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インドア聖女は早くおうちに帰りたい  作者: 和原茉白


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第146話 お片付けレシピ


 あの後、りのはさんざん迷った挙句、結論を先延ばしにすることにした。

 テオドールには、少し考えたい、もし動くなら聖女のお披露目が終わってからになるだろう、連絡を取ってほしい時は改めて言うのでその時はよろしく、と言っておいた。

 それからロゼリアが何人かの護衛騎士と一緒に戻ってきて、テオドールはこっそりとりのに手を振って帰っていった。



「そうなんだよ、ポタ芋のチェックをしたいんだけど、その前にこっちが急ぎの問題なんだよ……」


 キッチンの冷蔵庫の前でぶつぶつ呟く。

 ロゼリアに遅くまでありがとうとハンバーガープレートを出して、彼女は今、ダイニングテーブルでとっても遅いお昼ごはん中だ。

 メイドたちはそれぞれの仕事に、レノアは魔術師団棟の料理長に料理を習いに出かけている。


 りのは、食糧庫がわりのマジックバッグに片手を突っ込んで、はあと深いため息をついた。


(中身がぎっちりすぎ! さすがにこれは整理しなきゃヤバイな……)



 このマジックバッグは、一番初めに買い物をした後、買ったものが悪くならないようにとユーゴが調達してくれた時間停止のマジックバッグだ。サイズは大きくなく、というかマジックバッグとしては小さく、また容量も少ないものになる。

 はじめは肉類専用ということにしていたのだが、何せ時間停止で中のものが悪くならないので。


(便利さに甘えて、今じゃこのていたらく……!)


 肉類はもちろん、足の早いチーズや焼きたてのパン、余ったソースやホイップクリーム、ぎりぎりまで熟してしまったフルーツ、作ったもののあまりなどなど、悪くなっちゃうからと気軽につっこんでしまっていたため、容量がぎりぎりいっぱいである。

 もちろんマジックバッグに入れること自体は悪いことではなく、残り物を転生させたり、本来は日持ちしないものを保存したりもできるのだが。



「リン、どうしました?」


 あっという間にハンバーガーを三個お腹に収めたロゼリアが、幸せそうにるんるんしながらキッチンへやってきた。顔は冷静そのものだが、雰囲気がるんるんしている。その手には大きな木皿。


「うん……自分の無計画さに絶望していたところ……。あ、お昼は足りた? お腹いっぱいになった?」

「はい! ハンバーガー、とってもおいしかったです。ありがとうございます」

「どういたしまして! あ、お茶いれようか」

「私がいれますので、リンはどうぞ作業の続きを。何をしてたんですか?」


 そこでりのは、マジックバッグの中が魔境になっているのとロゼリアに打ち明けた。


「ああ……時間停止に頼ってしまいますよね……」

「そうなのよね……。レノアがきっちり中身を把握してくれてて、それに甘えちゃったところもあるなって反省中です……」


 レノアがマジックバッグに何が入っているかを記憶してくれているので、りのが覚える必要もなく、そのためますます気軽につっこんでしまっていた。


「食材が無駄になる訳じゃないけど、マジックバッグがいっぱいになりそうなんだよね……」

「それは問題ですね。そろそろウェス殿やレオニード殿から面会申請が上がってくる頃ですよ」

「そうなの! 前回、ウェスさんにお魚もお願いしているから、マジックバッグの容量が足りないなんてことになったら大問題なの!」

「では、やはり整理するのがよさそうですね。手伝いますよ、リン。お茶の前にやってしまいましょう」


 女神さまのように美しいロゼリアの笑顔に、りのはありがとうー、と両手を合わせて拝んだ。





 ダイニングテーブルの上に、食材たちを並べて整理することになった。


「えっと、この辺にお肉類、この辺はお野菜、この辺りがフルーツ。それ以外はこの辺に、大体で分けようか。あと、このお皿には今夜さっそく使うものをのせよう」

「わかりました。一度、どさっと出しましょうか?」

「え、そんなことできるの!?」


 一個ずつ取り出さないといけないかと思ってた、と言うと、ロゼリアはくすりと笑った。


「わりとよくあるんですよね、マジックバッグの整理って。特に容量の大きいマジックバッグだと、一つ一つ出すのは大変ですから、すべて出す魔術があるんです」

「はーいはい、ロゼ、私もそれ覚えたいです!」

「わかりました」


 その魔術は大して難しくはなかったが、闇か土の適性がいるのだという。りのは最近あまり使っていない闇魔術にした。


(魔術と適性の関係ってホントわかんないよね。マジックバッグのフルオープンが、なんで闇か土なんだろ)


