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農村

農村に向かったマシロ達は……。

「ディルク様、その白い軍服、とってもお似合いですわ」

「コリンナも、白いワンピースが良く似合っているよ」


 私の目の前で、コリンナさんとディルク王子……いや、ディルク殿下がイチャイチャしている。なんで私はこの二人と同じ馬車に乗っているんだろう。私、とってもお邪魔虫な気がするんだけど。

 ほら、こちらの馬車に乗っている護衛の騎士三人も居心地が悪そうだ。


 私がアドラー王国に召喚された翌朝。私達は、馬車に乗って農村へと向かっていた。もう一台の馬車には、第二王子であるエルヴィン殿下、ヘルムートさん、護衛騎士の三人だけが乗っているらしい。

 人数のバランスがおかしいだろ。王族専用なだけあって、馬車の中は広いし座り心地も良いけれど。



 私が心の中で不満を漏らしていると、馬車が停まった。どうやら、農村に着いたらしい。

 私達が農場の隅で馬車を降りると、丁度もう一台の馬車から三人の男性が降りてきた。


 一人は濃い緑色の軍服を着た若い護衛騎士。もう一人は、黒いローブを纏ったヘルムートさん。そしてもう一人は、紺色の軍服を着た青年だった。


 その青年はえらいイケメンで、年齢は二十歳くらい。肩まで伸ばした黒い髪を後ろで縛って、赤い瞳で周囲を見渡している。まだ話した事は無いけど、彼が第二王子のエルヴィンだろう。


 それにしても、第一王子と第二王子は兄弟なのに似てないなあ。ディルク殿下はエルヴィン殿下と違い、少しウェーブがかったブロンドにエメラルドグリーンの瞳をしている。それに加え、二人は雰囲気も全然違う。


 ディルク殿下はいつもニコニコしていて柔らかい雰囲気なのに、エルヴィン殿下は人を寄せ付けないような冷たい雰囲気がある。



 まあ、イケメンの観察はこのくらいにして、瘴気とやらがどうなっているか確認しよう。そう思って辺りを見回した私は、愕然とした。


 広大な畑には沢山の小麦が植えられているけれど、その七割ほどがしおれたり枯れたりしている。今は秋になったばかりで、まだ小麦が育ち切っていない。収穫する時期に、どれだけの小麦が生き残っているだろうか。


 そして、空気中には、薄紫色の靄のようなものが広がっている。もしかして……これが瘴気?


 私がその場に佇んでいると、「大丈夫か!?」という声が聞こえる。振り向くと、そこには蹲る護衛騎士と、その騎士の背中を摩るもう一人の騎士がいた。この二人でBL妄想が捗りそう……って言ってる場合じゃない!


「ど、どうしたんですか!?」


 私が声を掛けると、背中を摩っていた騎士が私の方を見て答える。


「こいつが、急に吐いて蹲ってしまったんです! どうして急に……」

「……やっぱり、この靄、瘴気だったんだ……」


 私が呟くと、騎士はキョトンとした顔で聞いた。


「靄? そんなもの見えませんが……」

「え?」


 どういう事? 薄紫の瘴気が、辺り一帯を覆い尽くしているじゃない。私が疑問に思っていると、不意に背後から声が聞こえた。


「やはり、お前はただの女じゃなさそうだな」


 私が驚いて振り向くと、そこには腕組みをしたエルヴィン殿下がいた。私は、慌てて頭を下げる。


「え、えーと、お初にお目にかかります、エルヴィン殿下。清宮真白と申します」


 すると、エルヴィン殿下は無表情のまま手で私を制した。


「畏まらなくていい。それより、お前には靄が見えているんだな?」

「は、はい……」


 私がおずおずと答えると、エルヴィン殿下は射貫くような目で私を見つめた。


「その靄とやらは、俺達には見えていない。見えているのは、恐らくお前とヘルムートだけだ」

「ええっ!!」


 私は、コリンナさん達の方を振り向く。コリンナさんは、こちらの様子を気にする事なくディルク殿下とニコニコ話していた。ヘルムートさんは、険しい顔をして辺りを見渡しているのに。

 コリンナさんは病を治す力を持つ聖女のはずなのに、この靄が見えないの……?


 エルヴィン殿下は、困惑する私をジッと見て言った。


「……もしかしたら、やはり本物の聖女はお前なのかもしれないな」


 そんな……私は浄化をコリンナさんに押し付けて日本に帰りたいのに……。


 私が困惑していると、また誰かの声が聞こえた。


「お姉ちゃん、聖女なの?」


 振り向くと、そこにいたのは十歳くらいの少女。褐色の肌に白い簡素なワンピース。黒く長い髪を後ろで縛っている。

 その女の子は、黄色い瞳を私に向けて、期待と不安の入り混じった表情をしている。


 私は、微笑んでその子に答えた。


「ううん、私は聖女じゃないの。本当の聖女は、あのブロンドの髪のお姉さんよ」


 私がコリンナさんの方を指さすと、女の子は白けた目で言う。


「本当―? あの人、お姉ちゃんの言う『靄』が見えてないみたいだけど……」

「ハ、ハハ……」


 私は、曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。女の子は、私の方を見て真剣な瞳で懇願する。


「もしお姉ちゃんが聖女なら、お願い! 瘴気を浄化して! このままじゃ、私のお母さんも弟も食べて行けなくなっちゃう!……お母さんは、お父さんが死んでから頑張って小麦を育てて来たの! 私と弟を食べさせる為に頑張って来たの! だから……お願い!!」


 その切実な願いに、私は何も言えなくなった。チラリと遠くを見ると、黒髪をショートカットにした女性が懸命に肥料を巻いている。よく似ているから、彼女が女の子の母親だろう。


 何とかしてあげたい。黒歴史とかは一旦置いておいて、私に出来るのなら私が浄化してあげたい。……でも無理だ。私には、浄化の力なんて無い。


 私が目を伏せた次の瞬間、遠くから叫び声が聞こえた。


「みんなあー、魔物が出たぞー!!」


 振り向くと、こちらに駆けて来る村人らしい中年男性が見える。あの人が叫んでいたのか。そして、男性のさらに遠くを見た私は目を見開いた。


 黒くて大きな牛のような生き物がこちらに近付いて来る。ただの牛じゃない。普通の牛の何倍もの大きさがある。……あれが、魔物なんだ。

とうとう魔物が現れた!

次回も読んで頂けると嬉しいです!

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