第二章 ノルド編 第1話 雪の国へ
新たな章が始まります!
吹雪混じりの冷たい風が、アベルの黒髪をかき乱した。
セルヴィアを出てから数日、道中はひどく寒かったが、ついに目の前には雪に覆われた国が広がっていた。
「……ここがノルドか。」
その地は白銀の世界だった。
見渡す限りの雪原に、遠く青白い光を放つ城壁が霞んで見える。
空からは細かい雪が舞い続け、木々の枝を淡く装飾していた。
「見た目は美しいがな……今のノルドは少し違う。」
隣を歩くイリオスが静かに呟く。
アベルはちらりと視線を向けた。
「……知ってるのか?」
「ノルドは本来、穏やかな雪の国だ。
だが最近は天候が荒れ、吹雪や氷柱が突然降り注ぐ被害が多発しているらしい。
農作物も壊滅的で、民は飢え、国も疲弊している。」
イリオスはセルヴィア王国時代の軍師だった。
その知識はこの世界のあちこちにまで及んでいる。
「この国にはまだ、俺より強い奴らがいると思えってことか。」
「そういうことだな。……ただ、ノルドは今、それどころじゃないはずだ。」
吹雪の向こう、青白い城が幽霊のようにぼんやりと浮かぶ。
アベルはゆっくりと息を吐くと、剣を肩に担ぎなおした。
「行こう。まずはこの国の現状を確かめる。」
イリオスが肩を竦め、小さく震える。
「うー……さむい……。アベル、お前は寒くないのか?」
「ん? ああ……あんまりな。」
「ほんとにお前は変わってるよな……普通なら凍えてるぞ。」
イリオスが苦笑しながら言うと、アベルはただ肩を軽く竦めただけだった。
その後も二人は特に言葉を交わさず、静かに雪原を進んでいく。
冷たい風だけが、ひゅうと鳴り続けていた。
第二章開幕です!
ノルド編、いよいよ氷の国で新たな出会いと試練が始まります。
次回もよろしくお願いします。