ドラゴン襲来2
エルヴィン達は無事ドラゴンを退治する事は出来るのか!?
「だから、コリンナ……僕が君を助けるのは当然なんだよ。僕は、君を愛しているんだから……」
ディルク殿下の言葉に、コリンナさんが涙ぐんで応える。
「わ、私だって、ディルク様の事を愛してます……! 最初はあなたを利用しようとしただけでした。でも、あなたは賢くて思いやりがあって……いつの間にか、本気でディルク様を愛していました。だからディルク様、死なないで下さい!」
そして、コリンナさんはディルク殿下の腹部に手を当て、悲痛な声で叫んだ。
「お願い、ディルク様に神のご加護を!!」
すると、コリンナさんの手に光が宿り、ディルク殿下の腹部の色は正常な皮膚と同じようになっていった。
ディルク殿下は、笑みを浮かべながら言う。
「ありがとう、コリンナ。……少し楽になったみたいだ」
ドラゴンと対峙していたエルヴィン殿下は、ディルク殿下達の方を振り向くと叫んだ。
「兄上は少し休んでいて下さい! 俺がドラゴンを何とかします!」
「分かった。でも、このままだと炎が広がり僕達が逃げられなくなる。氷魔法だけ使わせてくれ」
ディルク殿下が何やら詠唱をすると、宙に魔法陣が現れる。そしてその魔法陣から氷の結晶が次々と降って来たかと思うと、瞬く間に炎を消していった。
「ありがとうございます、兄上!」
そして、エルヴィン殿下は腰から抜いた剣を構えると、ドラゴンに向かって大きく剣を振りかぶった。
「炎よ、災いとなる者を焼き尽くせ!」
エルヴィン殿下の剣から大きな炎が噴き出し、ドラゴンの方へと向かって行く。炎に包まれたドラゴンは呻き声を上げて暴れ、大きな尻尾をブンブンと振る。
その拍子に大きな風が巻き起こり、炎を消してしまった。
「……クソッ、氷でも炎でも駄目か。ドラゴンだけを焼き尽くせるように力をコントロールしたつもりなんだが」
エルヴィン殿下はそう言って唇を噛む。私は考えた。炎が駄目というわけでは無い。あの風を巻き起こさせないようにすれば、何とかなるんじゃないだろうか。でも、どうやって……。
そんな私の耳に、エルヴィン殿下の声が届く。
「マシロ、危ない!」
ハッとして私が天井を見上げると、炎がこちらに向かってくるのが見えた。ドラゴンが口から吐いた炎だ。
エルヴィン殿下が私の方に駆け寄るけれどこの炎から逃れられない!
そう思った瞬間、聞き慣れた声が聞こえる。
「水の壁!」
すると、私とエルヴィン殿下の前に水で出来た壁のようなものが現れ、炎を防いでくれた。
「この声、まさか……」
エルヴィン殿下の声につられるようにして、私は広間のドア付近の方に視線を向ける。そこにいたのは、白い簡素な囚人服を着たツェーザルさんだった。
「ツェーザルさん!」
私が叫ぶと、ツェーザルさんは笑みを浮かべて私達に言った。
「遅くなり申し訳ございません。私ツェーザル、微力ながらドラゴン討伐に協力させて頂きます」
よく見ると、ツェーザルさんの右手首には銀色のブレスレットが嵌められていて、側にはアルヌルフさんもいる。アルヌルフさんは、ブレスレットに視線を向けながら言う。
「申し訳ございません、エルヴィン殿下。ドラゴン襲来の知らせを聞き、どうしてもツェーザルの水魔法が必要になると思い、連れて参りました。もちろん、国王陛下の許可は得ています」
どうやらブレスレットには、囚人が逃げようとしたら拘束する魔法が施されているらしい。そこまでして囚人であるツェーザルさんを連れて来るという事は、それ程ドラゴンは脅威なのだろう。
エルヴィン殿下は、真顔でツェーザルさんに声を掛ける。
