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トゲの王

作者: 清水進ノ介

トゲの王


 この世界には、トゲを持つ動物や植物が、たくさんある。陸の動物ならヤマアラシやハリネズミ。海の動物ならハリセンボンやヒトデ。植物ならバラやクリ。どの動物も植物も、自分が持っているトゲこそが、世界で最も立派なトゲだと考えていた。


 ヤマアラシ「おれさまのトゲは、固いアルミ缶も貫けるんだ。おれさまのトゲが一番立派だ」

 ハリセンボン「いいや、ぼくの姿を見てみな。お前さんと違って、全身にトゲを生やせるんだ。ぼくのトゲが一番立派さ」

 クリ「嘘はいけないな。お前は目や口からトゲが生えていないじゃないか。おいらは言葉通り、全身トゲだらけだ」


 誰もが自分のトゲこそ一番だと主張し、決して譲ろうとしない。そこにスズメバチが飛んできて、昆虫だって負けてはいないぞと乱入してきた。お尻から生えた鋭い針を見せて、このトゲは世界にだって通用するぞと胸を張った。


 ハリネズミ「ぼくはミツバチの方が強いと思うけどな。あいつらの方が、暑さに強いからさ」

 スズメバチ「それはそうだが、今はトゲの話をしているだろう。論点がずれているぞ」

 バラ「あなたのトゲなんて恐ろしいだけだわ。私のトゲには美しさがあるもの。私が一番よ」


 論争はいつまでたっても決着しそうにない。みんなの話を聞いていたヒトデは「それじゃあ、こういうのはどうだろうか」と意見を出した。

 ヒトデ「地球で一番繫栄している動物は人間だ。だから人間に決めてもらうのはどうだろう?人間が言うことならば、我々も納得せざるを得まい」

 みんなが「ならばそうしよう」とうなづき、ハリネズミが近くを歩いていた、人間の女の子を連れてきて、事情を説明した。女の子は、うんうんとうなづきながら、話を聞いている。


 ハリネズミ「一番いいと思うトゲトゲを連れてきてね」

 女の子「トゲトゲって、さわると、ちくちくするもの?」

 ヒトデ「そうだ。触ったときに、ちくちくするものだ。お前さんの考える、トゲの王様を連れてきておくれ」

 

 女の子は笑顔で「まっててね」と言って、どこかへ走って行った。トゲのあるもの達は、女の子がなにを連れてくるかと、緊張に包まれた。しばらくすると、女の子が戻ってきた。その手の中にあるものを見て、全員が困惑した。誰も見たことのない、茶色でごわごわとしたものを、女の子が持ってきたからだ。


 女の子「これはね、タワシっていうの」


おわり

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