酸素不足少年の憂鬱
翌日、大川は登校途中に野田の姿を見かけた。
「おい野田ー昨日はどうしたんだよ?」
野田に駆けよりながら大体答えの予想がつく質問を投げかける。
「…おぉ大川か…昨日はちょっと…ってだいたい予想つくだろ…?」
野田の表情が曇る。
「大丈夫なのか?」
「ああ、もう発作の起きる気配もないくらいに…」
「それなんだけど…昨日いろいろ聞いて回ってさ。そしたらなにやら詳しい人がいて…」
「え、わかったのか?」
「野田を連れてくれば詳しく教えてくれるって」
「そうか…じゃあ今日の放課後にでも…」
「ごめん。昨日休んだから今日は出ないと…その、実行委員の仕事」
野田がえーとめもんーともつかない声を出して嫌そうな顔する。
「時間が出来れば行けるからさ、ホラ、佐々1人にやらせるのもわるいし...」
大川が言うと野田の表情がさらに曇る。
「なんだよ…こんな時まで佐々かよ…」腑に落ちなさそうに野田がつぶやく。
「………」
「………」
「あのさ」
話を切り出したの大川だった。
「前から思ってたんだけど、野田って佐々のこと好きなの?」
「ハァ!?何いってんの!?そんな…」顔の赤くなった野田が全力でごまかそうとする。
「ああ、やっぱり?図星?なんだよー言ってくれればいいのに」大川がニヤニヤする。
「意味わかんねーって!やめろよ!」
野田が必死。
「だったらいっそのこと告っちゃえばいいのに」
「やめろって」
「いや、イケると思うけどなーやってみろって」
「やめろよ…」
「ここは勇気をもってさ、告っ…」
「もういいって!」野田が立ち止まって大声で言った。
「野田…」「俺には無理だって!わかってんだろ!?」
何かを察した大川。
「なんだよ…あのことまだ気にしてんのかよ?」間が開いてから大川言う。
「あのこととか言ってんなよ!はっきり言えばいいじゃねぇか!俺の肺が不良品だって!」
大川の方を向いて、左胸を押さえながらつらそうな顔でそう叫んだ。
「そんなこと、関係ねぇって!」
「お前にはそんなことでも俺にとっちゃ大事なんだよ!!」
『なになに?』
『朝からケンカか?』
「そんなふうに思っていったんじゃねぇって!」
周りの目も気にしないで大川が叫ぶ。
「…何だってんだよ…だいたいお前…あの時だって…」野田が力なくつぶやく。
「なんだよ?あのときって…まさか野田が転校してきたときの話じゃないよな!?あの時の話はもう終わっただろ!」
「…うるせえよ…。もう俺には関わらないでくれ…」野田はそう言って逃げるように走り去っていった。
「………なんだよ…」
☆
結局あれから、その日は一度も野田と喋らなかった大川は佐々と2人で実行委員の作業を進めていた。
「今日、大川くん元気ないね」
「そんなことないけどな…」
「そんなことあるよ」
「そうかなぁ」
元気がないと言われる理由は自分でも明白だと思った。しかしどうしたものか…
だめだ!今は黙々と作業に集中するんだ!
ようやく心が落ち着いてきたようだ。
ギィイィィィイィーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
!
「なんだろう今の音!?」佐々が言う。
前にも聞いた事がある。無機質な音だ。
「事故かな?」当たり前だが佐々は何も知らない。
「事故じゃないか?俺ちょっとトイレに行ってくるわ。」
「鞄持ってトイレに行くの?」
「…………」
「どこ行くの?」
「…俺が戻ってくるまでこの部屋から出ないでくれ」
「え…わ、わかった…」
次話はいよいよ....