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衝撃の光景!

ちょっと違うタイトルで、他のサイトでアップしていたんですけど、サーバートラブルか何かで、アクセス権が無くなり、更新できないままになっていました。

こちらで、全面改稿して、完結目指します!


よろしくお願いします!

 俺 奈良岡真一は、俺の父親が所長を務めている「浅井新薬研究所」のエレベータの中にいる。無機質な狭い空間を天井に取り付けられた蛍光管がその中に乗っている俺たちを白く照らし出している。俺と一緒に乗っているのは、俺の父親 奈良岡貴志と俺の家で暮らしている浅井優衣ちゃんだ。

 浅井優衣ちゃんはこの研究所の設立者の娘さんで、高1。俺より二つ年下で、両親は優衣ちゃんが赤ちゃんだった頃に事故で亡くなっており、ずっと俺の家で暮らしている。小柄な背中に流れるようなストレートな髪、見つめた時に返してくるとろけんばかりの笑顔を引き立てる大きな瞳。俺ははっきり言って、この子が好きだ。

 今日も、俺の父親が突然海外出張に行かなければならなくなったとかで、出張用のスーツケースを優衣ちゃんが持ってくると言うので、俺もついてきたのだ。

 そして、その俺の父親は俺が言うのもなんだが、この国のヒューマノイド開発の第一人者と言う凄い人物なんだが、この研究所の名前が示す通り、それは公にしてはいけない事らしくて、あくまでも、薬品の研究をしている事になっているのだ。

 何だか難しい事をしているが、どちらかと言うといつも笑顔で、フランクで面白い人である。体型もスマートで、ナイスミドルとは俺の父親のような人の事を言うのだと思う。


 今、俺れたちが向かっているのは、そのヒューマノイド開発が密かに行われている地下室である。密かに、と言うだけあって、エレベータに地下のボタンは無いのだ。特定のキーを順序正しく押して行くと、地下に行けると言う代物だ。

 電子音と言うか、古めかしい金属的な高い音がして、俺たちを乗せたエレベータが停止した。このエレベータのドアにはガラス窓が設けられていないので、開くまでその先の空間の光景は見る事ができない。俺はここに来たことが無い。この先に広がる空間は初めて見る光景だ。ヒューマノイドを開発している場所。きっと、そこにはいろんな装置が並んでいるのだろうと、俺の頭の中はこれまでの知識で勝手なイメージを作り上げている。


 目の前のクリーム色に塗装された金属製のドアがゆっくりと開いていく。

 開いたエレベータの扉の前には広い空間が広がっていて、その空間の先にはいくつもの扉があり、その先の部屋とこの空間とを隔てていた。

 ちよっと、想像とはかけ離れていた。まあ、ここは広い廊下と言うか、ホールみたいな場所なんだろう。


 「今の成果を見せてあげよう」


 俺の父親が優衣ちゃんにそう言って、エレベータを降りて、先を歩いて行く。そんな父親の後を、優衣ちゃんは嬉しそうな顔でぴょんぴょんと言う感じでついて行く。

 その嬉しそうな笑顔、俺にもくれよ!

 そう言いたいところだ。

 何しろ、昔から優衣ちゃんは父親のやっているこの仕事に、とても興味を持っているが、俺はさして興味が無い。ここの中を見るよりも、一番の楽しみは優衣ちゃんの顔を見ることだ。

 俺の父親が一つのドアを開けた。ドアが開くと、ホールのような空間に喧騒が訪れた。何か金属を削っているような音、人々の話し声、様々な空気の振動が伝わってきた。

 父親がそのドアの中に姿を消すと、優衣ちゃんが後に続いた。俺もその後を追って中に入ると、俺たち三人の前に一人の女性が立ちはだかった。セミロングの黒髪のスーツ姿の大人の女性だ。きっと、ここの職員なんだろう。


 「所長、こちらのお二人はどちら様でしょうか?この部屋は部外者立ち入り禁止のセキュリティレベルに設定されているのですが?」


 まぁ、仕事熱心なのは分かるが、ここの所長が連れてきてんだから、いいじゃねぇか!

 俺はそんな気持ちを込めて、きっつい目でその女の人を睨み付けた。


 「ああ、君に言われずとも、そんな事は承知している」


 俺の父親が落ち着いた口調で、その女の人に言った。

 優衣ちゃんに目をやると、悪い事をしちゃったかな?と言う困惑した表情を浮かべているではないか。 ここは所長として、もっと、きっつい言葉で言ってやれ!

 俺は優衣ちゃんの楽しげな気分を削いだこの女の人に対して、敵意さえ抱き始めていた。


 「では、何故ここの職員でない者を?」


 まだ言うか!

 俺がそう思っていると、俺の父親は突然その女の人の背中に手を回した。

 おいおい、いくら部下とは言え、触っちゃあいかんだろ。

 それはセクハラで訴えられるんじゃね?

