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王宮裁判1

とうとう王宮裁判が始まる!

 私が再び塔に連行されて二日後の朝。私は、王城の広間に立っていた。広間の中央に立つ私の前には木製の証言台。私の正面には、裁判官らしき貴族が三人。

 そして、私の周りをぐるりと囲む傍聴席には、沢山の貴族が腰掛けていた。


 後ろの方にはより広い席が設けられ、そこには国王夫妻、ディルク殿下、エルヴィン殿下が腰掛けている。

 ディルク殿下は、いつもの柔和な笑顔を消し、鋭い視線で真っ直ぐと前を見ていた。……大切な恋人の命を奪われそうになったのだ。彼の怒りは相当なものだろう。


 エルヴィン殿下は私を信じてくれると言ったけれど、ディルク殿下はどうだろう。私を信じてくれるだろうか。


 私がそんな事を考えていると、裁判長らしい中年の貴族が木槌を叩いて宣言する。


「それでは、只今より聖女補佐コリンナの殺害未遂事件について審理を行う」



 とうとう裁判が始まったんだ。私は、ゴクリと息を呑む。裁判が始まると、早速年老いた裁判長が私の罪状を読み上げた。


 コリンナさんが聖女として再び力を発揮した事。それに危機感を抱いた私がコリンナさんを殺害しようとした事がペラペラと読み上げられる。


 罪状が読み上げられた後、裁判長が私に尋ねる。


「聖女マシロ。今読み上げられた罪を認めますか?」


 私は、毅然とした態度で答えた。


「いいえ。私は、コリンナさんを殺害しようとなどしていません」


 辺りがザワザワとなる。この場にいる人達の中で、私の無実を信じてくれている人は果たして何人いるんだろう?


 罪状認否が終わると、私は広間のドアから見て右側にある被告人席に座らされた。



 次に、私の有罪を主張する立場の貴族が証言台の側に立つ。日本で言う検察官のような人だろうか。

 呼び方が分からないから敢えて検察官と呼ぶけれど、検察官は一人の証人を証言台へと呼び出した。

 その証人とは、コリンナさんが倒れた後彼女の部屋を調べた騎士だ。


 検察官が、騎士に尋ねる。


「あなたは、コリンナさんの部屋で何を見つけましたか?」


 騎士は、私の方をチラリと見て、答えにくそうにしながら言った。


「……『このドリンクには体力を回復させる作用があります。これを飲んで妃教育を頑張って下さい マシロ』というメッセージカードを見つけました」


 その答えを聞くと、検察官は傍聴席をグルリと見渡して言った。


「聞きましたか、皆様! これぞ、聖女マシロが犯人である証! コリンナさんは浄化や王妃教育に苦戦していたとはいえ、誰かに恨みを買うような人物ではない。そしてまた、誰かが聖女マシロを恨んでいるという事も考えにくい。よって、誰かが聖女マシロを陥れる為に毒物を使用したという可能性も消えるのです! つまり、今回の事件を起こす動機があるのは、コリンナさんに嫉妬した聖女マシロしかあり得ないのです!」


 随分な決めつけだけれど、否定出来るような材料も無い。私は、ギュッと拳を握り締めた。



 次に証言台に呼ばれたのは、黒髪を三つ編みにしたメイド服姿の女性。確かこの人は、コリンナさんの専属メイドのジルケさん。


 ジルケさんは、証言台に立つと、緊張した様子で話し出した。


「わ、私、コリンナ様が倒れた日の朝、見てしまったんです。コリンナ様の部屋の前に、そ、その、聖女マシロ様が……ドリンクらしきものが入った瓶とメッセージカードを置くのを」


 嘘だ。私は、そんな物置いていない。思わず声を出しそうになったけれど、私はぐっと堪えた。


 今私が騒ぎ立てても、私が無実と言う証拠にはならない。何か、何か私が無実だと証明出来る物は無いだろうか。朝早くの事だから、私にはアリバイが無いし……。


 焦る私を他所に裁判は進んでいき、検察官の証人尋問は終わった。




 そして、私を弁護する反対尋問が始まった。私の弁護人はなんとヘルムートさん。私はこの世界に来たばかりで心細いだろうから、顔見知りである自分が弁護人になると申し出てくれたのだ。


「それでは、最初の証人、ここへ」


 ヘルムートさんに促され証言台の前に立ったのは、私も知っている人物。コリンナさんが育った孤児院の院長であるカテリーナさんだ。相変わらず綺麗に白髪を纏めたカテリーナさんは、真っ直ぐと前を見て証言した。


「マシロ様がコリンナに嫉妬しているなど考えられません。私はコリンナから聞いています。自分は本当の聖女では無いと落ち込むコリンナを、マシロ様が励ましてくれたと。『子供達にとってはコリンナさんが本物の聖女なんです』と言ってくれたと」


 ……コリンナさん、あの時の事をカテリーナさんに話してたんだ。私の言葉がコリンナさんの励みになっていたのなら良かった。

 私の心は、ほんの少しだけ軽くなった。


 それでも、私の嫌疑は晴れたわけじゃない。ヘルムートさんは、次の証人を呼んだ。


「次にお呼びする証人は、第二王子であるエルヴィン殿下です。……殿下、お願い致します」


 その名を聞いて、私はハッと顔を上げた。エルヴィン殿下は、紺色の軍服を着て、凛とした表情で証言台の前に立つ。


 ……エルヴィン殿下は、忙しいはずなのに私が脱走するのに付き合ってくれたり、こうして証言台の前にも立ってくれる。本当に、優しい人だなあ……。


 ヘルムートさんがエルヴィン殿下に私の人柄について質問すると、殿下ははっきりと答える。


「マシロは、とても思いやりのある女性です。近くに魔物がいて危険な状態なのに、俺の実の母親の墓を守ろうとしてくれました。今回の件だって、マシロが脱走したのは自分が助かる為ではありません。仲の良いメイドの家族を助ける為です。……マシロは、他人の事を第一に考えられる女性です。彼女がコリンナさんを毒殺しようとするなんてあり得ません!」


 いつの間にか、私の目には涙が浮かんでいた。エルヴィン殿下が私を信じてくれている事が、私の為に懸命に証言してくれている事が嬉しかった。

王宮裁判の行方は……。

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