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経済会議1

マシロ達にまた新たな仕事が……。

 私の無実が証明されてから既に一か月程経った。今この朝食の席には、私、エルヴィン殿下、ディルク殿下、そしてコリンナさんの四人がいる。


「コリンナ、もう体調は大丈夫なのかい?」

「ええ、もうすっかり良くなりましたわ」


 ディルク殿下の言葉に、コリンナさんがニッコリと笑って答える。そんなコリンナさんを見て、私は苦笑した。相変わらず、ディルク殿下の前でだけ態度が違う。


 昨日私がコリンナさんの部屋に行った時は、「病人食は飽きたわー。明日からやっと普通の食事が取れるのねー」と髪を弄りながら言っていたのに。


 ディルク殿下はニコニコとコリンナさんを見ていたけれど、ふと真顔になって話題を変えた。


「ところで、三人に話があるんだよね。来月、アダーシェク帝国やその他近隣の国の重鎮を招いて、経済会議をする事になったんだ」


 経済会議というのは初めて聞く単語だ。ディルク殿下の話によると、経済会議とは近隣諸国が集まって貿易のあり方やその他経済について話し合うものらしい。


「それで、コリンナやマシロ様にも参加してほしいんだ。瘴気による環境汚染は経済活動に大きな影響を与えるからね」

「アダーシェク帝国か……面倒な事にならないと良いが」


 エルヴィン殿下が呟く。もしかしたら私やコリンナさんの命が狙われるかもしれないから、殿下が懸念を抱くのも当然だ。

 私は、笑顔でエルヴィン殿下に言った。


「安心して下さい、エルヴィン殿下。私、最近ベンヤミンさんに護身術を習ってるんですよ! 私は聖女の力を持っていますし、死ぬわけにはいきませんからね!」


 エルヴィン殿下は、パンを口にしようとする手を止めて私を見据えた。


「……なんでベンヤミンなんだ?」

「え?……だって、エルヴィン殿下は公務でお忙しいでしょうし、アルヌルフさんも騎士団長だからお忙しいでしょう? ディートマーさんはあまり人付き合いが得意ではないようですし、ベンヤミンさんが一番頼みやすいかなって……」

「……そうか、うん、まあ、良いんだが……」


 エルヴィン殿下が、何だか不満そうな表情をする。コリンナさんが、溜め息を吐いて言った。


「マシロって、そういう所ズレてるのよね……」


       ◆ ◆ ◆


 そして、色々と準備に追われる内に経済会議の前日になった。

 その日の夕方、私がエルヴィン殿下にエスコートされて城の広間に入ると、そこには沢山の客がいた。明日の会議に参加する重鎮達が集まっているのだ。


 会議の参加者のほとんどが今日からこちらの城に泊まる事になり、今夜は晩餐会が催される。

 人数が多い為広間にいくつものテーブルが並べられ、立食形式で食事を楽しむ。晩餐会という名が付いているけれど、ほぼ夜会だ。


 会議の参加者だけあって、皆威厳があって緊張するな。そう思いながら私が辺りを見渡していると、二人の人物がこちらに近付いて来た。国王夫妻だ。


「今晩は、マシロ様。城の生活に不便はございませんか?」


 国王であるループレヒト様が穏やかな笑顔で私に話し掛ける。私は、頭を下げて挨拶した。


「ご機嫌麗しゅう、国王陛下。おかげさまで、快適に過ごしております」


 すると、王妃であるヴラスタ様がフフと笑って言った。


「以前にも申し上げましたが、そんなに畏まらなくてもいいのですよ、マシロ様。あなたはこの国の希望なんですから」

「ありがとうございます、王妃殿下。……あの、王妃殿下はジルケさんから幻覚剤を飲まされていたと聞いていますが、王妃殿下のお身体は大丈夫でしょうか?」


 私が心配そうに聞くと、ヴラスタ様は笑みを浮かべたまま頷く。その拍子に彼女の耳に付けられている紫色のイヤリングがチラリと揺れた。


「ええ、大丈夫よ。マシロ様はお優しいのですね」

「いえ、そんな……」


 私が慌てて手を振ると、後ろの方から声が聞こえた。


「随分楽しそうだな、ヴラスタ」


 私が振り向くと、そこには一人の男性がいた。チャイナ服と軍服を合わせたような黒い正装。襟元に施された金色の刺繡が美しい。

 黒い髪を肩の辺りまで伸ばし、前髪を上げている。年齢は六十代くらいだろうか。


 ヴラスタ様は、一瞬ビクリと身体を震わせたような気がしたけれど、すぐに綺麗な笑顔になって言った。


「……ご紹介致しますわ、マシロ様。こちらは、私の父であるフベルト・アダーシェク。アダーシェク帝国の皇帝です」


 やっぱりそうか。私は、胸に手を当てて頭を下げから自己紹介する。


「お初にお目にかかります、フベルト陛下。私、アドラー王国で瘴気の浄化をしております清宮真白と申します」


 フベルト陛下は、上品な笑みを湛えて挨拶を返す。


「ああ、お噂はかねがね。胸に手を当てるというアダーシェク帝国の礼儀もご存じとは、恐れ入りました。これからも是非、アドラー王国の聖女として活躍して頂きたいですね」


 ……信用出来ない人だ。アドラー王国の護衛騎士であるツェーザルさんが私をアダーシェク帝国に連れて行こうとした件は、フベルト陛下も知っているはず。それなのに、何も言ってこないなんて……。


「ありがとうございます。これからもアドラー王国の為に働く所存です」


 私が作り笑顔でそう言うと、エルヴィン殿下が口を挟んだ。


「フベルト陛下、お久しぶりです。アダーシェク帝国の軍備について、是非お伺いしたい事が……。ああ、マシロは軍備の話なんて聞いてもつまらないだろう。向こうにコリンナさん達がいるから、話して来るといい」


 エルヴィン殿下が手で指し示す方を見ると、少し離れた所でコリンナさん、ディルク殿下、ベンヤミンさんが楽しそうに談笑していた。


 多分エルヴィン殿下は、私があまりフベルト陛下と接触しなくても良いようにしてくれたのだろう。私は、笑顔で言った。


「それでは、お言葉に甘えて失礼致します。フベルト陛下、明日の会議でも宜しくお願い致します」


 フベルト陛下は、笑顔を崩さず「宜しくお願い致します」と返した。

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