 俺は目が点になりながら、その手の先の動きから、視線が外れない。

 今、ブ、ブラ引っ張ったんじゃね?

 俺がそう思った時、その女の人は全身の力が抜けたかのように、へなへなと座り込むような動作をして、うなだれたまま動かなくなった。

 な、な、何やったんだ?

 俺が狼狽気味になっていると、優衣ちゃんが大きな瞳がさらに大きくなるほど、思いっきり見開いて俺の父親に言った。


 「もしかして、これがヒューマノイドですか?」


 えっ?まじっすか?

 人間と変わらねぇーじゃん。

 俺が驚いた表情で、優衣ちゃんに目をやる。

 優衣ちゃんは驚きと、最大限の尊敬のまなざしを向けて、俺の父親を見ていた。

 俺としては、ビミョーなとこである。


 「前に見せてもらった時には、こんな人間みたいな事はできなくて、人工頭脳の開発がまだまだと言っておられましたですよね」


 そう言った優衣ちゃんの目は輝いていて、俺の父親もそんな優衣ちゃんに嬉しそうな顔を向けている。


 「そうだよ。これはここの警戒と案内を担当するヒューマノイドだ。

 もう人間と区別が付かないくらい精度があがったんだ。

 自我を持っていると言っていいだろう。

 今度優衣ちゃんが来てくれた時のために、このヒューマノイドに、優衣ちゃんの事も登録しておくよ。

さあ、奥に行こう」


 お、おい、優衣ちゃんだけなのか?俺は?俺はしてくれないか?

と思わない事はなかったが、俺自身、すっげーとは思うが、興味がある訳ではないので、まあどっちでもいいのが本音である。

 俺の父親はその部屋の中に進み始めた。

 この部屋は研究開発と言うより、試作するための場所のようで、何人かの人たちが、いかにも造っていますと言う雰囲気の作業をしていた。さっきから聞こえている金属を削るような音も、この中で何かのパーツを造る時に発生しているのだろう。

 さすがに、こんな場所は滅多に見れないので、優衣ちゃんだけでなく、俺もきょろきょろと、そんな光景を珍しそうに見ながら、父親の後をついていく。


 「ここまで、研究が進んだのは、すべて支援をして下さった優衣ちゃんのご両親のご理解が礎になっているんだよ」


 父親が歩きながら優衣ちゃんに笑顔を向け、そう言った。

 俺もその話は知っている。

 この研究所を建てたのは優衣ちゃんの両親な訳だが、そもそも優衣ちゃんの両親は企業家で、俺の父親と親交があった縁で、父親の研究に協力するため、このヒューマノイド研究に資金を提供し、この研究所も建てたらしい。

 最初はそのため、この研究所もヒューマノイド研究も公にしていたが、政府の意向で隠すことになったと聞いている。

 さらに奥に進むと、男性タイプのまだ起動していないヒューマノイドが並んでいた。目を閉じた状態で、直立不動だ。顔も、服装も様々である。どちらかと言うと、軍服なんてものではなく、普通の服装ではあるが、ヒューマノイドと言うだけで、威圧感を感じてしまう。どうせなら、さっきの女の人の方がいいな。やっぱ、男のヒューマノイドって、恐ろしい気がする。

 俺がそんな事を思いながら、ずらっと並ぶヒューマノイドに視線を送っていると、優衣ちゃんが言った。


 「これは男性タイプなんですね。やっぱり、力も強いんですか?」

 「ああ、そうだよ。戦闘にも使えるくらいね」


 やっぱりかよ。

 俺の嫌な予感が当たりやがったじゃねぇか。


 「戦闘ですか?」


 そう言う優衣ちゃんの表情は、打って変わって暗い。

 俺と同じようにきっと、今、優衣ちゃんの頭の中にはアンドロイドが人間を殲滅しようとしている映画の一シーンが浮かんでいるはずだ。

 生身の人間が機械に勝てる訳がない。

 俺の父親はそんな優衣ちゃんの心境を敏感に感じ取ったのか、明るく笑い飛ばしはじめた。


 「ははは。そう言う用途もあると言うだけだよ」

 「SFなんかでは人間の味方だけでなく、敵になるロボットもいますが、これはどうなのですか?

