う人間であると信じて生きてきていた優衣ちゃんは、その話で、初めて自分が浅井優衣と言う人のクローンであると言う事実を知り、計り知れない衝撃を受けた。
そう言うことだった。
俺も自分がクローンだと聞かされれば、相当なショックを受けたに違いない。
人は集団に寄りかからずに生きられない弱さがある。
自分が所属していた集団。その居場所を失う心細さに疎外感。
しかも、人間とクローン。
どちらも生物的には同じだが、社会的にはクローンは弱者である。
自分がそのクローン側であったと知ったショック。
だが、俺は優衣ちゃんがクローンであっても、今までと変わりなく、優衣ちゃんが大好きだし、俺の父親が優衣ちゃんに勧めたように、国民となるのが一番だと思っていた。
俺はそのため、全面的な協力をすることにした。
何でも、その申請には居所を明確にしなければならないらしかった。俺の家でいいじゃないかと、俺は優衣ちゃんに言ったが、この家にクローンがいたと言う事で、迷惑がかかってはいけないと言って譲らなかったので、優衣ちゃんのために、ワンルームの部屋を借りた。
借りたと言っても、形だけみたいなもので、基本的には今までどおり、俺の家で暮らすのだが。