「お前がマシロに危害を加えようとした事は許していない。しかし、お前にも事情がある事は分かっている。それに、今はドラゴン討伐を第一に考えるべきだ。ツェーザル、手伝ってくれ」
「承知致しました、エルヴィン殿下」
すると、ツェーザルさん達の背後から別の声がする。
「おっと、俺もいますよ、エルヴィン殿下」
見ると、背後にはベンヤミンさんとディートマーさんの姿もある。ディートマーさんは、ブツブツと呟いた。
「全く……だから、非公開の会議とは言え広間に護衛騎士を入れるべきだと言ったんだ。それなのに、アダーシェク帝国が拒否するから……」
エルヴィン殿下は、苦笑しながら言う。
「まあ、文句を言うのは後にしよう。それより、今はドラゴンだ」
すると、アルヌルフさんがドラゴンの方に視線を向けて真剣な顔で言った。
「では、まず我々がドラゴンの動きを封じましょう」
アルヌルフさんは、右手を空に掲げて叫ぶ。
「雷よ、大地を揺らせ!」
宙に現れた魔法陣から雷が落ちる。その雷はドラゴンの羽を直撃し、ドラゴンの高度が少し下がった。
「次は俺が!」
ベンヤミンさんが右手を翳して風の槍を放つ。その槍はドラゴンの尻尾の近くを貫き、ドラゴンが悲鳴を上げる。
「では私は前脚を!」
ツェーザルさんが詠唱を始めると、宙に魔法陣が現れる。そしてそこから渦のように巻き上がった水が、ドラゴンの前脚を拘束した。
水魔法と相性が悪かったのか、ドラゴンは自身の前脚に纏わり付く水の渦を払う事が出来ない。
「じゃあ俺は目を」
そう言ったディートマーさんが金属製の杖を振ると、床に魔法陣が現れ、そこから植物の蔦が伸びていく。その蔦は真っ直ぐドラゴンへと向かって行き、ドラゴンの目を隠すようにドラゴンの顔に巻き付いた。
以前から思ってたけど、この人達って、護衛騎士と言うより魔術師みたいだな……。
「殿下、今の内に!!」
アルヌルフさんの言葉を合図に、またエルヴィン殿下が剣を構える。
「炎よ、災いとなる者を焼き尽くせ!!」
再び炎がドラゴンを襲う。ドラゴンはまた暴れようとするけれど、護衛騎士達の攻撃により碌に動けない。
「息の根を止めてやる!」
エルヴィン殿下はそう叫ぶと、剣を構えたままジャンプする。そしてドラゴンに接近すると、その首をザンと切り落とした。
殿下が地面に着地すると同時にゴロンと床に転がるドラゴンの首。エルヴィン殿下は、その首を見ると真顔で呟いた。
「……済まない。でも、俺達に危害を加えようとする者はこうするしか無かったんだ」
よくよく考えると、このドラゴンは瘴気を使って無理矢理活性化させられた可能性があるわけだ。もしかしたら、このドラゴンも被害者なのかもしれない。
ツェーザルさんの水魔法のお陰か、火が消えた後も漂っていた煙が消え、辺りが良く見えるようになっている。エルヴィン殿下が、こちらを振り向いて言った。
「マシロ、コリンナさん。ドラゴンに瘴気を流している媒体のような物は無いか?」
私とコリンナさんは、キョロキョロと辺りを見渡す。
今の所何も見当たらないな。そう思って広間の隅に視線を移した私は、目を見開いた。広間の隅に何か小さな物が落ちていて、そこから微かに瘴気が立ち上っているのだ。
「皆さん、あちらから瘴気が立ち上っています!」
そう言って私は広間の隅に近づいて行く。私には聖女の力があるみたいだし、大量の瘴気でなければ近付いても問題ないだろう。
そして、広間の隅に落ちている物を拾った私は、思わず声を漏らした。
「これは……!」
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