「『完全開放』」


 教わった通りに詠唱すると、ぺろんとマジックバッグが裏返り、どさどさどさどさどさ……。


「うっわあ……」

「これは想像以上でしたね……」

「容量の小さいマジックバッグでこの量だと、大きいのじゃ本当に大変そうだね……」


 遠い目になるりのとロゼリアの前には、テーブルに所狭しと並ぶ食材たち。

 二人はため息をついて、もそもそと整理に取りかかった。




「うわあ、こんなに少しなのにとっておいたの私!?」

「それ覚えてますよ、デミバハムートは貴重だから大事にとっておこう、と言ってましたが」

「そうだった……この切れはしをじっくり食べようと思ってたの……」


 もうこれだけだから食べちゃお、とりのはデミバハムートの白身の切れ端を今夜使うものの皿にのせる。


「あー、これこれ! そうだった、タンシチューをしようと思って買ってたのよー!」

「……。」

「ロゼ、これちゃんとおいしくなるからね!?」

「ハイ……。じゃあこれはお肉ということで……」


 大きなタンの塊は肉類のコーナーへ。


「すごいなこの端野菜の量。にんじんキャベツ、トマトにきのこ、きゅうり玉ねぎ、ナリシスにラバミュににんにく生姜、結構あるなぁ……」

「どうします? 今夜使いますか?」

「そだね、そうしよっか。この量だと、寄せ集めないと料理にならないもん」


 量が少ない野菜類は皿の上へ。


 こんな調子でフルーツや調味料類も整理をすると、バッグへ戻す分はあまりなく、今夜使ってしまう分が一番多くなった。まああるあるだ。



「わりと料理の残りものが多かったねー」

「パンにはさめるものばかりでしたから、作りすぎた分をしまっていたのでしょうね」

「きっとそうだよ……あ、そうだ、手巻きサンドイッチやろう、明日のお昼! パンにはさめる料理の残りものは全部出して、フルーツとかコールスローとかも用意して、好きな具を好きにパンにはさんで食べるの、どう? 焼きたてパンはいっぱいあったからイケる!」

「さんどいっち……おいしそうですね……! さっきホイップクリームがありましたから、あれと果物でフルーツサンドにしたいです」

「いいね、絶対しよう!」


 楽しくおしゃべりしながら、さて今夜のメニューは何にしようかなあと考える。


 魚はデミバハムートだけ、お肉は様々な種類が少しずつあって、お野菜は端野菜ばかりだけどたっぷりある。

 それにふわふわの食パンと、いつだったか作ったビスケットがけっこうな枚数、そしてなぜかあるタルト生地。いやほんとになんであるの!?

 念のため「鑑定」してみたが、毒も何も入っていない、ふつうのタルト生地だった。うーむ。


「タルトといえば、熟れすぎのイチゴがあったなぁ……ああ、イチゴとアドルジュでベリータルトにしよう。ホイップは明日のお昼に使うから、カスタードクリームにしようかなぁ……って、あれ? カスタードクリームってなかったっけ? 見た気がする」

「黄色いお菓子用のクリームですよね? マジックバッグにさっきしまいましたよ?」

「そっちか~~、私もう忘れてて大丈夫かな!?」



 そんなこんなで、本日のメニューは冷蔵庫ならぬマジックバッグのお片付けレシピだ。


 生食できる野菜を角切りにしたのと、ちょっぴりのデミバハムートに軽く火を通したものをビネガードレッシングで和えたマリネサラダ。

 野菜類と牛系のお肉を炒め、ホワイトソースとまぜて、チーズをたっぷりかけて焼いたグラタン。

 鶏系のお肉とトマトのスープ。豚系のお肉とキノコのトルティージャ。それにバターとパン。

 デザートは、甘いいちごのベリータルトとビスケットだ。




「うん、これでかなり容量が減るわー! これでまたいっぱい料理作れるね!」

「リン、マジックバッグにため込んではだめですよ。魚を入れるんでしょう?」

「アッ」



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