自我を確立した人工知能ともなると、よけい危険な気がします」

 「ははは。優衣ちゃんはいいところを衝くね。その通り、自我を持たせると、危険だ。

 このヒューマノイドには判断を柔軟に行わせるために自我を持たせているが、さらにその上位にプロテクトがかけられているんだよ」

 「たとえば、人間には危害を加えないとかですか?」

 「そうだね。それができれば、いいのだが、そう言うプロテクトはあり得ないんだよ」

 「たとえば、敵を攻撃できないと言うことですね」

 「優衣ちゃんはやっぱり頭の回転が速いね。まあ、そう言うことだ。

 たとえば、ボディガードにヒューマノイドをしたとして、攻撃をかけて来た犯罪者に対して、危害を与えずに守りきれるとは限らない。とするなら、敵にある程度の攻撃をしなければならないだろう?」


 何なんだ、この二人の会話は。俺はのけ者扱い気分で、ただ二人の後について行く。


 「では、どのようなプロテクトなんですか?」


 優衣ちゃんが質問を続けた。


 「それはね、起動をかけた人間の指示に絶対的に従うと言うものなんだよ」

 「ではその人間が悪人だったら?」

 「まあ、そうならんようにすることだろうね」

 「私は不安です。

 SWは切れないんですか?」

 「ははは。素直だね。一度起動すると、切れないようになっている。ミッション遂行中にSWを切られたら困るだろう」

 「そうなんですか?」


 優衣ちゃんが曇った表情でそう言った時、俺の父親の構内用PHSが鳴った。

 俺の父親が立ち止まって電話をしているため、俺は手持無沙汰に立ち止まり、優衣ちゃんに微笑みかける。しかし、優衣ちゃんはそんな俺に気付くこともなく、目を輝かせながら、辺りを見渡している。

 電話は呼び出しだったようで、父親は電話をすぐに切り、俺たちに言った。


 「悪い。ちょっと戻らなければならなくなった」

 「分かりました」


 優衣ちゃんがそう言うと、俺の父親は来た道に向かって歩き始めた。

 俺もその後を追って、歩き始めた時、優衣ちゃんが声をかけてきた。


 「あの。もう少しだけ見てから帰ってもいいですか?」


 マジ好きなんだな。こんな事が。

 俺がそう思った時、俺の父親は振り返って、言った。


 「言わなくても大丈夫だと思うけど、触ったり、仕事している人の邪魔はしないように」


 その言葉を聞いた優衣ちゃんの顔は満面の笑みだった。


 「ありがとうございます」


 優衣ちゃんが頭を下げながら、そう言う。

 それからしばらく、俺は優衣ちゃんを。優衣ちゃんはヒューマノイドが造られる様を見つめていた。

 満足した優衣ちゃんがこの部屋を出ようと言ったのは、それから10分ほどした頃だった。

 あの入り口付近にいた女性型のヒューマノイドは、ドアの知近くで座り込んだ状態で停止したままである。それを横目に見ながら、優衣ちゃんがドアを開け、外に出る。俺たち二人が部屋を出た時、エレベータ前の空間には誰もいなかった。

 優衣ちゃんがエレベータを呼ぼうと、エレベータに近づいた時、エレベータが到着した。誰かが降りてきたようだ優衣ちゃんが慌てて降りてくる人のために、ドアの前から横にずれると、エレベータから手に 書類やらパソコンやらを抱えた若い男の人が降りてきた。

 エレベータの横に立っている優衣ちゃんに気付いたその男の人が、少し嬉しそうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。

 むっ。

 そんな感情を俺が抱いた瞬間、その男の人は優衣ちゃんに言った。


 「ごめん。

 あそこのドア開けてくれないかな?」


 そう言うことか。

 あの男の人は両手がふさがっているため、優衣ちゃんにドアを開けるのを手伝ってもらおうと言うだけか。

 俺はそう思うと、小走りにドアが並ぶ空間を目指しながら、聞いた。


 「どこのドアですか?」


 男の俺がいるのに、女の子にドアを開けるなんて、まねはさせられない。

 ここは俺がやらなきゃな。


 「あそこの人口知能実験室」


 男の人は顎で場所を指しながら、そう言った。

 あれか?

 俺がそう思いながら、そのドアに向かって、ドアの取っ手に手をかけた。手をかけて、取っ手を押してみると、すんなりとドアが開いた。どうやら、何のロックもないみたいだ。この研究所は厳重なセキュリティが施されているのだが、この空間だけは無防備に近いみたいである。さっき俺たちが見学した部屋だって、ドアにカギは無かった。その理由はおそらく、この地下に普通の者はやって来れないと言う前提に立っているからなんだろう。

 俺がドアを開けると、男の人は軽く頭を下げながら、中に入って行く。

 興味津々の優衣ちゃんはその男の人について来て、首を傾けながら、部屋の中を覗き込もうとしている。


 「ありがとう」


 その男の人はドアを通り抜けて、俺たちにそう言った。


 「いいえ」


 俺がそう言った時、大きな目を見開き、両手で鼻と口を押えて、小さく震えている優衣ちゃんに気付いた。


 「何?」


 そう言って、俺も部屋の中を覗き込んだ。

 そこには信じられない光景が広がっていた。

 人間が頭蓋骨を割られた状態で、手足を枷で拘束され、椅子のような形状のものに座らされている。

しかも、その割られた頭蓋骨からむき出しになっている脳には、何か信号をとるためと思われるプローブがいくつも差し込まれていた。

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