経済会議2
今回は、ヴラスタ様の事情が明らかに……。
私がコリンナさんの方に近付くと、コリンナさんは笑顔で小さく手を振って私を呼んだ。
「こっちにいらっしゃい、マシロ」
私が側に行くと、ディルク殿下やベンヤミンさんも笑顔で私を話の輪に入れてくれる。コリンナさんは、ふと真顔になると私の耳元で囁いた。
「あなた、さっきフベルト陛下と話してたでしょう。怖くなかった?」
私は、苦笑して答える。
「いえ、少なくとも、表面上は紳士的でお優しい方に見えましたよ」
すると、コリンナさんは腕組みをして唸る。
「そう……。私はさっきフベルト陛下に挨拶したんだけど、なーんか嫌な雰囲気を感じたのよねー」
「……そう言えば、ヴラスタ様、ほんの少しだけフベルト陛下に怯えているように見えました」
私が目を伏せがちにして言うと、思い出したようにベンヤミンさんが口を開いた。
「そう言えば、ヴラスタ様、フベルト陛下にも皇妃殿下にも似てないから、不義の子ではないかと疑われて大層肩身の狭い思いをしたそうですよ」
「え!?」
……そう言えば、フベルト陛下は黒髪に赤い瞳なのに、ヴラスタ様は金色の髪にエメラルドグリーンの瞳だ。……そうか。ヴラスタ様、苦労してきたんだな……。
私がしんみりとしていると、後ろから声が聞こえた。
「ホッホッホッ、若い者が集まって何を暗い顔をしているのですかな?」
振り向くと、そこには穏やかな笑顔を浮かべるヘルムートさんがいた。今日はいつもの黒いローブではなく、燕尾服姿だ。ディルク殿下が、眉根を寄せてヘルムートさんに言う。
「丁度今、母上の境遇について話していた所ですからね……。それに、またアダーシェク帝国の者がコリンナに危害を加えるかもしれないと思うと、気が気じゃなくて……」
ヘルムートさんは、頷いて答える。
「そうですな。……申し訳ございません、ディルク殿下。ツェーザル様に掛けられた呪いが思いの外強力で、まだ呪いを解く事が出来ておりません。また、呪いを掛けた者も判明しておりません。魔術師総出で呪いを分析しているのですが……」
「……いや、ヘルムート達が頑張ってくれているのは分かっている。ありがとう」
ヘルムートさんは、顔を上げるとまた優しい顔になって言った。
「それはそれとして、今日は皆様この宴を楽しまれてはいかがですかな? せっかく気の置けない仲間と出会えたのです。少しの間だけでも、ただ一人の人間として、仲間と笑い合うのも良いと思いますぞ」
ヘルムートさんがその場を後にすると、その背中を見ながらベンヤミンさんが呟く。
「……それにしても、おかしいなあ……」
「何がおかしいんです? ベンヤミンさん」
私が首を傾げると、ベンヤミンさんは考え込むような表情で言った。
「俺、ツェーザルと仲が良かったから、結構あいつがいる独房に顔を出してたんですよ。でも、一向にあいつの呪いが解ける気配が無くて……。ヘルムートさんはこの国でも随一の腕を誇る魔術師なのに、少しも改善の気配が無いというのが気になって……」
私は、目を見開いて叫んだ。
「それって……!!」
ベンヤミンさんは、頷いた後小声で言った。
「もしかしたら、ヘルムートさんはわざと呪いを解いていないんじゃないかって……」
コリンナさんが、声を潜めて聞いた。
「ベンヤミンさん、あなた、ヘルムートさんがアダーシェク帝国の手の者だと思ってるの?」
ベンヤミンさんは、唸りながら答える。
「そういう訳じゃ無いですけど、不思議と言うか何と言うか……」
「ヘルムートさんがどういう心づもりかは知らないけれど、ツェーザルを呪った相手が強力な魔術の使い手だという事は間違いなさそうだ。……コリンナ、マシロ様。これまで以上に身辺に気を付けてほしい」
ディルク殿下の言葉に、私とコリンナさんは真剣な顔で頷いた。
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