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鬼の偉業  作者: 時雨笠ミコト
4/4

終わり

「……この恩は必ず返す。そして子供も必ず無事に帰す。約束しよう」

 そう言って鬼は、兎の子供を抱きかかえて下山し始めた。

兎の夫婦は我が子を抱いた鬼の背中を、何も言わずにただ見送る。

鬼は山道を一身に、しかし子兎に決して負担がかからないように丁寧に、可能な限り早く下山した。

朝に山を出発した鬼が雪の両親のもとにたどり着いたのは、夜になったころだった。

鬼がその家の扉を叩くと、暫くしてからゆっくりとその扉が開く。

そしてその扉を開いた雪の母親は、鬼を見るや否や叫び声を上げる。

少し遅れてからその姿を見て、家の中であぐらをかいていた雪の父親もやって来る。

「何をしにきた!」

 鬼を見るや否や、父親は食ってかかる。

しかし鬼は至って冷静だった。

兎の子供が未だすやすやと眠っている事を確認しながら、淡々と要件を述べる。

「約束を果たしにきた。ほかの動物の赤ん坊を連れてきた。雪に会わせてくれ」

「……雪は此処にはおらぬ」

「何だと!?」

 露骨に慌てる鬼に対して、雪の両親は勝ち誇るように言い切った。

「鬼に心酔する娘などいらぬ!山に捨ててやったわ」

「なんという事を……!」

 鬼は慌ててきた道を戻った。雪のものと思わしき足跡が、鬼のそれと入れ違うようにして山の中へ中へと続いている。

鬼が必死になってその足跡を追い……追い切ったころには、鬼は兎の巣穴に戻ってきていた。

呆然とする鬼の顔を見て、兎が嬉しそうに微笑む。

そんな兎は、雪の膝の上にいた。

「ほらね、恩返しすると言ったでしょう」


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[良い点] 恩返し物でホッコリしました
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