エルヴィンの想い
エルヴィン視点のエピソードです!
時は少し遡り、エルヴィンがマシロに想いを伝える約一時間前。マシロ、エルヴィン、ディルク、コリンナの四人は、食堂で朝食を取っていた。
コリンナが、エルヴィンの方をチラチラと見ながら言う。
「そう言えば、今日はもうマシロが帰る日ねー。寂しくなるわねー。エルヴィン殿下、何かマシロに言う事は無いんですか?」
エルヴィンは、戸惑いながらマシロの方を見て言った。
「あ、ああ……寂しくなるな。マシロ、元の世界に帰っても元気でな」
マシロは、心なしか寂しそうに見える笑顔で答える。
「はい、ありがとうございます、エルヴィン殿下」
……それきり、会話が続かなくなってしまった。コリンナが、何故かエルヴィンを睨む。
そして、大した会話も無く朝食が終わってしまった。一旦自室に戻ってからマシロを見送りに行こうと思っていたエルヴィンだが、食堂を出る前にコリンナとディルクに呼び止められる。
「エルヴィン殿下、ちょおーっとツラを貸して頂けません事?」
コリンナが、怖いオーラを発しながら笑顔で言う。エルヴィンは、コリンナとディルクに引きずられるようにして食堂を後にした。
エルヴィンが連れ込まれたのは、ディルクの執務室。部屋に三人だけになると、コリンナは腕組みをしながら言う。
「エルヴィン殿下、あなた、このままマシロを元の世界に帰すおつもりですか?」
エルヴィンは、目を伏せがちにして答えた。
「……帰すしか無いだろう。マシロは、元の世界に帰った方が幸せなんだから」
「……エルヴィン殿下は、マシロにここにいてほしいとは思わないんですか?」
エルヴィンは、ギュッと拳を握った。いてほしいに決まってる。マシロの笑顔がいつも自分に向けられていたらと思う。……でも、無理矢理マシロをこの国に縛り付けておく気は無い。マシロには、幸せになってほしいから。
そんなエルヴィンを見て、コリンナは溜息を吐いた。
「エルヴィン殿下。あなた、他人の事を考え過ぎです。もっと、自分に素直になって下さい。マシロなら、あなたの事を好きでも好きでなくても、真っ直ぐあなたと向き合ってくれるはずです。……それに、あなたはこの先、マシロの事を思い出す度後悔するのですか? 引き留めておけば良かったと。マシロとの思い出を、そんな風にして良いのですか?」
エルヴィンは、ハッとした。大好きなマシロとの思い出を、後悔で塗り潰してしまって良いのか? このまま思いを伝えないまま一生を過ごすのか?
「……広間まで、行ってくる」
エルヴィンはそう言うと、バタバタと執務室を出て行った。
そんなエルヴィンを、コリンナとディルクは優しい瞳で見送っていた。
エルヴィンとマシロが結ばれるまで、あと約十分。
これにて『聖女は黒歴史をデリートしたい』は完結しました!
今までお付き合い頂いた皆様、ありがとうございます!!




