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インドア聖女は早くおうちに帰りたい  作者: 和原茉白


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第121話 必殺!


 今回、何を持っていくかでりのはけっこう悩んだ。

 ラング・ド・シャもいいかなと思ったし、フィンレー王も気に入っていたランギスのクリームロールも、それにプリンも候補には上がっていた。

 生もので、当日に食べきってしまえるようなものが一番望ましい。毒の混入を疑われないようにするためだ。たぶん王妃様の周囲にも浄化魔術を使える人はいるだろうから、その場でかけてもらってその場で食べきるのが一番効率が良いように思った。

 だから、ある程度日持ちがして持って帰るかもしれない焼き菓子類は却下。

 プリンは、魔術師団棟の料理長たちがいろいろ工夫をしている真っ最中なので、もう少しお披露目まで時間がほしい。プリンを知られたら、たぶん彼らの仕事は何倍にも増えてしまうだろう。それに、納得のいくものができていないのに、命令で作らされるのは彼らも嫌だろう。りの自身が作るのも嫌だ。

 そうなると、クリームロールかな、クレープでもいいかなと思ったのだが。


(でもやっぱり見栄えって大事だと思うの。見た瞬間にきゃーってテンションあがるの、楽しいよね!)


 お茶会だし、視覚的効果、見た目はやっぱり大事、ということでバスケットいっぱいにつめてきたのは、必殺のフルーツサンドである。


「すごいわ……なんてきれいなの」


 アラチェリアの感嘆に、りのは胸をはった。アラチェリアに比べれば、あるともないとも言えない、そこそこサイズだが。

 

 バスケットの中には、フルーツサンドがたっぷり詰められている。

 白いパンと白いクリームの間に、今が旬のアドルジュやオレンジの橙、ライチのような甘みのあるランギスの薄緑、イチゴの赤、桃のピンク、ほぼグレープフルーツっぽいラトマの黄色と、色とりどりの果物がきれいな断面を煌めかせていた。

 可愛いキューブ型に切り揃えられていて、それがきちんと並んでいる様は何とも華やかだ。下に敷いた赤と白のギンガムチェックの布もかわいさをアップさせている。


「ねえリノア様、これは何かしら? とてもかわいいわ!」

「パンの間に、クリームとフルーツをはさんだフルーツサンドです」

「フルーツサンド……え、パン? この白い、柔らかそうなのが?」

「はい、パンですよ」


 りのが日々研鑽を重ねている天然酵母の食パンは、大分白くふわふわにしあがるようになってきた。

 育てた酵母から「鑑定」を使って厳選したイースト菌の培養も割と順調で、今は大きな瓶で育てて量を増やしながら生イーストを作るべく励んでいるところだ。それができたら、次はドライイーストを作ってみたい。「鑑定」と乾燥の魔法「ドライ」が大活躍しそうな予感だ。


「かわいいわねぇ……手を出すのがもったいないくらいだわ」

「ふふ、ご遠慮なく召し上がってください」


 フルーツサンドは見てるだけでも可愛いし、食べてもおいしい。ふわふわのパンと甘いクリームの間から、ころんと出てくるフルーツの甘酸っぱさ。それらが口の中で混ざり合って、まさしく至福だ。


 それに。


(そろそろ、パンは作れるように環境整備を始めてほしいのよね、主にロゼのために!)




 ぐおっと上がったテンションのまま、常にはないスピードで紅茶が淹れられ、フルーツサンドはテーブルに並んだ。

 かわいいからそのままにしましょというアラチェリアの一言で、バスケットごとテーブルに置いてある。

 アラチェリアの言うことはもっともで、白いテーブルクロスの上に素朴なバスケット、さらにその中にフルーツサンドがある様子は、どこかの雑誌の一ページのようだった。かわいい。


