真骨頂A&B
「宇木先輩!どうして!?」
「話は後だよ。大川くんはちょーっと下がっててね」
宇木の両手には黒い手袋がつけられていた。
この銃のようなものだろうか、白ではない濁った色をした蒸気が少し出ている。
立ち上がった猿の持っていた日本刀は折れたはずの刃が完全に復活していた。
宇木が両手を胸の前で開いてこう言った。
「待ってください。僕らは敵じゃないですから、話を……ダメか」
勢い良く切りつけてくるその刃を宇木は白刃取りの要領で受け止める。
「許してくださいね」
そのまま刃の先端を折り、流れるように猿の右肩部に刺し込む。
「ギッ……」
よろめく猿畳み掛けるように左ストレートを繰り出す。
「すげえ…」
なんだこれ、カンフー映画みたいな映像が目の前で繰り広げられている。
宇木が殴るたびに猿は悲痛な声を上げる。
もう既によろよろだ。
猿はあっさりとコンクリートに倒れ込んだ。
「ふぅー終わったかなー?」
宇木が手の甲で額をぬぐいながら言う。
「倒した…のか…?」
「そうみたいだね…」宇木が倒れている猿に向けて合掌をする。
宇木は振り向いてこちらに向かって歩き始めた。
「じゃあとりあえず、大川くんと野田くっ…」
宇木が何かに思いっきり横から殴られ、5メートルほど距離のある屋上の縁に頭からたたきつけられた。
宇木をものすごい力で殴った猿は、猿と呼ぶにふさわしくない姿になっていた。
猿と呼ぶにふさわしくない姿というのも、チーターとゴリラの中間のような形で四つん這いに、
手元には爪が鋭く光っていて、
そして、全身が黒く染まっていた。
「いったぁ…」
宇木が頭を抱えながら立ち上がった。
ギ、ギ、ギイィイィィイィィィィイィイィーーーーーーーーーーーー!!!!
地響きがするほどの吠えだった。
野田は思わず耳をふさぐ。
宇木は、よろめいて屋上の縁に足をつまづき。
「あ」宇木が落下した。
「宇木先輩!」大川が必死に叫ぶ。
あの人なら骨折くらいですむかもしれないが…
「やばい…どうする…」野田がつぶやく。
大川は深呼吸をしている。
「…よし」
大川が化け物に銃を向けた。
「大川!やばいって!!」
「野田も銃を向けてくれ!2対1なら…それか…」
大川が化け物から目をそらさずに言う。
「…それか、今すぐ逃げてくれ」
野田は早急に逃げ出したかったが……
猿に狙いを定めた。
「3つ数えて一気に撃つぞ!」
「………」野田には、返事の余裕もない。
化け物がゆらりと動き始める。
「いち」
野田が瞬きをする。
「にの」
目を開けると猿の姿が消えていた。
ドンっ
鈍い音と共に足元に振動を感じる。
背後に気配。
なんかデジャヴ。
「さんっ!!」
振り返ると、目の前に化け物が。
すかさず連射する。少しだけ黒い血飛沫をあげて猿の腹部の皮膚と肉がはじけ飛ぶ。
「効いてる!」野田が思わず声をあげる。
化け物が大川を爪で切りつけようとする。
それを間一髪でかわす大川。
大川の前髪と頬が少し切られ、赤い血が垂れる。
すかさず大川は猿の額に銃を突きつけ、ゼロ距離で引き金を引く。
バシュッ
後に大きくよろめきまた叫び声をあげる。
(すげぇ…倒せる!)野田がそう思った。
が、次の瞬間大川の銃がバシッと音を立てて空中に弾き飛ばされた。
「…うわ…」大川の顔が真っ青になる。
化け物が大川の頭をがしっと掴んだ。
聞こえるのは夜風の音だけだ。
「死ぬのが恐ろしいか?」
「大丈夫…大丈夫だ…」
「殺すつもりがなかったが、仕方ない」
「ハァ…ハァ…」
大川がニヤっと笑う。
「それほど恐ろしいか」
「………」
「赦せ」
「…こっちのセリフ」
バシュッ
野田の発弾した弾が化物の頭に命中した。
「ハァ…ハァ…ううっ」野田の指は震え、目は潤んでいた。
化け物が頭をおさえてよろめいたが、すぐに野田の方向に飛び出した。
野田が動けるはずもなく。
静かに目を閉じた。
暗く冷たい夜の屋上に赤い血が流れる。
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