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インドア聖女は早くおうちに帰りたい  作者: 和原茉白


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第75話 ポーションと魔術と魔法


※前回に引き続き、怪我・流血の描写があります。


 解毒が完了したタイミングで、イェルセルがポーションの瓶を台車から下ろし、手の届くところへ並べ始めた。さっき下で見たのはアンプル型だったが、こっちは瓶型だ。色とりどりの光がきらきらとした瓶が、こんな時だが美しい。


 それを見ながら、そういえば忘れてた、と、りのは今さらではあるがポケットからハンカチを出して口と鼻を覆う。

 イェルセルも、ローズピンクの目の女性、おそらくロゼリアの姉からハンカチを受け取り、しっかりと覆った。


「さて嬢ちゃん、ポーションの準備はできたぞ。次はどうする?」

「ありがと。次は血を増やして、それからお腹を治すけど……腹圧があるんだっけ。内臓ちゃんと戻るかな? イェルさん、こういうとき治療はどうやってた?」

「治癒ポーションじゃな。血が増えて腹の中身が元に戻って、皮膚が生える」

「ふむ。後に痛みは出る?」

「それほどは出らん。ああ、ただ治癒ポーションを使うと体力が弱まるでな、耐えきれずに死ぬものは結構いる」

「わお。ちなみに、治癒ポーションと治癒魔術だと、どっちが体力弱くなる?」

「治癒ポーションのほうじゃな。これでも最高級クラスのポーションじゃが、重傷者には使わんほうが良いと言われとる。それにほれ、この造血ポーションはもっと体力が必要になるぞ」

「え、造血ポーションってことは、輸血、えっと、血を体に入れることはしないの? 保存してある血液とかはない?」

「ないわ! 恐ろしいことを言うなぁ嬢ちゃん……」

「じゃあ体力を回復させるポーションはある?」

「あるぞ。患者によって回復量は違うがの」


 イェルセルが見せてくれたのは、青色の体力ポーション。そういえばコルティアドのきらきら光る青に似た色だなと思った。

 他にも、毒々しい赤色の造血ポーションや緑色の治癒ポーションの瓶が並んでいる。赤が一番多くて、次は緑と青が同じくらいの数だ。それぞれにわずかなきらめきがある。


(ポーションでそれぞれがどのくらい回復するのかわからんのか……たしかに、それって「鑑定」持ちじゃないとわからないことだもんね)


 りのは今の会話を注意深く思い返して考えた。


(この治癒ポーションって、身体機能を高めて治す方向のポーションなのでは? こう、もともと持ってる治癒力を爆発的に高める的な。だから体力つかっちゃって、弱っていくって感じ? 造血ポーションは治癒ポーションの特化版だと思えば、さらに体力を使うってのもわかる。それに、魔術より体力つかうなら、治癒ポーションが重傷者に向いてないのは当たり前だね)


治癒ポーションを選択肢から外して、りのはさらに考えた。


(ならまずは、体力ポーションと造血ポーション、治癒魔術、そして治癒魔法のデータをとろう。一番効率のいいのを選んで、できるだけ患者さんの体力を使わない方向でやろう!)


 大体の方針を固めて、りのはまずあらためて「鑑定」をかけた。詳細が出るようにイメージし、魔力は少し強めにこめる。ただし、性別とか出自とか、必要のない情報は削っておく。膨大な情報がボードに現れてくる。

 そこで患者に「リカバリー」をかけた。これはりのの作った魔法で、失われたものや足りなくなっている栄養素を補う栄養ドリンクをイメージしている。りのは主に疲れたときや徹夜をした時の体力回復魔法として愛用、というかむしろ濫用していた。


 出てきた鑑定結果をじっと観察した。

 



【ライリー・ティレル】

【第三騎士団団長、ティレル辺境伯次男】

【体力 11/4250】

【魔力 13/2831】


【状態:大量失血(重篤)腹部損傷(重篤)左大腿部損傷(重症)左前腕部損傷(重症)……】



 りのが見ていたのは主に体力だ。

【11】からじわじわと上がり、最終的には【61】で止まる。


(ひえっ、体力十一とかマジで死にかけてたよこの人! あぶな、あっぶな! こっわ! えっと、一回の「リカバリー」で回復するのが五十。スズメの涙……)