 用意されていたのは、アラチェリアが好きだというミュケディ領ラフォン村の香り高い紅茶だった。

 さっさとアラチェリアがお茶を飲み、りのも一口頂く。

 そして、紅茶トークをあっさりスルーして、待ちきれないようにアラチェリアはフルーツサンドをひとつ手にとった。オレンジ色が真っ白な生クリームの中からひょこんと顔を出している、アドルジュサンドである。

 あの、チェル様、一応浄化してもらった方が、私、毒見しますし、と慌てて言うと、あなたが私を毒殺したってな何も良いことないじゃない、早く食べたいから別にいいわ、とあっさり言われた。この王妃様、かなり豪胆である。が、周囲の侍女も何も言わずにこにこしているので、ああいつものことなんだなあとりのは思った。

 そうこうしているうちに、


「~~~~~~!!」


 大きく口を開けてぱくりといって、アラチェリアの目が真ん丸になった。

 そのまんまるの緑の目でりのをみて、サンドを持っていない方の手をぎゅっとにぎりしめてぶんぶん振っている。テンションが上がっていることが分かりやすくて、なんだかかわいらしい。

 おもわずふふふと笑みがこぼれてしまった。



「おっいしい~~~~!!」



 まあチェル様、お声が響きますわ、と侍女たちのお小言も気にせず、アラチェリアは残りを一口で頬張って、今度は目を閉じてじっくり味わっている。


「すごいわ、ふわふわの甘みのあるパンに、とろっとした甘いクリームに、アドルジュの甘酸っぱさが素晴らしい組み合わせだわ! なんて幸せな気持ちになるお菓子なのかしら!」

「うふふ、最近の自信作です。お気に召していただけたら嬉しいです」


 本当に、特にパンには時間と手間と、あと魔力をかけたので、おいしいと言ってもらえると嬉しい。

 メリルとロゼリアをちらりと見ると、二人ともうんうん、という顔をしていた。

 二人はもちろん、イリットとレノアにも試作品をたくさん味見してもらったので、フルーツサンドのおいしさを良く知っているのだ。


「あ、ロゼ、あんたこれ食べたことあるって顔してる!」

「マカリア隊長、アラチェリア王妃殿下の御前ですよ」

「チェル様はそんな小さいことで怒る方じゃないもーん」

「もーんじゃありません、もーんじゃ。護衛中ですからぴしっとしてください」

「質問に答えてなーいー! ねぇロゼ、食べたことあるんだね?!」


 マカリア隊長にからまれているロゼもかわいい。

 最近、ロゼリアに関してはかなり盲目になりかかっているりのである。今ならロゼリアの三番目の兄と仲良くなれそうな気がする。


「マカリア、メアリにマーガレットも、みんなも頂いてみて? 本当においしいわよ!」


 やったあ、とマカリアがいそいそと向かってきて、わあきれい、おいしそう、とフルーツサンドを一つ取り上げた。いちごサンドだ。

 侍女さんたちも次々とやってきては、ありがとうございますと嬉しそうにフルーツサンドをもらっていく。


(手で取ってそのまま食べちゃうとか、本当にラフなお茶会ですよって伝えてくれてるのかな。それに、誰も浄化や毒見の話をしない。信用してくれてるってことね)


 アラチェリアは、次はランギスサンドをとりあげておいしそうに食べている。


(頭痛は大分抑えられてるのかなあ。ご飯やおやつが食べられて、眠れているなら、復調も近いかもね)


 りのもランギスサンドをぱくり。この果物はなぜかバニラの香りがするのでりののお気に入りだ。懐かしい香り。

 ロゼリアもメリルもすすめられてフルーツサンドを口に運んでいる。


 やっぱりフルーツサンドにしてよかったなあ。



今日のお昼間、ランキングの方にちらりとおじゃましていたようです。

ひえええ~~……。

それに、今までにもブックマークや評価を頂いていて、お礼が遅くなってすみません。

ありがとうございます、とても嬉しいです。

リアクションも、いつも励みになっております!


びっくりと嘘ォ! という気持ちと嬉しさでいっぱいいっぱいですが、よろしければこれからもおつきあいください。


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