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インドア聖女は早くおうちに帰りたい  作者: 和原茉白


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第46話 ひと休憩


 アルフィオ宰相が帰ってから、りのはリビングルームのソファでぼんやりとしていた。ひと休憩、である。


「リノア様、お茶をご用意しましょうか?」


 くたびれたりのを気遣って、メリルがそっと声をかけてくれたが、今飲んだばかりだから、ありがとうと返す。

 アルフィオと結構長く話していて、お茶も数杯飲んでいるため、お腹がちゃぽちゃぽなのだ。



(はー……人と会うの、疲れるわぁ……)


 向こうならいざ知らず、こちらでりのを訪ねてくる人間や呼び出してくる人間は、基本的に裏というか、思惑がある。

 それがりのの生活や安全の保障に直結するので、りのとしても、その思惑を探りつつ、慎重に言葉を選んで対応しなければならない。


(頭使うのやだぁ……もう疲れたよー……)


 そんなりのの目の前では、メイド二人が、さっきまで使っていたティーカップやカトルカールのお皿、フォークなどを手早く片付けてくれていた。

 本職のメイドさんは、本当に仕事が早くて丁寧だし、動きも優雅である。


(二人とも貴族だって聞いて、びっくりしたけど納得したもんなあ、だからこんなに所作が綺麗なんだなって)


 こちらの世界では、下位貴族の子女でメイドになる子はけっこう多いとりのは聞いていた。

 教えてくれたのは、今は会議で席を外しているロゼリアである。部屋の外には出ないと約束したので、りのの「ロゼ以外の護衛さんが部屋の中にいるのはちょっと……」というワガママを聞いて、部屋のドアの前に護衛を立たせてくれているのだ。


 下位の貴族で兄弟が多いと、婚姻の持参金や学費、将来の元手を稼ぐために、王城へ上がる若者は結構いるのだという。

 メイドから始め、適性があればメイド頭や家政婦長に上がっていく子もいるし、賢いと侍女の訓練を受けてそちらに進むこともあるという。進路の希望に合わせて教育してもらえるのが王城で、だからとても人気があるとロゼリアは言っていた。

 男の子でも同様で、ボーイやフットマンから執事や侍従をめざすことができるそうだ。


(王城が人気なのも納得よね、向こうでいえば、会社負担で資格試験の勉強ができて、就職先も会社のコネが使えるってことだもんね。王城で仕事してるの、高位貴族の人も多いわけだし)


 ちなみに、イリットは家政婦長、メリルは侍女を志望している。


「イリット、メリル、ひと段落ついたら休憩してお茶にしてね。台所にケーキ置いてあるから食べてね~」

「ありがとうございます、リノア様!」

「ありがとうございます、リノア様」


 二人が嬉しそうに返事をするのに笑顔を返しながら、りのは先ほどまでのお茶会を思い出す。

 確認するべきことを頭の中で整理するためだ。見逃しがあったら怖すぎる。とはいえ、りのの性格上、おおざっぱではあったが。



(えーと、講師関連はどうせ覚えきれてないから、出たとこ勝負でいいや)


 派閥とか面倒だし関心もない。

 ただ困ったことに、向こうがちょっかいを出そうとしているので、抑えるところは抑えておかなければならない。

 講師たちの派閥はわりときれいに分かれていた。

 だから、講師たちと知り合いになれれば、各派閥の内情をそれぞれの立場から聞くくらいはできるだろう。

 そうすれば、それをもとに動くこともできる。


(めんどくさいけど、それぞれに考えがあるからね。それを知れたら、ちょっとは動きやすくなるしね)


 以前、向こうの世界で、同業者と合同イベントを組んだ時のことを思い出し、遠い目になった。あの時も、知り合いのスタッフさんの話から避けられたトラブルがあったっけ。情報と自衛って大事だ。

 おそらくフィンレー国王側もそれを見込んで、各派閥から偏りなく講師を選んだのだろう。

 ならばそれに乗っかって、その場に合わせて対応していくしかない。気の合う人が来てくれたらいいなあ、と思う。


(アトラロの視察は、だいぶ後になりそうな感触だったな~。まあこっちとしても急がないからいいけど)


 時間がかかっても、安全に、トラブルなく街歩きを楽しめるならそっちがずっといい。

 一回行けば、二回目三回目の機会を作るのはそれほど難しくないはずだ。本当に見たいこと、知りたいことはその時に調べるとして、初回はアルフィオも言っていたように、観光を楽しむ気持ちでいいと思う。


(観光だから佳音ちゃんもいっしょに行けたらいいけど、私よりは自由がありそうだからもう行ってるかもしれないな。それに、私と佳音ちゃんが一緒に行動するのは難しそうね。だいじょうぶかな、あの子)


 謁見の間で、倒れて運ばれていったところまでしか見ていないし、それ以降会えてもない。

 あの素直で善良そうな子が、辛い思いをしていないはずはない。


(せめて、慰めてくれる人がいてくれればいいんだけど)


 りの自身も、今は自分の状況を整えるのでいっぱいいっぱいなのがもどかしい。

 でも、中途半端な状態で手を出して共倒れするよりは、ある程度立場を強くして、それから接触するほうがいいだろう。

 可哀想だから、助けてあげたいからという気持ちだけで突っ走れるほど、残念ながらりのは若くなかった。

 せめてと思ってアルフィオにお願いしてみたが、さてどうなることか。

 アルフィオ様がんばって~、と内心で応援してみた。



(礼儀作法の講座のほうは問題なし。っていうか会ってみないとわからないから、今考えてもしかたがない。ってことは、問題は王妃様の病気のことだね~。更年期障害なのか自律神経の乱れなのか、はたまたストレスなのかわかんないけど、私、この辺って自分の症状のことしか知らないから、言うほど詳しくないんだよねえ、ある程度は調べていかなきゃ)



 自分は医者じゃないと念押ししたから、なぜ治らないんだとかいうクレームにはならないだろうと思う。たぶん。それに、向こうでもわからないことが多いのだ、正直にそう言えばいいだろう。

 話を聞いて、自分の症状と似ていれば、自分がやっていたことを伝えられるという程度でいい。これは王妃様にも念押ししておこう。



 りのが向こうの世界でホルモンバランスや自律神経を整えるために実践していたのは、主にストレッチとハーブティーだ。サプリも飲んでいたし、体に合ったのか効いていたと思うが、さすがに大豆イソフラボンとかのサプリがこちらにあるとは思えない。

 幸運なことに、ストレッチもハーブティーも、りのにはよく合っていた。

 こちらにきて体は若返っているようだが、体質が変わっているわけではないらしく、あいかわらず肩こり症だし冷え性だし、片頭痛もある。

 そのためストレッチはずっと続けている。ストレス発散や気分転換にもいいし。

 いざとなったら鎮痛剤があるので、今のところ困ったことにはなっていなかった。


(ストレッチは動画サイトとかいっぱいあるから、いざとなったらそれを参考にするとして。あとはハーブの方かあ)


 ジャーマンカモミール、ラベンダー、クラリセージ、サフラン、ゼラニウム、カレンデュラ、レッドクローバー、ルイボス……更年期障害などに効くとされるハーブは、意外と多い。少しクセのあるものもあるが、たいていは美味しいし、症状に合わせてブレンドするのも楽しい。


(そういえば、こっちに来てからハーブティー的なのって見てないなあ)


 こちらにも同じようなものはあるだろうか。

 図書館に行って辞典か図鑑でものぞいて見るかなあ、でも栄養素的な話は載ってなかったなあ。

 そう考えて、りのはぱちりと瞬きをした。

 これはもしかして、聞いてみるほうが早いな?



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