 次に、修得済みの治癒魔術の一つ、「水の慈愛」を唱える。

 これは、水魔術を利用した治癒魔術のひとつだ。りのは今のところ、水が一番得意な属性だと言われていた。

 この場合、おそらく一番重篤な失血の治癒になるはずだ。


 治癒で失われていく体力がゼロになる前には「リカバリー」を唱えなければならない。緊張しながらかけっぱなしにしている「鑑定」を睨むと、ぎゅん、と体力の数字が【26】まで下がった。

 一方で大量失血の表示は変わらない。重篤を脱するにはまだ血が足りていないのだろう。

 体力の数値は、まだまだ下がっていく。


(一回の「水の慈愛」で三十五減るのか。やっば、あと一回かけたら死ぬじゃん!)


「イェルさん、体力ポーション使って!」

「よし!」


イェルセルは、きゅぽんと体力回復ポーションの栓を抜き、ためらいなく腹の傷にぶっかけた。きらきらと青い光がすうっと体内に染みとおっていく。


(【17】から【47】まで上昇。体力ポーションで三十回復して、治癒の魔術で三十五減る。ってことは体力ポーションだけでごり押ししてもだめなのでは? 体力ポーションは保険、「リカバリー」で体力を回復させていく方がよさそうかな?)


「造血ポーション、あと何本ある?」

「あまり使わんでな、三十はある」

「じゃあ体力ポーションは?」

「ティレル家のご兄弟たちが持ってきたのがあと八本じゃな。騎士団のものは取り寄せてはいるが……」


 言いよどむ様子に、りのは、ああそっか、他にも患者さんいるもんね、と軽く頷いた。


「連続使用はできる?」

「造血のほうはできる。体力の方は、一定時間を置かんと効き目が薄れると言われておるな」

「具体的にはどのくらいの時間?」

「十分くらいじゃろうか」


 意外と長かった。

 こうしているうちにも、患者の体力はじりじりと減っている。

 りのはとりあえず四回、「リカバリー」を患者へかけた。


(これで体力は【221】。「ヒール」で血は復活するのかな? まあひとまずポーションからか)


「造血ポーションを。ただし少しずつね。やめてって声をかけたらすぐに中止して」


 りのの合図で、イェルセルが先ほどと同じようにポーションを腹の傷へ落とし始めた。

 じっと「鑑定」を睨む視線の先で、患者の体力はさっきよりも早いペースで減り始めた。


「止めて!」


 体力が【100】になったときに声をかける。

 生体情報モニターと化した「鑑定」からは目を離さずにイェルセルの報告を聞いた。


「今どのくらい摂取できた?」

「一瓶の約半分」


 じっと見ていると、体力がさらに二十五減ったところで、大量失血の後ろの表示が【(重篤・軽)】となった。


(軽いってなんじゃ軽いって! 知ってる重篤には変わりないけどちょっとよくなったんだよね! あーもー先が読めないよー! 「ヒール」で一発完治したりしないかな?)


 じりじり減っていく患者の体力の数値に焦りながら、必死で考えた。


(しないだろうなああああ! 造血のイメージって全く沸かないもん! 傷を治すイメージならつくし内臓の修復も何とかなりそうではあるけど、血はわからない……骨髄元気にする感じでいけるかな? でも失敗した時のリスクが大きいし。造血に関しては、魔法よりポーションが確実かなあ、数もあるみたいだし……)


 約体力百五十を対価として造血ポーション半分、それで失血がやや回復。

 つまり、造血ポーション一本を使うのに体力が三百必要で、体力回復ポーションが十本いるということになる。

 これはどう考えたって足りない。


(となると、やっぱり造血ポーション以外のポーションは他の人のために温存して、この人の治療は魔法を中心にしたほうがいい。それなら必要なのは、)


「ねぇ、なんかこう、魔力を回復するポーションってあるのかな?」

「そっちは結構な数があるが……お前様が飲むのか?」

「それが一番確実そうだから」

「……一応言っておく。魔力回復ポーションは経口のみだ。まずいぞ」


そっかー。


「……覚悟するから、持ってきて……」



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