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王族の姿

ヴォルク村に到着したマシロ達。

早速トラブルが……!?

 村に着いて馬車を降りると、私は辺りを見渡した。本当に、炭鉱と荒野しかない所だな……まばらに民家も見えるけど。


 赤い土が広がる寂しい風景に私が感傷的になっていると、不意に後ろから声が聞こえた。


「んんー? お貴族様がこんな所に何の用だー?」


 振り返ると、ガラの悪そうな男が数人こちらに近付いて来る。程度の差こそあれ、男達は皆ボロボロのシャツに汚れたズボンを身に着けている。炭鉱で働く労働者だろうか。


「俺達は、ここに広がっている瘴気を浄化しに来たんだ。……それと、この近くにある墓地で墓に花を供えたい。案内してもらえないだろうか」


 墓地? そんな話は初耳だ。私がエルヴィン殿下の言葉に首を傾げていると、ガラの悪そうな男達のリーダーはハハっと笑って答えた。


「いいぜ。墓地に案内してやる。その代わり、案内料を千ザルツ寄越しな」

「なっ……!!」


 ベンヤミンさんが、眉を吊り上げて前に出ようとする。それを、エルヴィン殿下は片手で制した。そして、リーダーに向かって冷静に申し出る。


「済まないが、我々が持っている金は、国民の税金から頂いたものだ。自己判断で千ザルツもの金額を出す訳にはいかない。せめて、百ザルツにしてもらえないだろうか」

「ふん、それじゃあ、交渉は決裂だな。案内はしない」

「……そうか、まあいい。本当は墓地の場所を覚えているからな。仕事を与えてやろうと思ったが、余計な気遣いだったようだ」


 そして、エルヴィン殿下はクルリと振り返り、男達から離れようとする。


「ちょっと待ちな!」


 リーダーは、ドスの聞いた声で叫ぶと、懐から小型のナイフを取り出した。彼の手下達も同様に刃物を取り出す。


「金目の物を、置いて行ってもらおうか、お貴族様よお」


 リーダーの脅しに、エルヴィン殿下は屈しない。


「そういう事はやめた方がいい。お前達の首を絞めるだけだ。お前達は、もっと世間というものを知った方が良い」

「なっ……ナメやがって!!」


 ガラの悪い男達が、一斉にこちらに斬りかかって来る。ど、どうしよう。私がアワアワしていると、エルヴィン殿下は落ち着いた声で言った。


「大丈夫だ、マシロ。お前には指一本触れさせない」



 そしてその言葉通り、男達が斬りかかって十分も経たない内に、男達は全員ロープで縛り上げられていた。

 ベンヤミンさんが、男達に向かって言う。


「俺達に襲い掛かったのが運のツキだな。エルヴィン殿下や俺がたかだか数人の悪党に負けるわけ無いだろう」


 リーダーが、ギリっと唇を噛み締めて呟く。


「クソっ……! 貴族だとは思ったが、第二王子だとは……!!」


 エルヴィン殿下は、縛られた男達をジッと見た後、ベンヤミンさんに命令した。


「ベンヤミン、この男達、すぐに近くの治療院に連れて行ってくれ。みんな顔色が悪い。微量の瘴気を吸ったのかもしれない」

 私は、ハッとして辺りを見渡す。紫の靄は見当たらないけれど、炭坑に瘴気の溜まっている場所があるのかもしれない。

 リーダーは、慌てて言う。


「待て!……いや、お待ち下さい! 俺達には、治療費を出す余裕なんて……!!」


 エルヴィン殿下は、無表情のままリーダーを見つめて言った。


「治療費など、こちらが出す。お前達は、この国の貴重な労働力だ。死なせるものか。体調が良くなったら、死ぬ気で働け」


 リーダーは、一瞬目を見開いた後、涙ぐんで礼を言った。


「……ありがとうございます、ありがとうございます……!!」


 私は、エルヴィン殿下の凛々しくも優しい横顔にしばし見とれてしまった。これが、民を導く王族というものなんだ……。

次回、エルヴィンがヴォルク村を訪れた事情が明らかに!

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