優衣ちゃんはクローン?
何の事だ?
はっきり言って、俺には優衣ちゃんが言っている言葉の意味が分からない。
首をかしげる仕草をした俺を見て、優衣ちゃんが言葉を続けた。
「私ね、真一さんやおじさまのような人間じゃなかったの。
真一さん、見たよね、クローン」
俺は頷いてみせたが、優衣ちゃんの言っている事の意味はまだ分からない。
優衣ちゃんはふぅと一息吐いて、暗い夜空を見上げてから、話を続けた。
「実は、私もクローンだったみたい」
優衣ちゃんはそう言うと、俺から目をそらし、俯きながら、体を小さく震わせ始めた。
俺の頭の中は十分な整理ができていない。人体実験のために、クローンを造った。戦闘部隊のためにクローンを造った。それぞれには納得できる理由がある。でも、優衣ちゃんがクローンである理由が無い。
なんで?
その話はまじなのか?
それが俺の素直な気持ちだ。
だが、そんな嘘を俺に優衣ちゃんが言う理由も無い訳で、それは事実なんだろう。
だとしてもだ、俺の答えは決まっている。
俺は再び優衣ちゃんを抱きしめた。
そして、優衣ちゃんの耳の横で囁いた。
「優衣ちゃん、ちょっと驚いたし、それが本当なのかどうか分からないけど、そんな事は関係ないよ。
優衣ちゃんは優衣ちゃんだろう。俺はどんなことがあっても、優衣ちゃんの味方だ。
俺はここにいる優衣ちゃんが好きなんだ」
そこまで言うと、俺は優衣ちゃんを抱きしめた。
「ありがとう。真一さん」
優衣ちゃんはまだ顔を上げる事ができず、うつむいたまま、震えるような声で言った。
込み上げてくる愛おしさ。
俺は今まで以上に力を込めて、ぎゅっと優衣ちゃんを抱きしめた。
長いような短いような時が、俺たちを包み込んでいた。