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ロンギヌス  作者: 白河夜舟
1回戦
5/49

5.投手戦

 チートと言えば、野球特待生を集めるだけ集めて、甲子園を目指して練習に励む学校も、チートですよね。一般の公立高校の野球部じゃ、そりゃ勝てないでしょう。

 なので、たまに勝ち上がる公立校チームは、マスコミやファンから注目されます。

 実の所、高校野球ですから、特別な才能を持った選手が一人か二人いれば、そうしたこともありえないことはないのです。

そして、2回裏の攻撃である。

「いいか、バットを振らないと、とにかく始まらないんだ。相手はまだボール球を投げていない。見極めて、打っていけ!」

 監督の的確な指示の元、南洋第一ナインはとにかくバットを振る事を心がけた。

 そして、確かに相手はストライクしか投げてこなかった。

 そして…

 三者三振であった。

 バットを振った時には、もうボールがミットに納まっていた。

 球が速過ぎて、とても追いつかないのだ。

 上位打線は、140キロ台どころか、狙いさえ絞れれば150キロの球でさえ打ち返す重量打線である。

 将来はプロを目指すことしか考えていない、そんな連中である。

 それが、ストライクしかこないと判っている球に、全く手がでないのである。

 今まで、野球エリートとして騒がれ、もてはやされてこの名門校に推薦入学してきた彼らである。

 一切の費用は学校側で賄って貰い、充実した練習設備の中で朝から晩まで野球浸けの日々を送ってきたのである。

 しかも、昨年夏、そして今年の春と、惜しくも甲子園を逃した雪辱を果たさなければならないと、大いに期待をかけられ、その期待に答えるべく、血の汗を流し、涙も拭わずにきつい鍛練に耐えに耐えてきたのである。

 それを、それをこんなジャージにゼッケンを結わえ付けたような、ポッと出のチームにやられる事など、あってはならなかった。

 そう、あってはならないのだ。


 バッターが一巡した4回裏の攻撃から、南洋第一の選手はバントを試み始めた。

 だが、それこそ至難の業であった。

 出所の判らない剛速球に、身を乗り出してバントの構えをするのは、命の危険すら感じられた。

 しかも、もし体に当たっても、ストライクゾーンを通過している限りはただの当たり損である。

 自然と、身の引けたバントになるが、たまにボールが当たると、バットはまるで鉄の球が当たったみたいにはじけ飛び、バッターの手首をいやというほど痛めた。

 せっかく当たったボールも、球威に押されてふらふらと上がり、待ち構えていた守備陣にことごとく受け取られるのだ。

 たまに地面に転がるボールもあったが、極端な前進守備を引いていた相手にすぐ捕られてしまう。

 結局、相手ピッチャーの球数を節約させるだけに終わった。


 バント対策は万全です。守備は、その練習しかしていません。

 あの球を遠くまで飛ばせるはずなんかないのです。

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