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ロンギヌス  作者: 白河夜舟
1回戦
4/49

4.三者連続三球三振

 作品紹介タブに、チートを入れるか、迷いました。

 だってチートでしょ、こんなの…

 いえ、ルール上は問題がない、無いはず…

 長いタイムと抗議の間、長身で隻腕のピッチャーは長い腕を器用に畳んでボールを目の前に持って行き、じっと見つめていた。

 そして、泣いていた。

 声も立てず、小刻みに震えながら。

 ホームベースのすぐ近くで構えていたサードがマウンドに向かい、何か声をかけている。

 一々頷きながら、ピッチャーは泣き止もうとはしない。

「な、なんなんだよ…」

 トップバッターは監督に肩を叩かれるまで、呆然とその様子を見ていた。

 高校球児は、強い精神力を養わなければならない。

 だから、炎天下の中、苦しい練習に耐えてきたのだ。

 それが、あんなひ弱そうな奴に…

 1番バッターは、一つ素振りをくれると、ボックスに立って構えた。

 今度こそ、球筋を見極めて…

 ズドォォォン…

 彼はバットを振ることすら出来ず、見逃し三振に終わった。

 二番、三番も、一度もバットを振る事が出来なかった。

 球が、見えないのだ。

 長身の上に、常人ではない腕の長さから振り下ろして来る。

 投げる瞬間の腕の動きが、ほとんど判らない位に速い。

 リリースポイントが判らないので、タイミングがとれないから、バットが振れないのだ。

 しかもその球が、またとんでもない速さである。

 名門校だけあって、普段から充実した設備でトレーニングしている。

 ピッチングマシンも、甲子園クラスのピッチャーを想定して、少なくとも140キロ以上の球を打ち返している。

 が、相手ピッチャーの球はまるで経験した事のない速さなのだ。

 まるで、高層ビルの上から落ちてくるボールを、上を見上げないで打てというようなものである。

 人間の動態視力は、左右に動くものにはついて行きやすいが、上下に動くものを見極める事が難しい。

 しかも、いつ落ちてくるか判らない上に、とんでもないスピードで投げ込まれるのだ。

 南洋第一ナインは、文字通り青くなった。

 昨年夏、今年の春と決勝まで進みながら破れた、その悔しさをバネに、ここまで苦しく厳しい練習に耐えてきたのである。

 しかし、それは全くの無意味なのではなかったか…

 守備につこうとする足にも、力が入らない。

 こんなボール、絶対に打てっこない。

「落ちつけ!まだ負けたと決まったわけではない!」

 さすが監督である。選手から絶大な信頼を得ている名将と歌われた人物である。

「あんな球を、ずっと投げられるわけはないんだ。我々が点をやらなければ、絶対に勝てる!」

 おおっ!

 ナインの表情に、安堵感が浮かぶ。

 監督は、エースピッチャーに「投手戦だぞ」と声をかけた。

 投手戦、すなわち、一点もやれない事を意味する。

 投手の、もてる力、技量、気迫全てを振り絞って相手打線を押さえ込まなければならない。

 もはや、偵察校がどうのこうのいっていられないという状況であった。

 目の前の敵を、特にあのピッチャーより先に点を取られたら、甲子園も借りを返すも言っていられないのである。

 エースピッチャーは、燃えに燃えた。

 エンジン全開のマウンドは、全く付け入る隙も与えず、2回表も三者三振で終わった。

 相手バッターは、とにかくどんな球を投げても振り回すしか能がなかった。

 全部ホームランでも狙っているかのようだった。



 さすが名将。簡単に負けなど認めません。

 選手の動揺を鎮めて、自軍のエースピッチャーに気合を入れます。

 本能的に「この試合は全力を尽くさないとヤバイ」ことが分かるのです。

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