咲き誇る金の薔薇、黒き薔薇に貫かれ 前編
あらすじ読んでね。知らないよ。
「明日の夜。お返事を伺いにあなたのお部屋に参ります。色良いお返事をいただけること、期待しております」
ウィリアムにそう告げられたのはもう昨日のこと。今は正午。残された時間は限られている。どうしよう。こんな重大な決断を下さなければならないというのに。ああ、ひとまず兄の顔が見たい。
自他共に厳しく、常に国家のためを思って行動するガイウスは、しかしたった一人の弟であるルキウス、彼と二人きりの時にだけには優しい顔を見せていた。
ガイウスの部屋を訪れたルキウス。
「兄上」
「どうしたルキウス。こんな時間に珍しいな。今日は公務もないのか」
「……ええ。急に兄上の顔が見たくなり、つい訪ねてしまったのです。兄上こそ、お忙しかったなら、すぐに失礼します」
「なに、かまわん。大切な弟との交流以上に優先することなどあるものか」
「……ありがとうございます」
「ふむ。……顔色がすぐれないな。少しこっちにきなさい。ルキウス」
「っ!兄上……?」
手招きしルキウスを近くに呼んだガイウスは、突然ルキウスを抱擁した。
「お前は幼い頃から、一人でなんでも抱え込んでしまう。何か悩み事があるなら、私に話してくれないか。ルキウス」
「こんな……幼子のような扱い……恥ずかしいです……兄上……」
「なにも恥ずかしがることなどない。今この部屋にいるのは私とお前の二人っきりだ」
「兄上……」
心優しき兄の思いに触れたルキウス。ああそうだ。こんな心優しき兄が、民にそう酷い負担を強いることなどない。皆は兄上を血の通わぬ合理主義者だというが、決してそんなことはない。現に兄はこんなにも私に優しくしてくれるではないか。そうだ。断ろう。ウィリアムにははっきりとノーを告げよう。私は兄を信じているから。
まあウィリアムにドロドロにされるんですけどね。




