裏声が武器の世界一の能力者!?
私、男になってる!?
地面には星空が映えていて、そこにあるはずのない透明な地面に横になっている。上にも夜空があり、ここはどこだろうと、動かなかったはずの体を動かし、この体を手で触って、下半身がどうなっているのか確かめて私は気づいた。
「なぜ男!?」
「お目覚めだね。シンデルナくん」
そこにいるのは透き通る青空のような髪を地面にまで垂らした動きにくそうな格好の男の子だ。よく見ると正装と呼んでもいいほど整った白を基調とした綺麗な服を着ている。
「なんで男!私は激カワの女の子になってあんぽんたんのあのイケメン王子をばっさばさっと切り捨てたいのに」
「まぁまぁそんなに焦るな。いいだろう。男になってみるというのも」
「嫌よ!ぜったいにイヤ!どうせまたあの世界に行くんでしょ。だったらカッワイイ女の子としてあの王子を盛大に馬鹿にしたいっ。あの王子を少しでもいいと思った私が馬鹿だったから!」
「うんうん」
「私の家族殺した顔だけ宰相にも平手打ちしたかった。文句しか言わない私をずっと世話してて、でも体求めなかったフツメン従者にありがとうの一つでも言えばよかった。ううん。やっぱり盛大に見下して罵倒して、私なんか捨てて私よりずっといい人と暮らしてほしかった……」
「そうなのか。そうなのか」
「お願い。私を女の子にして!私のこの後悔を今度こそなんとかしたいから!!」
男の子は私の主張に、分かった、分かったとうなずく。
「細マッチョの家系の男の子だから問題ない。女の子の服も似あうからな。」
「なんで男にする前提なのよ……」
「それは計画があるからだ。全人類の多様ないちゃラブの推進にむけた転生計画は私の悲願なのだよ」
彼には話が通じないのではないかと疑念が湧いてくるけれど、このまま女の子になれないのは嫌だし、第一。
「男の子になったら女装しても声でばれちゃうじゃない!」
「安心してくれ。アフターサービスは完備してある。シンデルナ君は、裏声という特殊能力を持ち、細マッチョの家系で、顔はカワイイ系で、記憶もそのまま保持できるようにする。君は裏声が武器の世界一の能力者だと思えばいい!」
「それで世界一になれたら、羊の毛刈りで世界征服できちゃうでしょ!」
「やればできる!イチャイチャできる!!」
「それでも嫌よ。私は、あのお間抜け王子に痛い目みせたいの」
「安心してくれ。君がこれから行く世界には王子など滅多に会わない異世界だよ。さぁ私の壮大な計画、全人類の多様ないちゃラブの推進に向けた転生計画の一助となりたまえ」
どうやら元の世界に戻らなくていいということには安心するけれど、他はまったく納得できない。
「あと連絡。君の名前はこれから新出ルナだ。名前が変わっては慣れるのが大変だから結構頑張って探したんだよね」
「話を勝手にすすめないでよ」
「嫌なのか?なら、エロデア家のエロデア・ルナにするが」
「そっちの方がいいじゃない」
「知恵を授ける」
「何か私に入り込んでくる……!って何よ。エロデアルナって破廉恥であるなって意味なの?馬鹿にしている?」
「まぁまぁ落ち着いて。エロデアは植物学の用語にもあるから。これから転生の儀式を執り行うから、うるさい君はそこで拘束」
「ちょっと。何するの!」
私は頑丈な鳥かごのなかに入れられていた。
「君が私の計画通り動けるよう、事前情報を授けよう、私はね。下界に研修に行って、百合と薔薇という愛し方と出会った。なんてすばらしいんだ。これが愛だと天啓がくだったようだった」
「あのー。どうでもいいんで、私を女の子にしてもらえます?」
「しかしあんなにも素晴らしいものを受け入れられない人がいるとも知ってしまった。男と男が愛し、女と女が愛せる、男と女も愛せる、そんな誰もが好きを公言できる社会のために私ができることはなにか」
さっきから私が聞いてと主張しているけれど、この男の子、何も聞くつもりがないらしい。
「それは別の世界からちょっと融通してもらって、もともと別世界で女の子だった人をこの世界で男の子にして、逆もやって、気がつけば男と男、女と女も公然と愛せる社会になっていた!にすることだった」
「何がなっていた!よ。私の意志を尊重してください!」
「意志とはなんだろうね。うん。まぁいいか。我々の意志だけが君たち人間の真実なのだから。じゃあいってらっしゃーい!」
「ちょっと待って!」
鳥かごの床が抜けて、体が下へと落ちていく。伸ばした手はどこに触れられないまま、その先であの男の子が笑っていた。
「新出ルナ君は好きな子と存分に楽しめばいいだけだよー」
ばかやろーと叫びながら私は底の見えない下へ下へと落ちていく。やがて何も見えなくなった。
ここにノリだけで書いている作者がいます。なんで続けられるのか自分でも分からない笑。いいなと思う方、ブクマや感想、評価をお願いします!
あとがきでふざけすぎました。以降はもっと丁寧にふざけます。