王宮裁判2
エルヴィンの熱弁を聞き、傍聴席の貴族たちは……。
傍聴席がザワザワと騒がしくなる。
「おい、やっぱりコリンナ様を殺害しようとしたのはマシロ様では無いんじゃないか?」
「でも、メッセージカードが……」
「そんなの、偽造できるんじゃないか? それより、あのいつも冷静なエルヴィン殿下があんなに熱弁して……。マシロ様は、本当に信頼に足る人物なのかもしれない」
……もしかして、風向きが良い方に変わって来てる? 私がそう思った時、裁判長がカンカンと木槌を叩いた。
「静粛に!……只今、司法官から新たな証人尋問の要請がありました。その証人とは……王妃殿下です。王妃殿下、前へお願い致します」
私は、目を見開いた。司法官と言うのはあの検察官みたいな人の事だ。……という事は、王妃殿下は私に不利な証言をすると言う事? 王妃殿下とはあまり接点が無いのに、どうして……。
エルヴィン殿下は、戸惑いながら証言台から離れる。それと入れ替わるように、王妃であるヴラスタ様が証言台の前に立った。
ヴラスタ様は、眉尻を下げながら証言する。
「……私は、コリンナに妃教育を施していました。覚える事が膨大にある中、コリンナはよく頑張ってくれていたと思います。……でも、マシロ様はそんなコリンナに嫉妬していたみたいで……。コリンナは言っていました。『食事で同席する度にマシロに睨まれて辛い』と……」
私は愕然とした。どうしてヴラスタ様まで嘘を吐くの? 私、コリンナさんを睨んだ事なんて無い……。
また傍聴席がザワザワとする。
「マシロ様がコリンナ様を……?」
「でも、エルヴィン殿下はマシロ様を擁護していたぞ」
「しかし、王妃殿下がそんな嘘を吐くか……?」
まずい。王妃殿下と言う立場もあって、皆がヴラスタ様の話を信じ始めている。……どうしよう。私、このまま濡れ衣を着せられるの? もし有罪判決が出たら、私はどうなるの? もうエルヴィン殿下と会えなくなるの?
私が涙ぐんだその時。広間のドアがバンと大きな音を立てて開かれた。皆が一斉にドアの方を振り向く。
広間の入り口には――アルヌルフさんに肩を支えられた、コリンナさんの姿があった。コリンナさんは、頼りない足取りながらも、コツコツとハイヒールの音を立てて前へ進み出る。
そして、裁判官のすぐ前に立つと、凛とした声で言った。
「裁判長。突然ですが、私、コリンナが証言する事をお許し願えませんでしょうか」
「こ、コリンナさん、大丈夫なんですか!? 歩き回って」
私は思わず立ち上がって叫ぶ。裁判長に、「マシロ様は席に着くように」と注意されてしまった。
コリンナさんは、フッと笑うといつも通りの口調で言った。
「マシロ、私を誰だと思ってるの? 聖女補佐……いずれは本物の聖女になるコリンナ・アドラーよ! あれしきの毒、すぐに回復するに決まってるじゃない!」
「……宮廷医師が苦労して回復薬を調達していたけどな」
アルヌルフさんが呆れた顔でボソリと呟く。あと、コリンナさんはまだ正式にはディルク殿下と結婚していないから、アドラー性を名乗るのは早い。
私は、クスリと笑うと、コリンナさんに向けて言った。
「コリンナさん、相変わらずですね。……本当に、無事で良かったです」
コリンナさんは、改めて裁判長の方に向き直ると、真剣な声で懇願した。
「お願い致します、裁判長! 事件の当事者である私が証言する事をお許し下さい!」
裁判長は、少し考えた後、頷いて答えた。
「良いでしょう。コリンナ殿の証言を許可します」
ヴラスタ様が、納得できない顔をしながらも証言台の前から退く。コリンナさんは、証言台の前に立つと、よく通る声で言葉を紡ぎ始めた。
「マシロが私に嫉妬していたなんてあり得ません。逆に、私がマシロに嫉妬していたくらいです。……私は聖女の力をコントロール出来なくなっているのに、マシロは完全な浄化を成し遂げるから……。だから私は、マシロに冷たい態度を取ったりもしました。なのにマシロは、私に言い返す事もせず、それどころか孤児院では私を励ましてくれて……」
子供達にとってコリンナさんは正真正銘の聖女。その言葉は、私が思っていた以上にコリンナさんの救いになっていたらしい、
コリンナさんは、傍聴席を見渡しながら必死に訴える。
「もう一度言います。マシロが私を毒殺しようとしたなんてあり得ません! 私は直接マシロから毒の入ったドリンクを受け取ったわけではありませんし……。皆様、どうか、マシロの事を信じて下さい! マシロは、マシロは……私の大切な親友なんです!!」
コリンナ登場!
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