調査
孤児院で発生している瘴気の出所は……?
その後、私達は子供達と別れ、応接室へと向かった。応接室で私達を出迎えたのは、六十代くらいの年齢の女性。白髪をアップにしていて、白いシャツと緑色のスカートを品良く着こなしている。
ソファーに腰掛けたその女性は、向かいのソファーに腰掛けた私とエルヴィン殿下に向けて挨拶した。
「お初にお目にかかります、聖女様、エルヴィン殿下。私は、ここの院長を務めておりますカテリーナと申します。本日は、瘴気の対応に来て頂き感謝致します」
そしてカテリーナさんは、私とエルヴィン殿下の右に座るコリンナさんの方に視線を向けて言った。
「コリンナ、久しぶりね。妃教育は順調?」
コリンナさんは、フフンと胸を張って答える。
「もちろん! これでも、家庭教師には飲み込みが早いと言われているのよ!」
「……あなたが聖女になって、しかも第一王子であるディルク殿下と恋仲になったと聞いた時は驚いたけど、元気そうで良かったわ」
そう言うと、カテリーナさんは優しい笑顔でコリンナさんを見つめた。……コリンナさんは、たっぷりの愛情を受けて育ったんだなあ……。
エルヴィン殿下が口を挟む。
「話をしている所申し訳ないが、瘴気の件について詳しく話を聞かせてもらえないだろうか」
「ああ、そうですわね。申し訳ございません」
カテリーナさんは、そう言って詳しい話を聞かせてくれた。
話によると、最初に異変が起きたのは三週間前。この孤児院にいる八歳の女の子が、酷い吐き気と軽い眩暈を訴えたそうだ。医師に診てもらって一旦は良くなったけれど、すぐにまた吐き気を催すようになったらしい。
その後も、孤児院の子供達が次々と吐き気や眩暈を催し、カテリーナさんは改めて医師に相談する。しかし医師にも原因が分からず、医師はもしやと思い知り合いの魔導士に相談。
そしてやっと、原因が瘴気であると突き止めたわけだ。
「瘴気の発生源は明らかになっているのですか? 魔物の目撃情報などは?」
エルヴィン殿下が訪ねると、カテリーナさんはゆるゆると首を横に振った。
「発生源は分かっていません。魔物の目撃情報もなく……。分からないだけに、子供達の事が心配です。聖女様、どうかよろしくお願い致します」
そう言って、カテリーナさんは深々と私に頭を下げた。私は、しっかりと頷いて答える。
「全力を尽くします」
不意に、コリンナさんが口を開いた。
「……ところで、院長。お願いがあるんですけど……」
「何? コリンナ」
カテリーナさんが首を傾げると、コリンナさんはおずおずといった様子で言う。
「実は、その……子供達に、私の方が聖女だって嘘を吐いちゃって……。それで、今日だけでも、私が聖女だっていう事にしてくれないかなって……」
カテリーナさんは、一瞬目を丸くした後、溜め息を吐いて言葉を漏らした。
「……あなたという子は……昔から調子に乗る所があったけど、そんな見栄を張っていたなんて……。まあいいわ。本物の聖女様が承知しているのなら、今日は黙っていてあげます。その代わり、後日ちゃんと子供達に真実を伝えるのよ?」
「ありがとうございます、院長!」
そう言って、コリンナさんは満面の笑みを浮かべた。
◆ ◆ ◆
それから、私達三人は瘴気の発生源を調べる為に孤児院の建物内を調べ回った。職員室、食堂、子供達の寝室を何部屋か見て回ったけど、魔物が潜んでいたり瘴気を発生する植物が紛れ込んでいる様子は無い。
「中々原因が分からないわねえ……」
廊下を歩きながら、コリンナさんが溜息を吐いて言う。私も、宙に視線を彷徨わせながら言葉を漏らした。
「今は瘴気が薄まっていて、靄が見えないから浄化出来ないんですよねえ……。まあ、見えたとしても、発生源が分からないんじゃあ根本的な解決にはならないですしねえ……」
エルヴィン殿下は、無表情で廊下を歩きながら口を開く。
「とにかく、出来る事を一つずつこなしていくしかないだろう。……ああ、あそこはまだ調査してないな」
エルヴィン殿下の視線の先には、図書室というプレートの掲げられた部屋があった。
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