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コリンナと子供達

孤児院に到着したマシロ達。

コリンナの様子がいつもと違い……。

 翌朝、私、エルヴィン殿下、コリンナさんの三人は、馬車で『リーリエ』へと向かった。馬車の中では、私の向かいに座ったコリンナさんが物憂げに外の景色を眺めている。私はコリンナさんと付き合いが長いわけじゃ無いけれど、何となくコリンナさんの雰囲気がいつもと違う気がした。


 コリンナさんが、私の視線に気付いて口を開く。


「何見てるのよ、マシロ。私の顔に何か付いてる?」


 私は、慌てて手を振って答えた。


「い、いえ。そんな事ないんですけど、コリンナさんの緑色のワンピース、素敵だなあって……」


 コリンナさんは、つまらなそうな表情で言う。


「ああ……ディルク様が公務で、今日私と一緒にいられないって言うから、せめて彼の瞳の色のワンピースを着ようと思ったのよ。あんたは良いわよね。エルヴィン様と一緒に居られて。そのワンピース、エルヴィン様の瞳の色に合わせたんでしょ?」

「え!?」


 私は、思わず自分の着ているワンピースに視線を落とした。確かに今日私が着ているのは赤いワンピース。エルヴィン殿下の瞳と同じ色だ。


 でも、こうなったのはただの偶然。私は、メイドのヘルマさんが選んでくれた服を着ただけなのだ。


 私が弁解しようとする前に、エルヴィン殿下が口を開いた。


「コリンナさん。色が重なったのは偶然でしょう。俺とマシロは、恋人同士じゃないんですから」


 恋人同士じゃない。その言葉に、胸がチクリと痛む。……そうだよね。エルヴィン殿下は、王族で、剣の腕も凄くて、イケメンで……私とじゃ釣り合わないよね。

 私の気持ちは、どうしようもなく沈んでいった。


       ◆ ◆ ◆


 それからしばらくして、馬車はとある建物の前で停まった。私は、馬車を降りると建物を見上げる。

 二階建てらしい石造りの建物。元々は白かったであろう壁は、色がくすんで灰色に見える。ここが、今回事案の発生した孤児院『リーリエ』か。


 私達三人が孤児院の門を潜ると、玄関前の庭にいた六~七歳くらいの子供が三人、パアッと顔を輝かせてこちらに駆け寄って来た。そして、コリンナさんに抱き着くと、一人の男の子が言った。


「コリンナお姉ちゃん! 来てくれたんだね!」


 男の子は、泥だらけの手でコリンナさんのワンピースを掴んでいる。ああ、これはコリンナさんが怒るな……と思っていたけれど。


「ヴィリー、ローマン、エーリカ、元気そうで良かったわ」


 コリンナさんは、ニコニコした顔で子供達の頭を撫でた。私がポカンとしていると、エルヴィン殿下がこっそりと私に耳打ちする。


「コリンナさんは大衆食堂を営む夫婦の娘として育てられたが、血は繋がっていない。コリンナさんは赤ん坊の頃に捨てられ、夫婦に引き取られるまで孤児院で育ったんだ。実の親が誰かは分かっていない」


 さらに聞くと、コリンナさんは夫婦に引き取られてからも孤児院に顔を出し、子供達の世話を手伝ったり、僅かなお金を寄付したりしていたらしい。


 私は、改めてコリンナさんを見つめる。コリンナさんは、慈しむような目で子供達を見ていた。

 ……ああ、私、コリンナさんの事を全然知らなかったんだなあ……。


「ねえ、コリンナお姉ちゃん。コリンナお姉ちゃんって、聖女になったんでしょ?」


 ヴィリーとかいう男の子の言葉に、コリンナさんが固まる。ヴィリー君は、切実な顔で言葉を続けた。


「僕、知ってるんだ! お姉ちゃんが病気の人を治したって。そういう人の事を『聖女』って言うんでしょ? 聖女は『しょうき』っていうものを浄化出来るんだって、先生に教わったんだ!……コリンナお姉ちゃん、しょうきを浄化してよ! 僕より年下の子が、具合が悪くて苦しんでるんだ!」


 ……言い辛い。本当に浄化したのは私だなんて、とても言い辛い。コリンナさんは、ギギギと首を回して、引き攣った笑顔で私を見る。


 仕方ない。私は、溜め息を吐くとしゃがみ込んで子供達に言った。


「こんにちは。私はマシロ。コリンナさんのお友達なの。コリンナさん、凄いよね。きっとコリンナさんが瘴気を浄化してくれるよ」


 子供達は、満面の笑みを浮かべて「うん!」と声を合わせて頷いた。

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